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ふいに現れた助っ人

 閉じかけていた迷路の隙間から、なんとか水が満ちる前に抜け出した。


 俺はここぞとばかりに、早速マップを立ち上げてみたが、もうマップの表示にしてからが、迷路の図面そのもので、頭が痛くなる。

 ただ、マイが「多少遠回りになっても、近くの壁に手を当てて進めば、いずれは外に出られるはずですがっ」と意見してくれたのが有り難かった。


 早速実行してくれているみたいなので、俺はみんなにも声をかけた。




「マイの人力マッピングに従って、とにかく急いで移動しよう」

「この前みたいに、他のパーティーが現れたら?」


 エレインの質問に、俺は顔をしかめて答えた。


「そりゃもちろん、やむを得ない時は戦うんだよっ」


 エレインを含めてみんな嬉しくなさそうだったが、とにかく反対意見だけはでなかった。

 ただ、壁に手を当てて無言のまま急ぐ限りにおいては、なぜか他のパーティーにぶち当たることはなく、時々マップを立ち上げても、確実に迷路の中心へと向かっているらしいのがわかる。


「しかし、迷路の中心? 出口がそこってことかな」


 呟いたその瞬間、俺はマップに見えている迷路の中央部分が、一瞬だけ見えた気がした。ただそこには――


「うわ、大勢いるっ」

「どこ、どこですっ」


 チュートリアルの慌てた声に、俺は小走りに進みながら肩をすくめた。


「いや、この辺りじゃなくて、迷路の中心。そこもちょっとした広い空間があって、プレイヤーを示す光点がわんさかいたように見えた。今、ちょっと道を逸れたから、もう見えなくなったけど」

「でも、わたし達、回り道しながらでも、着実に中心に向かっている気がしますね」

「確かに。降りた位置は外れくさいけど、お陰でまだ、他のパーティーに当たったのも一度だけだしな」


「あとは、もう少し素早く中心まで行ければ――」


 エレインが愚痴った途端、誰かがふいに先の通路から顔を見せた。

 ちょうど、T字に分岐している通路である。





「――っ!」


 先頭だった俺とマイが慌てて立ち止まると、そいつは一つ頷き、ただ自分の背後を指差す。

そのまま黙って駆け去ってしまった。


「あいつはアレだ、最初の広場で見た、ソロプレイの黒髪の奴だっ。加速途中の俺を追い抜いて行きやがった奴!」

「なんで今、顔だけ出したのかしら? 別に戦う気もないみたいだったけど」


 エレインが首を傾げたが、俺はなんとなく閃いた。


「あいつを追いかけるっ」

「ええっ。危険じゃない?」


 疑問を表明した当のエレインが止めようとしたが、俺は首を振った。


「あいつ、なにか魂胆があるように見えるんだよ。それにさほど喧嘩っ早いようにも見えないしな」


 そう答えた時には、もうあの長身黒ずくめ(俺もだが)を追っていた。

 なし崩し的に、全員が俺についてきてくれた。


 珍しく誰も文句を言わなかったのは、ここを抜けるには、なにか決定的な転機が必要だと、全員が思っていたからだろう。

 あいつは、その後も先々の分岐で立ち止まり、俺達に行く手を示してくれた。


 もっとも完全に接触して言葉を交わすことはしない。


 最初の時みたいに、あくまでも道を示すだけである。罠の可能性も皆無ではないが、しかし、中央付近に集まるプレイヤー達の悲鳴や怒声が、どんどん近付いているのがわかる。

 となると、今走っているコースが正解なのは確かだ。


 そして……最後の分岐を少年が指し示す通りに曲がり、そのまま行くと……ようやく、いきなり中心部に出た――らしい。





 そこは学校のグラウンド二つ分ほどの広さがある場所だったが、プレイヤーが三桁近く集まり、それぞれ激突……つまり、戦闘状態にある。

 この空間の中央には、微妙に大気が揺らぐ場面があり、おそらくあそこがこの階層の脱出口だと思うんだが、みんななんで、斬り合いやら魔法のぶつけ合いなんかしてんだろうな。


「くっ。シールド!」


 言ってるそばからマイがシールドを展開し、ギリギリでこっちに飛んで来た雷撃をガードした。





「あんな連中、放っておけ!」


 ふいに、今まで案内してくれた少年が姿を見せ、声をかけてきた。


「おまえは高レベルの加速が使えたな? なら、俺と一緒に突っ切ろう!」

「ああ、いいなっ、好みの作戦だ」


 俺は笑顔で頷いてやった。


「ついでに、どうして俺達に手助けするのか教えてくれたら、なお有り難いっ」

「抜けてから答えるっ。まずは、ここを抜け出すことだっ」


 言下に、少年の姿がその場から消えた。

 早くも加速を使ったらしい。


「とにかく、無駄な戦いは忌避するのは賛成だ。今から加速に入るから――」


 言いかけた途端、そばにいたマイが素早く後ろから抱き締めてきて、俺は飛び上がりそうになった。


「わたしはいつでも!」 


 澄ましたマイの声が背後からっ。


「だから、こんな時だけいつも早いわよっ」

「全くです! 私が狙ってたのにっ」


 エレインとチュートリアルが叫んだが、俺は照れ隠しに喚き返した。


「いいから、早くこっちへ! 加速するぞっ」



新たな連載も始めているので、よろしければどうぞ。


【連載版】転生した元魔王、女子率激高の「対異世界戦闘学園」にスカウトされる


↑こんなタイトルで、おおよそタイトルそのままの内容です。


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