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狙われた舞1 もっと格好いい不良がいるんだけどな

 がやがやしゃべりながら下りて来たのは三人だったが。

 まず真っ先に天川さんを見て、『おぉーーっ』と同時に意味不明な歓声を上げた。


 なおかつ、これまた三名揃って、細いウェストやら黒パンスト穿いた長い両足やら、ほどよく存在を主張する胸やらを、ジロジロ眺める……それはもう、上から下まで。


 俺も多少は見たけど、こいつらは俺の比ではない。もう、視線ごと糸引きそうなほどに、目つきが粘いっ。いろんな意味でヤバそうである。


 視姦に等しい数秒の観察が済むと、今度はぺちゃくちゃ話し始めた。



「舞ちゃ~ん。俺達を放って先へ行ったら、心配すっだろ?」

「だよなぁ。やっぱさ、女の子なんだから、危ないって」

「どうしてもって場合は、言ってくれたら護衛についたのによ、俺が!」

「かぁーーっ。抜け駆けしようとしてんじゃねーよっ」

「紳士な俺と違って、下半身が野獣のおまえらは、危なくて目を離せねーわ」

『てめぇが言うなっ』



 下品な雑談の挙げ句、最後に発言した奴に、残り二人が罵声を浴びせる。

 もうホント、想像以上にがっかりな三人組を見て、俺は心底うんざりした。

 メンバー自体も、五分刈り頭に黄色い頭、それに濃い口髭を生やした奴だしな。最後の奴は、その年でもうおっさんかとー。

 同じ二年に、もっと格好いい不良がいるんだけどな……そっちならよかったのに。

 

 まあ愚痴っても仕方ないが、制服はブレザーなので、こいつらは高等部で、しかも記章見たら三年だった……ここ、一応はお堅い校則が多い私立なのに、よく面接に受かったと思うね!

 まあ、俺が通るくらいだから、想像以上に基準が緩いのかもしれんが。


 ちなみに、こいつらに対する俺の印象は特殊なものではないらしく、沢渡さんは眉根を寄せて俺の陰に隠れたし、いろいろ言われた当人の天川さんは、にこりともせずに彼らをとっくりと見比べた。

 解体直前の、食用牛を見つめるような目つきだった。


「二階廊下にいた感染者三名のうち、二人はわたしが倒していますし、わたしへの護衛は不要です。どうか、お気遣いなく」


 ……愛想の欠片もない低い声で言う。

 い、今ので、体感温度が二度ほど下がった気がしたぞ、おい。


(おぉおお!)


 俺は内心で大いに驚いたし、感心もした。

 俺と話してた時には、礼儀正しく先輩として立ててくれたのに、こいつらにはそんな配慮は微塵もなかったからだ。

 さりげなく、イヤミまで言ったしな。


 いや、この冷え切った口調、テレビでもごくたまに出すけど、アイスドールの異名にふさわしいわなっ。俺が言われたら、軽く数時間くらいは落ち込みそうだぞ。

 あと、手にしたデカいハンティングナイフは、伊達じゃなかったか!


 ――ひたすら感心し、なおかつ「アイスドールも連中が嫌いらしい」と知って、大いに嬉しくなった。


 端的に言えば、「くははっ。ざまぁみろ!」という感じである。





「おい、なに笑ってんだ、おめー」


 内心がバレバレの俺の顔を見て、絶句していた一人が、ぎらっとこちらを見た。

 当然、残り二人も俺にばっちり注目する。


「ご機嫌だな、カスがっ。笑える立場か、おめーはよっ。舞ちゃんに迷惑かけてんじゃねーよ」

「だいたい、その刀はなんだ? どこから持って来やがった?」


 途端に、なぜか三人揃って顔を見合わせ、にんまりとほくそ笑んだ。

 ……嫌な予感しかしない。


「まあ、アレだ。よく考えたら、おめーにも同情すべき点はある、うん」


 冷酷そうな五分刈りが、ニヤけて何度も頷く。

 すかさず、髪をツンツン立てまくった真っ黄色頭が真面目腐って言った。


「だよな。あんな斑点顔連中に追いかけられたら、そりゃ逃げるわな」


 トドメに、わざとらしく困り顔を作り、口髭が俺の刀を見た。


「だが、その刀はまずいわなあ、いやホント……校則を重視する俺達としては、ちょっと見逃せんわ」


 挙げ句の果てに、ごつい手を「ほれっ」とばかりに出してきた。


「おまえ、二年だよな? なら、ここは三年の俺達が、預かっておいてやろう。センコーにチクったりはしないから、安心しろ、なっ。今の余計な騒ぎも、目を瞑っとこうじゃねーか」


 いや、全然安心できんしっ。

 というか、それより俺は、階段のちょい上から俺を見下ろす不良三名を見て、首を傾げていた。


「なんだか……妙だな」


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