パーティー合流希望者2(終) 夜までの試用期間ってことにしとこう!
そして予想通り、少し離れた場所で「どう思う?」と尋ねると、「ハヤトさんにお任せします……」などと一旦は任せるようなことを言いつつ、「でも、わたしは気が進みません」とすぱっと言ってくれた。
「そうか……マイがそう思うなら、あんまり妥協しにくいな」
俺は頭をかきつつ、ついでに尋ねてみた。
「ちなみに、なんで気が進まないのかな?」
「えっ」
いや、意外そうな顔されても。
そんな難しい質問じゃないと思うけど。
俺がきょとんと見返すと、なぜかしみじみと考える様子を見せ、微かに顔をしかめた。
挙げ句の果てに「説明できないのが困りますが……本能的なものでしょうか?」と俺の顔を見る。俺に訊かれても。
しかし、好んで受け入れる気がなさそうなのは事実なようで、俺もちょっと考え込んでしまった――が。
「ねえ、お二人さんっ」
当の金髪さんが、腕組みして叫んで寄越した。
「そんなところで時間かけてたら、そのうち上から魔獣やら敵対パーティーやらが下りてくるわよっ。一時棚上げにして、お宝を得るまで、共闘ってことにしない? なぜかその娘は、わたしが嫌いみたいだけど、そこまでなら我慢できるでしょ!?」
「いえ、別に嫌っては――」
言いかけ、またマイは考え込んでしまう。
決断力ある子なのに、ここまで迷うのは珍しい。
「もうちょっとだけ、待ってくれ! チュートリアル、おまえの意見は!?」
最後に俺は、チビ女神様に尋ねてみた。
『私は……そうですね、賛否で言えば、賛成です。彼女、見覚えがあります……元の世界ではある王国の、第八騎士ですよ』
「第八騎士?」
俺が小声で問うと、『その王国では、それぞれ腕の立つ騎士を九人選定し、第一~第九までの階位を与え、皆の規範としたのです』と教えてくれた。
つまり、上から八番目か……凄いような凄くないような。
でもまあ、実力はありそうだな。
こうなると、俺も特に反対する理由ないな。それにここで休憩してたら、そのうち絶対、誰か――あるいは何かが追ってくるに決まってる。
「よし、ひとまず夜までの試用期間ってことにしとこう! 今は急ぐのも確かだからっ」
俺の決定に、ようやくマイも頷いてくれた。
「わかりました。ハヤトさんに従います」
返事が固い……大丈夫かね、この先。
ようやく金髪さんの待つ元へ戻って合流し、俺達はホームから線路に下りた。
線路上もちゃんと等間隔で明かりが点いたままだ。だから、懐中電灯やら魔法の明かりやらに頼らずとも、そのまま進めるのは有り難い。
いろいろ訊きたいこともあるし、今なんかチャンスだろう。
「進みながらの自己紹介で悪いけど、俺は中原隼人で、十六歳。こっちは、天川舞さん。ハヤトとマイで頼む」
「あたしは、元グランフィール王国第八騎士の、エレイン・アウレス・ブランニュールよ! 年齢十八歳! この歳で第八騎士まで上がったの、あたしが初めてなんだからっ」
ほほう、中身はプチ自慢とはいえ、なんという爽やかな笑み。
あんまりイヤミに聞こえないのはいいが、いかんせん、俺もマイもナントカ王国とか第八騎士の地位の重みとか、今一つわからん。
まあ、いかにも感心したように「すげーなー」とだけは答えておく。
それより、当面の質問だ。
「さっき上で、巨漢がお宝がどうのって言ってたけど、アレはマジ?」
「詳しいこと知っている人が誰もいないけど、みんな本当だと思っているみたい。あの混沌が、地下にもの凄く高価な財宝を置いたって」
彼女……エレインは無責任に肩をすくめた。
「あたしも、他のパーティーから得た情報を聞いて、駆けつけただけなのよ。それで、地下への入り口の一つであるここへ来たら、既に乱闘中だったわ」
「つまり、大元の真実は誰も知らない? そりゃ実に怪しい話だな! 俺達は元々、お宝が目当てで潜ったんじゃないからいいんだけど」
「じゃあ、あなた達の目的って?」
ストレートに訊かれ、俺とマイは早速、視線を交わした。
この子に話してもいいものかね……俺達の事情を? 名前と身分聞いただけで、モロに異世界人みたいだし。