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――ちょっと子供っぽいかなあ。
歩きながら鈴代は思案した。黒羽織についた雪をこまめに払い落し、ゆっくりと。
荷の中には女物のかんざしが入っている。白ちりめんで作られた桜があしらわれた、十代の女の子が喜ぶような花かんざしだ。
もちろん、待っているさぎのためである。
白い髪や肌のせいか、外見は大人びて見える。けれど話してみれば、まだまだ少女であることがすぐにわかる。綺麗なものより可愛らしいものの方が好ましいと思って買ってきたのだ。
あの年頃の女の子は難しい、と首をひねる。相手の内面を読みたがえていたら、子供扱いするなと怒られかねない。どうなるだろうか、と鈴代はため息をついた。
吐く息は白く、灰色の空から雪がちらちらと舞っている。
風はなく、ふわりと空気を抱いた羽のよう。
以前ほど厳しい寒さではなく、降り積もるような雪ではない。
ゆっくりとでも春が近づいている証拠だろう。
だからだろう。
聞こえてきたのは唄だった。か細い女の声が、今度はよく聞こえる。
白鷺の羽風に雪の散りて 花の散りし景色と見えど
あたら眺めの雪ぞ散りなん 雪ぞ散りなん 憎かららぬ
ぞくり、と背に寒気が走った。聞き覚えのある声だった。
鈴代はその場に荷を捨て、駆け出す。
回りこんだ家の裏手に、彼女はいた。
白い髪に白い肌――
そのまま白一面の世界に消えてしまいそうで。
「さぎっ!?」
鈴代は思わず、手を伸ばした。
「ひゃっ!」
手を取られ、さぎは思わず飛び上がった。
「な、な、なによぅ。驚かせないで、心臓止まるかと思ったじゃない」
「それはこっちの台詞だよ。こんな雪の日に外に出て、身体を悪くしたらどうするのさ。せっかく良くなってきたっていうのに」
「う……ごめんなさい」
言い訳できないと知ったのか、さぎはしょんぼりと頭を下げた。
白く、小さな手は凍ったように冷たい。顔色も心なしかいつもより白く、息は苦しげに聞こえる。悪化してしまったのかもしれない。
鈴代はその手を引いた。手のひらで暖めるように包み込む。
「ほら、家まで送っていくから――どうしたの?」
少しためらってから、さぎはすっかり色を失くした唇を開いた。
「行ってみたいところがあるの」