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見習い



柚ちゃんの髪をといて、お化粧をざっと確認した。


「うん。ええ感じ」



白粉の塗りむらは多少あるものの、それ以外はよくできているし、塗りむらは見習いさんの愛嬌みたいなものだから、あえて直さなかった。



「今日から一週間、見習いさんとして出てもらいますけど、しっかり周りを見ること。

見習いさんの一番の仕事は姉さん方のお手伝いどす」


まさか自分がこんなことを言う日が来るなんて。


「今日はうちと一緒にお座敷やけど、明日からはどうなるかわからしまへんさかい臨機応変に動かなあきまへんえ。

まあ柚乃なら大丈夫やね」


不安そうな顔。だけどすこし、楽しそう。


「緊張してはる?」


「へえ。心臓がうるさくてあきまへん……」


そういえば私も初めてのお座敷のまえは不安で仕方がなかったなあ。

この1週間が終わって仕舞えば、柚ちゃんは完全に柚乃になる。花街の人間に、本当の意味でなるのだ。なってしまったら、もう一生普通の女の子には戻れないと誰かが言っていた。花街を出たとしても、らしい。それほどまでにこの街の人の繋がりだとか、しきたりだとか、礼儀だとかは深くて厳しい。そんな厳しさを乗り越えた上で、お客さんから感謝をされる。この仕事の、醍醐味だ。


「もしなにか失敗したとしても、姉さん方が絶対に助けてくれはる。そやから笑顔でしっかり動けば大丈夫。

今日は楽しもうな」




日が沈むまで、あとすこし。





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