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居場所
稽古に励む毎日を送り続けた。
そして、気がつけば桜の咲く季節となっていた。
「綺音ちゃん、千紗ちゃん! ちょっとええか?」
ある日の夜。
私と千紗ちゃんは政友さんに呼ばれた。
彼の部屋に入って、二人並んで正座する。
「さっきお師匠さんにちょっとお願いしに行ってきたんや。
二人は毎日稽古頑張ってはるし、覚えるのも早いし、そろそろ芸妓として出させてほしいって頼んだら、『ほんなら出てもらいまひょか』て言うてもらいました」
嘘だろ、と耳を疑った。
「1ヶ月後、千紗ちゃんは自前さんの小晴さん姉さんに、綺音ちゃんはここの置屋のこと乃さん姉さんに引いてもらって、二人同時に芸妓としてお見世出しします」
お見世出しとは、デビューのこと。
なんだかものすごく嬉しい。
自分の居場所ができたことを改めて実感した。
これからは、お客さんのために三味線を弾く。
そう思ってみると、あまり三味線が嫌ではなく思えてきた。




