89.売れっ子はダメですけど
前の世界のバラエティ番組では、鉄道と自衛隊が鉄板だった、必ず数字はとれるし、自衛隊や鉄道会社はCMにもなるので協力的、そして取材費が安い。
こちらでは警察がその立ち位置なのだろうか。
朝6時前から始まった収録は4時過ぎに終わった、帰りのタクシーではみんなおとなしい。
小さな大人の璃音ちゃんはウトウトし始めたので、俺の膝を貸してあげたよ。
疲れと眠気とそしてほんのり漂う幼い香りに、俺は元気になってきた。
疲れた時に硬くなるのは生理的に正しい反応だそうだよ。
そんな股間を見て、璃音ちゃんの事務所の社長は俺に言う。
「カイト様、璃音は明日も仕事が入っているのでお貸し出来ませんが、別の子を準備してあります。
みんな素直な子ですよ、いかがですか」
社長さん、服の上からでも分かる俺の本能を見て璃音ちゃんが食べられてしまうのでは心配しているのだろう。
マネージャーの万世橋さんが援護射撃。
「カイト様、久が原社長は心配しているのですよ。
璃音さんは抱っこキスで“カイト様の隣”と言うポジションを手に入れました、小学生と言う事もあって、視聴者も好意的です。
ですが身体の関係になると、可愛らしい女の子が醜い女になって、アンチが一気に増えます」
「万世橋さん、説明ありがとうございます。
わたくし共の様な弱小プロダクションにとっては璃音の様な当たりクジを引く事は滅多にないのですよ。
これからも大切に育てたいので、どうかご理解を」
アクシデントからとはいえ、人気者になった璃音ちゃんを俺に差し出すのは問題だろうから、別の子で満足してもらおう、と言う意味だね、芸能界の闇にももう慣れた。
「璃音ちゃんは、人気者ですからね」
「ええ、今だから言えますが、璃音がブレイクするとは思っていませんでした。
可愛らしい顔ですけど、うちの事務所では普通ですし、演技やダンスも平均レベルでした」
「なんか意外ですね」
「ええ、秀でた者から順番に人気者になって行く世界ならもっと楽だったかもしれませんんね、本日準備した娘達は……」
▽
流れるように高級ホテルのレストランの個室に案内されると二人の女の子が待っていた。
「カイト様、初めまして、わたし初台音愛南と言います」
全身から醸し出す雰囲気は小学生だけど、顔が完成された美人で、幼い感じがしない子だよ。
「桜台音琉子と言います、お呼ばれれされて嬉しいです」
もう一人の女の子、音琉子ちゃんも同じく完成形の女の子だよ、スラリと高い身長だけど、胸やお尻はまだ発展途上。
二人とも芸能事務所に所属しているだけあって、ニッコリスマイルが板についている、警察の皆さんのガチガチ演技を見て来た後だけに、プロの演技には魅せられるよ。
「初めまして、何年生なのかな?」
「わたし達5年生ですよ」
「へぇー、凄いね大人っぽい雰囲気だね、小学生には見えないよ」
俺としては褒めてあげたつもりだったのだが、地雷を踏んでしまった様だ。
ピカピカスマイルが一気に曇り空になった二人の女の子。
「…… わたし達の様な、旬の過ぎた者で申し訳ございません」
「ちょっと、君達はまだ小5でしょ、これからが旬だって」
「わたし達の事務所、久が原台キッズアカデミーって言うんですけどね、子役専門の芸能事務所なんですよ。
これだけ背が伸びると書類審査で弾かれてしまいますよ」
音愛南ちゃんが子役事務所の闇を吐く。
「わたしも、去年一年で15センチも背が伸びたのですよ、書類審査すら出してもらえないのですよ」
音琉子ちゃん、そんなに大きいか、150センチくらいだと思うのだけど。
「あー、応募条件で150以下とか、145以下とかありますね、身長切りですよ。
演技を見てから切られるのなら、まだ納得がいくのですけど」
「オーディションに受かってから身長が一気に伸びて、役を取り消された子もいましたよ」
「噂ですけど、身長が伸びるのが嫌で食事を摂らなくなった子役がいるそうですよ」
「太くなるのが嫌で運動をし過ぎたりしたって噂も月一で聞きますね」
「ああ、あの子ね、疲労骨折だったけ……」
二人の高身長、大人っぽさに対する不満はとどまる事をしらない。
子役の闇をこれでもかと聞かされた、初めて頂いた芸能人穂乃歌ちゃんも小学校で大ブレイクしたけど、中学に入る頃には見向きもされなくなったと言っていたよね。
初潮が来たばかりの子が最高と言う考え、大人との中間の中学生が人気が無いのだろうか、ちょっと訊いてみよう。
「だけど二人とも美人さんだよね、大人の俳優として売り出せば?」
難しい顔をした音琉子ちゃん、
「難しいですね、背が伸びたけど、身体はまだアレですから」
「中途半端な存在なんですよ、わたし達は」
「高校くらいまで、息を潜めていて、大人の身体になったら再デビューを狙う人もいますけど、ほとんどがそのまま消えてしまうそうですよ……」
「二人とも、そろそろ部屋に行く?」
俺の言葉に途端に無口になった女の子達。
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背は伸びたけど大人になりきれない二人の子を“女”にしてあげた俺。
ヴィオラ学校で稚草ちゃんや草那ちゃんとシタ時は勢いに身体を任せた結果だった、後から凄い罪悪感に包まれたよ。
こちらの世界に馴染んで来たと思った俺だけど、まだ常識と性欲のはざ間で揺れている部分が有る。
今夜の二人は小5とは言え、大人っぽいので、罪悪感無く楽しめたよ。
年齢で人気に左右されるのではなく、子供っぽい外見の子が人気者になれる、子役の世界です。




