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大人になるスピード





「あや乃ちゃん、ちょっとちょっと」


私を手招きしたのは、組長を補佐する伍長の安藤勇次郎さん。上司からも、後輩からも勇さんと呼ばれている。


「勇さんこんばんは」


この方はすごく面白い。

初めての新選組の皆さんとのお座敷の時も話しやすかったのをよく覚えている。



「元気にしてた?」


「へえ。勇さんこそ池田屋の一件ではご活躍しはったと聞きました。ご苦労さんどす」


勇さんはにっ、と口元を上げて笑った。


「ありがとう! 京の街は、俺たちが守るからな」


いつものように明るい笑顔で言ってのけた彼だけど、その拳は強く握られていた。


市場で魚を買って屯所に帰ろうとしたら猫にとられたとか、酔っ払った土方さんがうちわと間違えてしゃもじで扇いでたとか、面白すぎる世間話に何度か笑ってから、勇さんは一度真剣な顔になる。


「ところでさ、室屋の政友さんのことなんだけど」



私は頷いた。



「藤堂さんがすごく会いたがってるんだ。政友さんの都合がいい時に屯所に来てもらえないかな?」


「伝えておきます。

藤堂さん、怪我しはったそうやけど具合はどないどすか」


「だいぶいいみたいだよ」


「ほんならよかったです」



「ただ額に傷ができたのを気にしてるみたいでどうやって隠そうか毎日考えてるみたい」


なんとなく彼らしい。

目立つ傷を隠そうとするエピソードはどう聞いたって平成の少年のそれと変わらないのに怪我した理由があまりにも重すぎる。


この時代の人たちは、大人になるのが早い。まだ心には成長しきれてない部分だってあるはずなのに、どこに置いてきてしまったのだろう。





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