北の海賊・東の姫君 其の四
最終回です。
お付き合いありがとうございます。
北の海賊・東の姫君 其の四
「開けてみろ」
彼女が掌を開くと、そこには今まで見たことのないほど見事な青玉があった。
「これは?」
「俺が今まで見つけた中で、一番、価値のある宝玉だ。青は俺の一番好きな色だ。それをお前にやる」
「どうして・・・」
咲耶が目を丸くする。その口調が柔らかくなったことに、レオンはほっとした。
「それ以上の宝を見つけたからさ」
「それ以上って?」
「鈍い奴だな、お前は」
レオンはそう言うと咲耶を抱きしめた。
「咲耶、俺が見つけた最高の宝はお前だ。俺はお前が欲しい、心も体も、すべてが。今まで見つけたすべての財宝を引き換えにしてでも」
「レオン」
「俺の妻になれ。一緒に世界中の海を旅しよう。そしていつかお前の母の国にも行こう」
咲耶はしばらくの間、琥珀色の瞳でレオンをじっと見つめていた。
レオンにとって永遠にも思える長い沈黙。
ようやく咲耶が口を開いた。
「せっかくだが、これは受け取れぬ」
そう言うと咲耶は、手の中の青玉をレオンに返した。
「え・・・」
さきほどの咲耶の様子から、求婚を受け入れてくれるものだと思い込んでいたレオンは落胆した。
「では、これからどうする。父親のもとに帰りたくはなかろう。そうだ、次の港に俺の信頼している宿屋のおかみがいる。そこで働くか?それとも修道院に入るか。俺の知り合いのシスターに頼んで・・・」
「私にはその青玉よりも、もっと欲しいものがある」
咲耶はレオンの言葉を遮るように言った。
「ほしいもの?俺の持っているものか」
咲耶はこくりと頷いた。
「それは何だ、お前の望むものならなんでも・・・」
咲耶のしなやかな腕が伸ばされ、その手がレオンの髪に触れた。
陽の光を写し取ったような、黄金色の髪。そしてその瞳は、バルト海のような、わずかに紫を帯びた青色だった。
そうそれは、最高級の青玉、コーンフラワーブルーと同じ色。
「私が欲しいのはこちらの青玉のほうだ」
「さくや・・・」
ようやく、咲耶の意図することがレオンに伝わった。
「その青玉の瞳で、ずっと私を見ていてくれるか?」
レオンは大きく頷いた。
「ああ、もちろん。俺のすべてはお前のものだ。ただし、絶対に一生離さないから、覚悟をしておけ、いいな」
咲耶はにっこり笑った。その笑顔はレオンが今まで見てきたどんな宝よりも美しく、価値のあるものだった。
咲耶の腕がレオンの首に回され、レオンは咲耶をしっかりと抱きしめた。
交わされる口づけに永遠の愛を誓う。
今この瞬間から、
俺のすべてはお前のものだ。
決して離さない。
永遠に・・・。
END
最後はやっぱり恥ずかしい、というw
読んでくださった方、どうもありがとうございます。
今までにないタイプの話だったので、ちょっとどきどきしました。
感想などいただけるとうれしいです。