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篠原呉服店
「篠原呉服店」
たどり着いたお店の看板に書いてある店名に、私は驚愕した。
私の家と同じ名前なのだ。
しかも、のれんに記されてる菖蒲の家紋も、まるっきり同じ。
「こんにちは、室屋どす」
お店に入る政友さんの後をつく。
「失礼します」
店内には、四、五人の客がいる。
「これはこれは、室屋はん。おこしやす」
若い二人の男女が出迎えたくれた。おそらく、店主夫婦なのだろう。
「この子はうちの芸妓のあや乃どす」
「こんにちは。はじめまして、室屋のあや乃どす。
よろしゅうおたのもうします」
お約束かごと呼ばれるカバンのようなものから千社という名刺を出して渡す。
「室屋さんとこの千晴はんとあや乃はんは島原で一番べっぴんや、って噂で聞きいてましたんやけど、ほんまに綺麗どすなあ」
奥さんにべた褒めされてさすがに照れる。
「ほんまは千晴も連れてこれたらよかったんどすけど、ちょうど里帰りしてはって」
千晴が里帰り中とは初耳だ。
会話が途切れたところである帯留めに目がいく。
「これ、見てもよろしおすか?」
この時代では珍しい、桜があしらわれた帯留めである。
実はこの帯留め、見たことがある。
「これはな、うちの呉服店に伝わる帯留めでこの店ができてからデザイン、一切変わってないんだよ」
父が誇らしげにいっていた、それだ。
「可愛らしいですね」
なんだか、嬉しい。




