12月18日
「村上さん?どうしたの?」
村上さんはこの施設に長くいる女性だ。延命治療を受けている。彼女は指先で何かを示すしかできない。彼女の病気は詳細不明の皮膚病だそうで全身がカサついており、いつも痒みで苦悶の表情を浮かべている。
その彼女がしきりに、カレンダーを指さしている。
12月18日。この日がどうしたというのだろうか。
彼女の身体を拭く時間だ。彼女は長らく寝たきりで床擦れがひどい。
ところが、今日は彼女の病衣をはぐり背中を見ても床擦れは無い。すっかり治ったように、つるりとした背中だ。私は不思議に思ったが、仕事は楽になったので彼女の身体を丁寧に拭いてあげた。
彼女は、身体を拭いて貰い嬉しかったのかもしれない。
私に「ふふっ」と笑いかけた。
彼女の笑顔を見たのは初めてかもしれない。
彼女はか細い声で言った。
「あげるね…」と。
※
私は今、白い天井を見つめている。私は詳細不明の皮膚病で、病院のベッドに横たわっている。
12月18日。皮膚(12)、違和(18)。あの日、私は貰ってしまった。村上さんは、あの日から間もなく退院したそうだ。健康そのもの。病気など、はじめから無かったように。
若い看護師が、病室に入ってきた。
「山下さんですか? 私、広瀬です。 一緒に頑張りましょうね!」
広瀬さんは、若く綺麗な肌をしている。
私は次の、12月18日が待ち遠しい。




