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辺境の男  作者: Provenance Watcher
第一章
3/3

2.嘘、別れ

 2027年5月。連休明けの月曜日。吉原は、海上防衛隊船内の船室にいた。天井も壁もクリーム色のペンキで塗装されたその部屋には、8畳ほどの空間に二段ベッドが4つ並べられていた。吉原は、その内の1床に腰を掛け、早くも船酔いと格闘していた。

 海上防衛隊員として、海上防衛隊船に乗り込んでおきながら、この体たらく。しかも、あと60時間以上もこの船に揺られていなければならないのだ。だが、もう後戻りすることはできなかった。

「いやいやいや、皆さん大丈夫ですか?」

 声に反応し、吉原が顔を上げると、そこには濃紺の海上防衛隊員制式服に身を包んだ男がいた。男の名前は堀之内光敏。乗船前に、吉原たち新米防衛隊員にオリエンテーリングをした隊員だ。年齢は、20代後半だろうか。32歳になる吉原よりは若いだろう。制帽を少し斜めに被っている着こなしに、堀之内の若さと歪みが顕れている。

 すると、吉原と同じ新米防衛隊員――しかし、明らかに吉原より年上の――が、堀之内を睨め付けながら毒づく。

「なんでこんなボロ船で60時間も揺られなきゃいけねぇんだよ」

 たしかに、その男の言うとおり、日本海にある島嶼に向かうのに、なぜ東京都の港から出港しなければならないのか。陸路で山口県の港なり、九州の港なりに行ってから、船に乗ってもいいのではないか。

「海上防衛隊は首都管掌なんですよ」

 男の視線を受け流し言い放った堀之内は、その先は分かっているだろう、と言わんばかりの表情を浮かべている。その通り、それ以上誰も口を挟むことはなかった。


 政府が推し進める地方分権化は、国民の予想を超えた速度で進行し、そして整えられた。都道府県を括る新たな区分け。地方交付税額の増加。様々な権限の委譲。つまり、地方自治体からこれまで上がっていた声や意見を、政府がすべて呑んだ形なのだ。

 地方財政は潤い、活気づいた。だが、それも一時的であった。その理由は様々あるが、最も深刻だったのは政策ブレーンの不足。一部の自治体は、地方分権後に起こるであろう問題に対し、早くから手を打ち政調スタッフを揃え、さらに発展を遂げた。しかし、そうでない自治体も多かった。結果、これまで以上に地域間格差は拡がってしまったのだった。


 堀之内は、九州地方と中国地方が、首都が管掌する海上防衛隊に力を貸すわけがない、ということを言いたかったのだ。


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