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ハヤトの決断10 敵の襲撃ですっ!

「城郭っ? それって、城のことか!?」


 俺は慌てて訊き返した。


「そうですよ」

「でも、この場所があるのでは?」


 控えめに天川さんが口を挟む。


「もちろん、この場所を拠点にしてくださっても、構いません。しかし、もうすぐ外でアイテムを入手する機会も増えるはず。マジックボックスというスキルもありますが、それより大量の物資を集積する場所があってもいいでしょう」


 な、なんか規模の大きな話になってきたぞっ。

 俺が唖然としている間に、チュートリアルはさっさと話を進めていく。


「物資だけじゃなくて、ハヤトの仲間に入れてほしいという者も増える可能性がありますし、学校の生徒達の問題もあるでしょう」

「そうだっ」


 生き残り生徒達を思い出し、俺は顔をしかめる。


「そこが頭の痛いところで」

「いえ、生徒達の方は、今の私でも安全策をとれるんですが」


 チュートリアルの言葉に、天川さんが小首を傾げた。


「ここで受け入れる……というわけじゃないですよね?」

「もちろん、違います。ここに来られるのは、ハヤトと、そのパーティーのみです。そこは厳格な縛りとします。さもないと、避難所扱いされて、お二人の戦いどころじゃありませんから」

「じゃあ、今はわたしと中原さんだけが――」


 意味深なことを呟き、なぜか慌てて俯いた天川さんである。

 チュートリアルに指摘される前からとうに意識していた俺まで、改めて恥ずかしくなるなっ。具体的には、ここで寝る時とか風呂入る時とか、困るよなって話だが。





「話を続けますが」


 俺達をニマニマと眺めつつ、生意気なチュートリアルが続ける。


「私が採る安全策とは、パーティーとは関係ない信徒候補者達を、ここよりさらに規模の大きい場所に預かることです。正統な対価は避難者全員から頂きますが、別に一般人が困るようなものを要求はしませんから、そこはご安心を」


 そこで、俺達が揃って質問しようとしたのを察したのか、チュートリアルはわざとらしく話を変えようとした。


「さて、まあ拠点作成のスキルがあっても、最初は小さな通路とか小屋レベルが関の山なので、今は現実的な買い物に戻りましょう。結局、スキルはなにを選びます?」

「今の段階だと、マップと加速をもらう。それで、その『拠点作成』って、スキルポイントはいくらいるんだ?」


 やむを得ず、俺も話を戻した。

 対価とやらの話は、次の機会に訊けばいいだろう。


「これは特殊スキルですし、意外と少ないですよ。取得に必要なのは、50ポイントです。それで、MPが続く限り、いつでも使えます」

「少なっ。じゃあ、それも」


「よろしい、ではハヤトのスキルポイントを250引き落としますから、マップと加速と拠点作成を受け取ってください。一度装備すると、二度となくなりませんから」


「どうやって装備を?」

「ああ、ごめんなさい。……単に、このスキルボードの該当箇所を押すだけです」


 教えてもらった通り、俺は三つのスキルを指でチョンチョンと押していった。

 ……なんか、押した回数だけ、うっすらと身体が光って消えたな。もうホント、こういうところは完全にゲームだ。


 そして、このスキルボードの大きさと「1ページ目」なんて下の方にページ数があることからして、スキルの種類は膨大なものらしい。


「あと、武器と防具に移る前に、マイ――貴女にはこれを。最初に加わる人には、ここから始めてもらいます」

「あ、ありがとう……ございます?」


 差し出された木刀を素直に受け取った天川さんが、しげしげとそれを眺めているのを見て、俺は苦笑した。


「俺の刀をどうぞー。ヒノキの棒は、所詮ヒノキの棒だから」


 ベルトに差した刀を抜き、俺は無理に彼女に押しつけた。


「でもそれは」

「遠慮しないでくれ! 共に行動するなら、生存率を重視して欲しいからさ。……これはアリだろ、チュートリアル?」

「もちろん」


 幸い、チュートリアルも反対しなかった。


「扱えるかどうか別にして、同一パーティー内での受け渡しは、むしろ推奨するところです。では、今度は武器と防具の店に移って、ハヤトの代わりの武器を選択しましょう。その後で、いよいよ初級魔法の説明とクラス分けを――」


 そこまで話した途端、ふいにぱっとチュートリアルが顔を上げた。

 見えない何を目で追っているような目つきをした挙げ句、きっぱりと立ち上がる。


「ハヤト、それにマイっ。急いで校舎に戻ってください。敵の襲撃ですっ!」


「ええっ。俺の武器は!?」

「戦闘に入る前に、私が選んで転送しますっ。今は早くっ」


 緊迫した声で言ったかと思うと、ふっと目の前が暗くなった。



 か、買い物途中だったのに!

 

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