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貞操逆転世界で好き放題  作者: miguel92
日輪編

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92/125

92.本来の任務 ◆ 江田島警部 ◆

 所轄警察官目線の話です。




 シンフォニア高校男性警護小隊、その下には一年生を担当する1係、二年生は2係、三年生の3係と言う組織。

 警護員は本庁から派遣されて来るが、それぞれの係長は所轄の日王署の警備課の所属。

 男性警護はただマル対を守れば良いと言うものではない、警護には地域の所轄との密接な連携が必要と言う考え。



 本庁所属の警護員は所轄の編成下に置かれるわけだが“編成”なので、業務命令はするが、昇進などの人事権は持たない、これが“編制”となると上司は人事権まで握る事になる。


 警護員達は体育科の助教と言う形で学内にはいるものの、国立高校なので校内は文部科学省の所管、男性警護業務は学校の敷地外と言う決まり。


 日王市は小さな街で、住民たちもシンフォニア高校には慣れているので、トラブルらしいトラブルは起きた事が無い。


 街の唯一の入り口がチューブ駅のみ、住民以外の者が駅を利用すれば、防犯カメラが即座に認識して、鉄道公安隊が把握、そのまま日王署にリアルタイムで連絡が行く仕組み。

 そんな監視カメラのおかげで警護員の仕事は登下校の時間帯に通学路に立って男子生徒を見送りするだけ。


 最近は荒川カイトがブレイクして有象無象共が日王市に聖地巡礼しに来るが、やつらも聖地では大人しい。



 年に数回ある校外学習では男性警護員は大忙し、特に宿泊訓練では街から離れた宿泊施設に男性を泊らせると言う事も有り、所轄の警備課まで総動員しての警護。

 もっとも一番の脅威が野性動物なのだが。



 ▽▽



 シンフォニア高校男性警護小隊、一係長、江田島警部、本来は現場に出る立場ではないが、宿泊訓練、それも男子生徒がオリエンテーリングで野外に出ていると言う事で、生徒たちのグループに同行。


 生徒の最後尾よりも30M程後ろに構えているのが散弾銃を背中に背負った、所轄の屋久島巡査長だ。

 動物のフンや足跡、鳥の鳴き声等に注意を払い危険な野性動物が近寄って来ないか警戒している。


「おい、屋久島」


「はい、江田島さん」


「さっき通り過ぎた沢の下流でおかしな動きがあったぞ、引き返して確認して来い」


 地域課所属の署員はかけ足で引き返して行った、いよいよポイントに近づいた。

 オリエンテーリングの生徒の最後尾、女子生徒と話し込んでいる男子、荒川カイトがターゲット。


「淡路島」


「なんでしょう?」


「荒川君をこっちに呼べ」


「わかりました」


 男性警護員とは言え所詮は警察官、上司の命令に無条件で従うあたりが楽で良い。

「江田島警部、荒川君を連れて来ました」

 自分の警護員を信頼しきっている少年、その表情は我々になんの疑いも抱いていない。


「淡路島、そこの沢が見えるか、今屋久島が調べに行っているが」


「どこらへんでしょうか?」


 無防備に晒したうなじにスタンガンを当てると、ジャージ姿の警護員は無様に倒れる。

 自身が危ないと言うのに倒れた警護員に駆け寄る少年の首筋にもスタンガンを当てると、江田島警部は指笛を鳴らす。


 草むらからは六名の鍛えた女性、モゾモゾと動いている二つの物体からスマホや電子機器を取りあげる。

 ウンウンうなっている二人を担ぎあげると、馴れた動きで藪の中に入り、峰に向かってカモシカの様に駆け、あっという間に視界から消えた。



 キッチリ3分経ったのを時計で確認した江田島警部は無線機を取り出す。


「緊急通報、緊急通報、一係長江田島だ、只今熊笹林道にて野外活動中の男子生徒が連れ去られた。

 繰り返す男子生徒の連れ去り発生、犯人は三人組、砥石沢を下って行った模様、予備隊はただちに下流にまわれ」


[ ……こちら予備隊の種子島、大至急下流域に移動します ]


[ 警備本部より、江田島警部、犯人の風体が分かれば連絡されたい ]


「こちら江田島、犯人グループは外国人風の三人組」


[ ただいま所轄に連絡、応援を向かわせている、警護員淡路島との無線が不通 ]


[ こちら警備本部、被拉致者は荒川カイトで間違いないか? ]


「江田島だ、荒川カイトが拉致された」


[ 警備本部より全員へ1325、熊笹林道にて、外国人風の三人組が野外活動中の荒川カイトを拉致、砥石沢を下って逃走中、なお直属警護員に関しては不明 ]


「こちら江田島、速やかに下流域に部隊を移動させ包囲をひくように」


[ 警備本部より、了解、なお現在野外活動中の全ての生徒は宿泊施設に戻させる…… ]



 抜き取ったスマホや電子機器を抱えた江田島警部は沢に下りていき、数十メートル歩くと濃い藪を見つけ、スマホを投げ込む、更に下流に進むと同じ様に電子機器を投げ込んで行く。

“これで充分だろう”


「こちら江田島、現在犯人グループを追って砥石沢を下っている、途中犯人グループが通り過ぎた痕跡多数あり、注意されたし」


[ 警備本部、了解 ]



 押収品の外国製のナイフを取り出し、脇腹に当てる、より良い世界の為だ、迷いは無い。

 躊躇なくナイフの柄に力を入れると、痛みで脂汗が流れて来る。

 カプセル型の錠剤を口に放り込み奥歯で力いっぱい噛み潰す、一瞬で意識を手放し、そのまま清流に倒れ込む。




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