つまらない。することがない。
することがない
することがまったくない。
私は今年の大学入試で失敗したために、浪人生活を余儀なくされた者だ。気軽に浪人君とでも呼んでほしい。
一年間、これでもちゃんと勉強したつもりだ。遊び時間を削りに削って、今年に入ってからはほぼ遊んでない。正月から入試当日まで勉強漬けだった。そして、その入試で失敗してしまったのだ。
言い訳をすると、運が悪かった。自分の苦手分野ばっかり、大学が出してきたのだ。その効果が抜群な攻撃に見舞われ、私は見事に撃沈し、今に至る。
正直言って、あれだけ勉強しても受からなかったのだから、さらに一年間勉強したところで、私はその大学に入学することはかなわないだろう。そう考えると、勉強のやる気もそがれる。
現役生から浪人生にクラスチェンジしてから2週間ほど経った今、精神的ショックからはとっくに抜け出している。だからといって勉強をするモチベーションはない。
勉強をしないなら、久しぶりに遊ぼうと思ったのだが、することがない。
アニメを一年ぶりくらいに見てみたが、どうも面白いと思わない。また何種類か見ようにも、だんだん見るのが面倒になってきて、結局何種類かは見ることすらなくアニメを見ることに飽きてしまった。
アニメに飽きたなら本でも読むかと思った。
しかしこれもまたつまらない。何冊か家にある本を読もうとしたが、どれも内容は覚えているので、読んでいる最中の高揚感が存在しない。さらに、ここ一年教科書や入試問題でしか長文を読んできていなかったので、読書などという、数百ページに及ぶ文章を読まないといけない作業はどうにも耐えられなかった。リハビリが必要に感じた。
家にいられない。家にいても楽しいことがない。そうなるとやはり外に出るしかないだろうか。私は外に遊びに行った。
遊びに行ったと言っても別に人に会うわけじゃない。近くの本屋にでも行って、今年のための参考書をちらっと見に行ったり、興味を持てそうな本がないだろうかと見に行こうと思ったのだ。
高校を卒業したので、通学定期はとうに切れている。そうなると、バスにのって町まで出かけるのもお金がもったいない。となると、自宅の近くにある、小さな書店しか行けるところがない。
外に出た。くしゃみが出た。そういえば自分は花粉症だった。つらい。あまり外にはいたくない。私は早足で書店に向かった。
書店は相も変わらず閑古鳥が鳴いていた。そりゃそうだ。今日は平日の昼間だ。学生は学校に行ってるし、それ以外の人は町まで行くだろう。私は書店をまわった。
別に何か目的があるわけではなかった。ゆっくりと書店をまわっていく。参考書コーナーには見飽きた参考書が置いてある。いくら参考書があっても、本人の先天的能力がないと大学になんか受からない。ここにいても辛くなるだけだと悟った。私はこのコーナーを離れる。
書店を一通り見て回ったけど、どうも興味を持てそうなものはなかった。つまらない。ここにいても邪魔にはならないだろうけど、ここにいても仕方ない。家に帰ることにした。
家に帰って私はシャワーを浴びた。花粉症がひどいので、この時期はどうも外から帰ってきたらすぐにシャワーを浴びないとどうもくしゃみが止まらなくなるのだ。
さて、困った。することがない。アニメもつまらない、本もつまらない、外もつまらない。
とりあえず、テレビでも眺めようかと思い、テレビをつけた。テレビなんて久しく見ていなかった。朝にニュースを垂れ流しにして、時計代わりに使っていたが、内容なんて聞いていない。今日は久しぶりにテレビを見るか。
テレビではワイドショーをやっていた。なんか、隣国がまたミサイルを発射したらしい。現実味がない。専門家らしき人たちが、今後の対応について意見を述べている。私としては隣国に対してどう対処すればいいのかよりも、どうすれば大学に受かれるかの方が知りたいんだけど。
つまらない。テレビでやっていることもどうも興味を持てなかった。現実は小説よりも奇なりとはいうものの、大抵は小説のほうが面白い。その小説にさえ興味を持てないんだから、テレビに興味を持てないのも当然かもしれない。
っと、なんか面白いニュースがある。人工知能が小説を書いて、それがなんかの賞の一次審査を通ったらしい。これは小説並みの内容じゃないだろうか。ちょっと興味がある。
何を隠そう私は人工知能が大好きなんだ。アニメや小説でもよく出てくるが、中高生であったころにはこの人工知能をどうにか作れないかとプログラムを学んでいた。まぁ結局大したものは作れずにその研究は頓挫してしまったんだが。
しかし人工知能が小説を書くとは、世界も進んだものだなぁ。そのうち頭脳仕事も人工知能が担うようになるんじゃないだろうか。そしたら、大学に受かることもできないような私は完全に用無しになるな。
どうもマイナス思考に陥っちゃう。これは良くない。私は頭を振りこの考えを払しょくする。
逆に考えるんだ。人工知能が仕事を担うようになるんだったら、どうにか人工知能と同じことが出来れば自分はまだ必要とされる人間になれるんじゃないだろうか。
そう思い立った私はパソコンを立ち上げた。確かインターネットに有名な小説投稿サイトがあったはず…
あった。とりあえず何かしらここに書いていれば暇はまぎれるだろう。今なら人工知能のこともあってモチベーションがある。
そうして私は、今小説を書いている。内容も稚拙で、文法もままならない。人工知能の方がこの分野でも優れていそうだ。
でも、私にはまだ人工知能では生み出せていない赤ん坊からの経験で培った想像力がある。人間らしさがある。かろうじて人工知能にはない要素を持っている私、そんな私はまだ生きてていいのだろうか。
その質問には誰も答えてくれないまま、私は今でもキーボードを打っている。