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貞操逆転世界で好き放題  作者: miguel92
日輪編

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91/124

91.夏のお祭り

 宿泊合宿と言う行事です。

ほとんどの住民が都市に住んでいる世界ですので、野外生活を体験させておくと言う教育方針です。



 期末テストの解答が返ると、すぐに始まった宿泊訓練、学校に集合したらグループ別け、風組の風香ふうかちゃんと静風しずかぜちゃん、波組の山波さんはちゃんと波莉はりちゃん、潮組うしおくみから代潮美よしみちゃんのグループ。


 いつものオムニバスよりも一回り小さい車に女の子達と乗り込むと、最後に護衛の淡路島さんが乗って来る。

 普段は海馬島とどしまさんを偽装警護して、礼文さんと利尻さんに守られている俺だけど、こう言った野外活動では偽装工作は必要なく、マンツーマンで守ってくれるわけだ。


 市外に出る時はチューブに乗り、真っ暗なトンネルを延々と走っていくだけだった。

 今回は無人バスで市街地を通り抜け、何も無い原野に出る、初めて地上から市外に出て大興奮。


「あっ、あそこにフェンスがあったよ、ねぇ、あれが野性動物除けのフェンスなの?」


「えっとー、多分」


波莉はりちゃん達、女子は小三の時から毎年、自然の家に行っているって、言ってなかった?」


「カイト君、日王市の生徒は何だかんだで、年二回は自然の家に行っているけど、外の景色を見ている子はいませんよ」


「そうそう、行きはワイワイ騒いで、帰りは全員爆睡、気がつけば学校だよねー」


「カイト君は毎週、帝都に通っているのでしょ、なんで原野に興奮しているの?」


「そうですよ、草しか生えてないじゃないですか、クレープ屋なんてありませんよ」


 まさかの集中砲火を浴びてしまった、こちらの世界には“田舎”は無い、チューブで繋がった街が点々とあって、その間には単なる原野が広がっている。

 人口がずいぶん減ってしまったから、みんな街に集まり肩を寄せ合って生きているみたいだよ。


 ▽


 日王市を出て1時間ほど走った先にキャンプ場があった、原野の中に突然数棟の建物現れた。

 女子はテントを張って夜を過ごすそうだけど、男子生徒は安全の為、コンクリートで囲われエアコンの効いた宿舎だけどね。


 キャンプ場に着いたらオリエンテーションもそこそこに、テントを張り、昼ご飯の準備を始めたり、女子生徒達は毎年来ている場所で、勝手知ったとこで手際が良い。

 アウトドアの定番料理カレーをあっという間に作り上げる。

 俺を含め男子生徒達は何もさせてもらえない、男には労働をさせないと言うのが建前だけど、動きの良い女子達の中に入って行く自信はないよ。


「はい、カイト君、カレーですよ」


「ありがとう、それじゃみんなで食べようか」

 男子生徒の数少ない仕事“いただきます”を言う。



 食事中みんなから感じる浮かれた空気。


代潮美よしみちゃん」


「何かしら、カイト君」


「なんか、みんな浮かれていない?」


「あー、そりゃ夜はアレがあるからね」


「キャンプファイアーでフォークダンスでも踊るの?」


「カイト君、それじゃ小学生だよ」


「じゃあ、何するの」


「えっとー、みんなの代表が歌を歌ったり、とかかな」


 ▽


 午後は自然の家の職員さんから野性動物の足跡の見分け方や、食べられる木の実と食べてはいけない物の区別。

 アウトドア教室に興奮したのは俺だけみたいだけどね。


 少し早目の夕ご飯を食べたら、みんなは野外ステージに向かって行く、野原の中に一段高い台だけかと思いきや。

 かなり本格的なステージ、舞台の上には屋根が有り、照明や音響機器もしっかりしている。

 ステージのバックにはLEDのヴィジョンまであるんだよ。


 クラスの代表が流行りの歌や、アップテンポの曲を歌って、客席は大盛り上がり、

 席なんて最初から無くて、全員立って曲に合わせてピョンピョン跳ねたり、タオルを振り回したり。

 まるで野外フェスだね。


 学校ではみんな優等生みたいな顔をしているけど、発散する時にはしっかり暴れる様だ。

 俺達男子生徒はステージの横の一段高い場所で観覧、こう言う時は一緒に騒ぎたいけどね。


「淡路島さん」


「はい、なんでしょうか、客席に行くなんて話じゃなければ良いのですけど」


「どうして俺の考えている事が分かるの?」


「分かるも何も、目がキラキラしていますよ、お祭り騒ぎが好きなのでしょうけど、警護の責任が持てません」


 歌は終わってラップバトルが始まった。


「淡路島さんも、高校の時にはこんなに騒いだんだ」


「高校と言うか、確か文部科学省の通達で年間数日以上の野外活動が義務付けられていたはずですよ、これも教育の一環と思ってください。

 夏休みの間、色々な学校がここを利用しますけど、やっぱりシンフォニアが最初なんですね」


 確かに、街の中だけで生活は事足りるから、野外がどんなところか知る必要があるけど。

「野外フェスが教育なんだ」


「わたしは日王市じゃなくて、別の街の出身ですけど、おおむね同じ様な事をしていましたよ、こういう企画は……

 ……あっ、ラップバトルが終わりましたね、前座はここまででしょう」


「これで前座なの?」


「プログラムを見てください、POPキャロットですよ」


「POPキャロットってプロじゃないの」


 三人組アイドルグループ、普通にテレビに出て来るプロだよ、それがこんな原野の真ん中で高校生の為だけに来るの?

 新川あらかわカイトの頃は学園祭に、やっと名前が出始めたお笑い芸人を呼ぶだけで、大騒ぎだったのに。



 ステージの照明が真っ暗になったかと思ったら、いつの間にかダンサーのお姉さん達が一列に並んでいた。

 身体の底から響くビートにあわせキレキレのダンスを踊りだす。


 信じられないくらい激しく腰を動かすダンサーさん、ステージの上を滑る様な動きで移動、これだけでも充分見応えがるのだけど。

 POPキャロットの三人がステージに出て来ると、盛り上がりが全然違う。

 凄いのは三人組アイドル、高校のイベントだからと言って手を抜いていない。

 プロの本気に熱気は最高潮。


 俺も男性専用席で立ちあがってタオルを振りまわしていたよ。

 他の男子生徒は冷めた顔して椅子に座っているだけ、お祭りだから騒ごうよ。



 退屈な宿泊合宿では高校生は飽いてしまうので野外フェスです。

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