表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/47

この気持ちの名前を




「ちょっと、寄り道していきまへんか」



政友さんのひとこと。

二人で神社に桜の花を見に行くことになった。



鳥居をくぐったその次の瞬間。


「わあ、綺麗」


私は息を飲んだ。


春の風に吹かれて舞う薄紅色の花びらを、わずかに傾き始めた陽の光が照らしている。

独特な草っぽい匂いと、土の香りが鼻腔をつく。


目の前に広がる情景に、かつて通った通学路の景色が重なった。


楽器を背負う高校生たち。

それぞれの夢を持っていた。

周りのみんなのその姿を見るのは、正直辛かった。

だって、私は三味線が嫌いで、夢なんてなかったから。


だけど今は、違う。

学校のみんなに負けないくらいの目標がある。

島原一の三味線弾きになること。そして、凝り固まったこの時代を生きる人たちを少しでも安らかな気持ちにしたい。


こんな気持ちになれたのは、私を拾ってくれた政友さんのおかげだ。


「政友さん、おおきに」


零れ桜の雨を背景に、いきなりどうした、と笑う彼。


––––––トクン


そんな音を、私は確かに聞いた。

一定のペースで刻まれるそれが何か理解するにはそう時間はかからなかった。

私は決して純情な乙女ではない。この気持ちの名前を知っている。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ