終わらない夢
「久しぶり、政秋」
大人になってから初めてきちんと目を合わせた友人は、いつの間にか藍色が似合うような人になっていた。
挨拶をしてからしばらく無言が続く。風鈴の音が三度響いて、先に口を開いたのは、政友だった。
「平助、ごめん。本当にごめん」
"俺は"。いつもは口にしない一人称が自然と口からこぼれた。
「うちのお座敷に来てくれた時、俺が叶えられなかった夢を叶えた平助を見て羨ましかった。なんで俺は置屋の主人なんてやってるんだって悔しかった」
「違うよ。謝らなきゃいけないのは俺の方なんだ。
あのとき……14歳のとき、ぜんぶ知ってたのに俺は守れなかった。
ごめん…ごめんね、政秋」
大の大人が謝り合う、このひどく奇妙で、不釣り合いな光景を唯一見ているのは茜色の夕日だけ。
「なぁ、俺気付いたんだ。 まだ夢は終わってないって」
「え?」
「俺はもう刀を握れない。ただの置屋の主人だ。
でも、だからこそ。戦ってる平助たちを深めた町の人たちの帰る場所を、安心できる場所を守れるんだ」
そして、平助が泣きながら、笑う。
「じゃあ、俺は国を変えるよ」
「それ、いいな」
会話が、夕日が、表情が。
幼い頃のそれと重なる。
「俺たちなら、どんな国だって作れるような気がするよ」
二人の声が重なった。
それから、二人は夢を語り合う。
まだ"子ども"と呼ばれていた頃と変わらぬあの隔てのない口調。
ようやく幼い日々を思い出にできた。降りかかった暗い過去さえも忘れてしまうほどの懐かしさを、幸せを、動乱の闇のほんのひと時、二人はぎゅっと噛みしめる。




