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混沌という名の女性邪神2(終) 鞭だけじゃなく、飴も与えるのか

 否定してくれないかと俺は思ったが、あいにくチュートリアルの返事は肯定だった。



『そう、そういうことです。被害者側の人間と違いがあるとすれば、我ら女神はGMゲームマスター的役割を命じられているということでしょうか。でもまあ、その立場も混沌の意志次第で、いつどうなるかわかりませんが」



「その邪神の最終的な狙いは?」


 マイが強張った顔で質問を続けた。


『混沌の最終的な狙いは、さっぱりわかりません。聞けば、数百年も各異世界を破壊して回っているそうです。他は違うやり方で征服しているのか、あるいは全ての世界で同じことを繰り返しているのか――それとも、人智を越えた目的があるのか? 我々には、それすら不明なんです。ただし、このゲームにも勝利条件はあります。各女神が抱えるパーティーが、魔獣を殺し尽くした時点でゲームは終わり、最も点数の大きいパーティーが最後の勝者となります』


「勝者になって、なんかいいことでもあるのか?」


 半ばヤケになって俺が訊いたところ、チュートリアルは『ありますっ』と力強く答えた。


『そのパーティーを導いた女神はもちろん、パーティー内のうち、エースを含む二名……つまり、三名の望みを、混沌は叶えてくれるのです』


「ええっ!?」


 これはさすがに驚いた。

 エースというのがわからないが、まあパーティーリーダー的なヤツだろう。


 征服にしちゃ、妙なやり方だし、単純に遊んでるのかその邪神はっとむかついたのだが。

 鞭だけじゃなく、飴も与えるのか……。




「願いを叶える内容に制限は?」


『混沌によれば、今のところ叶えるのが不可能だった願いは一つもなかったそうです。ただし、唯一、禁止されていることがありまして、それは混沌の身を危うくするような願いは、叶えられないとか』


「チュートリアルさんが、このゲームに参加するのは、何度目ですか?」


 マイの質問に、チュートリアルは『他の女神達は二度目ですが、私は初めてです。当時、私は消滅の危機にさらされていたので。ちなみに、前回どこかの異世界で行われたこのゲームの勝者パーティー達は、見事に願いを聞き入れてもらったそうです。即物的な願いでしたが』などと淡々と教えてくれた。


 俺とマイはまた顔を見合わせた。


「となると、勝者に願いを叶えるって話は信頼できるのかな」

「内容にもよる気がしますが……前例があるのなら、可能性はあるんでしょうか」


「あっ」


 俺はひとつ思いついて、チュートリアルに尋ねた。


「もしかして、あんたがちらっと教えてくれた、『救済措置もあります』ってのは、このことなのか」

「そうです! 死者復活というスキルが存在する以上、おそらくあの混沌には同じことが可能なはず。ただ、被害者全員を蘇らせろという願いをもししたとして、それにどう応えるかまでは、わかりませんが」


「まあ、死者復活なんてスキルが本当に存在するなら、そりゃ邪神ならもっと効率よくなんとかできるんだろう……確かに救済っちゃ救済だ。しかし、そんな連中が、素直に望みを叶えてくれるかな」


『それは――』


 チュートリアルは黙り込んでしまったし、マイも沈黙したままだった。

 二人とも、内心で危ぶんでいるのだろう……当然である。俺だって同じ気持ちだ。


「とはいえ、当面はゲームを続ける他ない」


 考えた末、俺はきっぱりと言った。


「とにかく、この事態が長引けば長引くほど、死人が増える。終わらせるためには、魔獣を狩り尽くして、ゲームクリアを狙うしかないわけだ」

「そう……ですね」


 マイも吐息をついて頷いた。


「幸い、明らかに昨日より魔獣の数が減っている気がします。この周辺だけかと思いましたが、他のプレイヤーとすぐに遭遇したことからして、思ったよりたくさんのパーティーが魔獣を狩っているのでしょう」

「さっきの連中は、プレイヤー狩り専門だったけどさ」


 俺は全滅した連中を思い出し、首を振る。


『さすがにああいうパーティーはまれだと思いますが……』


 そう言いつつ、チュートリアルの声も自信なさそうだった。




「よし、あと一つだけ教えてくれっ」


 俺は立ち上がる寸前で思い出し、話を変えた。


「俺が敵のマップに映らないってのは、なんでだ? どうせ、聞いた瞬間にメシがまずくような、アレな理由があるんだろ?」

『……それについては、私はハヤトに謝らないといけません』

 

 ヤケに厳かな声でチュートリアルが言う。

 だいたいこういう時は、ろくなことじゃない。不吉な予感は当たりかよ、くそっ。


「き、聞こうじゃないか、理由を。なんであれ、知っておかなきゃな」


 俺は思わず身構え、返事を待った。


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