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小さな約束




「室屋さんとこのお仕込みさんや〜。こんにちは」


三十くらいの男性に話しかけられ、立ち止まる。

この方は、谷さんという、お客様。


「谷さんのお兄さん、こんにちは」


京の花街では、目上の女性をお姉さん、男性をお兄さんと呼ぶ風習がある。


「お使い帰り?」

「へえ」

「半分持ったるで」


谷さんに、荷物を半分奪われた。

流石に申し訳ないのだが、かなり重かったから、正直、助かった。


「すんまへん。おおきに」


何かをしてもらったらお礼をすぐにしろと、ここに来てから政友さんとこと乃さん姐さんに習った。



夕暮れの島原は、いつもなら人が沢山歩いているけれど、今日はほとんどのお茶屋さんが定休日だからあまり人通りは多くない。


しん、と冷たい空気に、黄昏の光が反射する。


「もう師走か〜。綺音ちゃんが島原(ここ)に来てから三月(みつき)くらい経つんやなあ」


谷さんに言われてみて、改めて思い出した。

この三ヶ月、忙しすぎて、ゆっくり考えることが出来なかったけど。


「そうどすね〜! 早いもんどす」


どうりで、まだたどたどしいけど、さらっと京言葉が出てくるようになった。


「綺音ちゃんは、どこから来たの?」


「海も山もある、楽しい街どすね」

地元のことを思い出したのは久しぶりだ。


「俺の生まれ故郷も、海があって、山があって、魚が美味しくて、楽しいところなんだ」


いつの間にか谷さんから京言葉が消えていた。


「久しぶりに帰りたいけどなかなかなあ」


普段は大人っぽくてしっかりした彼が寂しそうな顔をした。

地元を思う気持ちは同じなんだ。


「それじゃあまた、谷さんの地元のお話、うちに聞かせておくれやす」


やがて、置屋の前に着く。


「ありがとう。また綺音ちゃんの故郷のことも教えてな」


指切りをした。


「ほな、またね」








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