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そばに。
「こんな風になるってわかってたらあのとき、俺は平助に––––––––」
それから、政友さんはなにも話さなかった。
彼はいつだってしっかりしてる完璧な大人の人だと思ってた。
私はいったい彼のなにを見ていたんだろうね?
きっと、政友さんはまだ二十代。平成だったらようやく独り立ちするくらいの年齢だ。
それなのに、この人は–––––––。
十四歳で室屋政友として歩き始めるときに弱音も涙も、掛里政秋という名前のついた自分らしさと一緒にどこかへ押し込めて鍵をかけてきたのだろう。
だから苦しいことがあっても、周りからは一見したら涼しく乗り越えているようにみえていたと思う。
でもそれは「強さ」じゃなくて、助けの求め方を忘れてしまった「弱さ」の表れで……。
普通の人がだれかと協力して超える苦しみを、政友さんはずっと、ひとりぼっちで超えてきたのだ。
そばにいたいと、思った。
私に居場所をくれたこの人を、ひとりにしたくない。
できることは、たぶんそんなに多くはないけれど。
せめて今だけは。




