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出現した場所は、なんと空の上

 先に飛び込んだ奴がいるから、大丈夫なんだろう……そう思った俺達だったが、穴はしばらく落ちた後、滑り台のような黒い急坂に変化し、俺達をどんどん下へと送り続ける。 


 尻の下は黒い石材のように思えるが……逆に、だからこそ、ここで制動かけて立ち上がるとか、全然無理だった。


 だいたい、上を見ればいつの間にか天井ができていて、立ち上がるほどの高さもないのだ。





「も、もしかしてパーティーごとに分けて、こんな滑り台みたいな場所に飛ばされたのか!?」


 二分ほど黙々と滑った挙げ句、俺はさすがに不安になって叫んだ。


「だ、だといいんですが、それよりどこへ落ちるかです……だって、最後に落ちる場所が硬い地面とかだと、嫌ですよね」


 専用バトルスーツのチュートリアルが俺を上回る不安そうな声音を出す。


「だ、大丈夫ですっ」


 ほぼ俺の隣で並んでいるマイは、スカートを押さえつつ、声を張り上げた。

 内股でスカート押さえて滑ってる姿が可愛いが、いかんせん、今は見つめている場合じゃない。


「わたしが、ちゃんとハヤトさんを確保して、テレポートでカバーしますからっ」

「いや、私もいますからね!」


 少し前を滑るチュートリアルが慌てて言えば、遥か先の方でエレインの声もした。同じくスカートを押さえて滑ってるが、背中押して真っ先に飛び込ませたためか、30メートルは先をいってるのだ。




「ちょっとお!」


 無理な体勢から、エレインが無理に振り向く。


「私、この位置だと拾ってもらえないんじゃないのおっ? 冗談じゃないわよっ」

「ちゃんと、まずそっちへテレポートして、一緒に拾いますよー」

「ほ、本当でしょうね――て、きゃああっ」


 突如、エレインが消えたっ。

 つまり、滑り台風通路が終わったのか!





「マイっ」


 俺が手を出し、マイも同時に俺に手を伸ばし、互いにがっちり確保しあう。

 チュートリアルは、マイの足に素早くしがみついた。


「エレインさんの方へ跳びますっ」


 一言叫ぶと同時に、マイがテレポートした。

 しかし、出現した場所はなんと空の上で、エレインは今も渾身の力で叫んでいるところだった。



「――きゃぁああああああっ。て、遅いわよおおっ」



 マイが隣へ出現した途端、慌ててしがみつくっ。


「ち、地上部分まで、まだかなり高度がありますっ」


 チュートリアルが下を見て、叫んだ。


「いや、地上じゃないっ」


 俺も負けじと叫んだ。


「少なくとも、俺達が落ちる場所は、あの水たまりみたいなとこだっ」


 そう、なんだか白くて巨大な迷宮みたいなのが眼下に見えるが、しかし俺達の直下に限っていえば、完全な円形をした湖みたいな場所だ。おそらくは、あそこへ落ちるだろう。


「シールド・レベル5!」


 俺は防御魔法を多層に展開して、叫んだ。


「このまま、落ちようっ。他の硬い床に落ちるよりはマシ――」


 言ってるそばから、全員、派手に水たまりに落ちた。

 シールドをとっさに幾重にも展開したお陰で、それぞれ衝撃が分散されて、俺達には大したダメージはなかった。


 せいぜい、多層展開した一番内側のボール上のシールド内で、乱暴にシェイクされて女の子達の身体にあちこち触れてしまっただけだ。


 最後はマイの胸をモロに掴んでしまい、「ご、ごめんっ」と泡を食って叫ぶ始末である。


「い、いえ……事故ですから」


 俺がマイに覆い被さる形で二人で抱き合っていると、チュートリアルの手が伸びて、粗っぽく俺を引きはがした。


「はいはい、踊り子さんにはお触り禁止ですっ」

「わ、わざとじゃないわいっ」


 反射的に言い返し、ようやく俺は周囲を見る。 

 シールドは、外部からのものは水も通さないので、この巨大水たまりにぷかぷか浮いている形だが、このままではどうにもならない。






「泳げない人はいないだろうな?」

「いるわよっ。あたし、街育ちだし、泳げないしっ」


 エレインが不機嫌に叫んだ。


「それと言っておきますけど、背中押されて、死ぬほど怖かったんだからねっ」

「悪かった! それで、他にはいないな?」

「謝罪、それだけなのっ」


 恨みがましく言われたが、無視!

 いつまでも浮いてる場合じゃないし。


「わたしは泳げます」

「うんうん、マイは出来る子!」

「あのぉ」


 俺が褒めた途端、気まずそうにチュートリアルが手を上げた。


「えへへ……私は泳げないです。天上世界に泳ぐ場所なんかないですし」

「いや、えへへじゃないだろ」


 俺は脱力して言った。

 全く、この女神さまは、凄いのか天然なのか、わからんな。



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