85 .ブスにも優しい
◆ 三田 由宇理 ◆
起きている人の方がはるかに少ない深夜の時間帯。
ヴィオラ学校の地下にあるモニタールーム、苦虫を噛み潰した顔がデフォルト官僚だが、珍しく笑みが溢れている。
「……さすがですね、明神坂さん、良い娘を宛がってくれましたね」
「いやいや、三田さんの演技もすごかったですよ、あえて否定的な意見を言って、相手をその気にさせるとは、男性の心理などお手の物ですね、さすがは内務省だけあります」
「彼は素直な子ですからね、動かしやすいですよ」
「そうそう、稚草は一週間休ませます、あの身体に激しい動きは負担だったでしょうし、着床している可能性もありますし」
「着床となれば嬉しい限りですけどね、厚生労働省と調整を致しましたので、ヴィオラ学校の生徒の出産は全て代理母となります。
カイト様は妊娠させる事に否定的な考えを持っておりますゆえ」
「心遣いありがとうございます、稚草は小柄なので出産に耐えられるか心配だったのです。
それで産まれた子供達はどうなるでしょうか」
「まだ身体が出来ていない歳ですので、そう簡単には妊娠はしないと思いますが。
産まれた子達は、下級官吏の養女とします、最初はまとめて育てる方法を考えていたのですけど、遺伝的に近い者を集めると、自分達の出自に気がつくかもしれませんので。
ただ懸念があって、カイト様は日に5,6回も射精をするのです、完全復活されたら、公務員不足になってしまいます」
二人の公務員は笑いあうが、目が全然笑っていない、乾いた笑いです。
このプロジェクトの最大のキモ、カイト様の子種から産まれた者達を団結させない。
優秀な母体から産まれた者達は必ず頭角を表すであろう、それはそれで構わないのだが。
自身の出自を知り、異母姉妹の存在に気がつくと、グループやファミリーと呼ばれる様な集団を形成するであろう。
海外ではそんな遺伝子集団が幅を効かせている、それだけは避けなければならない。
「三田さん、今現在も2期生と3期生が待機しておりますけど、そんな元気な殿方では二日で食べ尽くしてしまいますね」
「小柄な子では週に一回が限度でしょう、ヴィオラ学校の生徒は多ければ多いほど良いですね」
「養成所では4期生達が順調に育っています。
ただ、期が進むと娘達のレベルが下がってきまして、稚草レベルは望むべくもないです。
三田さん、カイト様は外見にこだわりが無いと言うのは本当でしょうか?」
「ええ、これまで交接した女性を見ると驚かれますよ、ブサイク娘にも子種を授ける貴重な殿方ですからね。
ブス顔女子中学生に子種を授けたと言う報告を聞いた時は驚いたものですよ、他に美形が大勢いるのに、わざわざ指名したそうです」
「その言葉を聞いて安心しました、現在養成中の中には外見にそれ程恵まれなかった者もおりますゆえ」
「むしろ、そう言う娘を可愛がりますよ、カイト様はそう言う殿方です」
◆ 草那 ◆
わたしは孤児院育ちです、もっとも自分が孤児だと分かったのは小学校に入ってからなんですけどね。
施設にいる時は名前で呼ばれていました、下の名前ですよ、職員の先生達は姓って言う上の名前があるの、何で二つ名前があるのかな? って思っていたけど。
小学校に入る時に孤児の子達は椀耶って言う性を貰うの、仮り姓っていうんだけどね。
学校ではあいうえお順の名簿で呼ばれるのですけど、わたし達孤児が最後になる仕組みです。
一年生の頃は意味が分からなかったけど、四年生の今になれば孤児は差別されているのね、って感じます。
差別はされていたけど、イジメられていた訳じゃありませんよ、クラスメート達は普通に接してくれました。
そりゃ、誕生日とかで家にお呼ばれが無かったり、施設の子達は可哀そうだから、順番を変えてあげましょうね、とか言われましたけどね。
施設にいる子は10歳になると出て行かないといけないの。
お姉さん達は3月か9月になると、突然いなくなってしまうのよ、学校から帰って来ると、お部屋が変わっていたり、食堂の席順が詰められていたりするの。
だけど、その事は訊いてはいけない、そんな雰囲気が施設を覆っているから、わたし達は何事も無かった様に過ごしているの。
いなくなったお姉さん達はメロディ学園と言う場所に行くのよ、メイドさんになる為の学校だけど、施設の先生は、
“あなたは優秀だから、メロディ学園から大学に行けますよ”
って言ってくれるけど、大学ってお金が掛かるんじゃないのかな。
今日はわたしの誕生日、施設のみんなが祝ってくれます、普段食べる事の無い甘いケーキをたくさん切り分けてくれました。
わたしも9月のある日突然いなくなるのでしょうね、そうやってお姉さん達を見送ってきたし、妹達ももうすぐわたしがいなくなるのを分かっていますね。
▽
美味しいご馳走をお腹いっぱい食べて、みんなで笑って楽しく過ごした夜、深夜に職員さんがわたしを起こします、こんな時間に起きた事はありません。
「草那ちゃん、お呼ばれが来ましたよ」
職員さんは何を言っているのでしょう、寝ぼけまなこで車に乗せられたけど、途中で眠ってしまったの。
わたしが連れて来られたのは“養成所”と言う場所、清潔だけど何の飾りも無い個室がわたしの部屋。
食事は食堂に行くの、わたしと同じくらいの子達が数人いるけど、会話は一切禁止されているから、お互いの名前も知らないの。
なによりも辛いのが授業、時間になると教室に言って、今まで通り学校の授業も受けるのだけど、特別授業もあるの。
「皆さんスタリオン学園は知っていますね、あなた達は殿方のオモチャになる事が決まりました。
どんなに痛い事があっても我慢してご奉仕をするのですよ」
授業ではご奉仕の仕方を教えてもらいますが、いつも最後にビデオを見せられます。
逃げる女の人を追いかける男の人、狭い部屋だから簡単に捕まえれるのに、男の人はニヤニヤ笑いながらわざと、ゆっくりと追いつめます。
最後は捕まって服を破らます、ワンワン声をあげて抵抗していますが、男の人はフンッフンッ鼻息を鳴らして最後の一枚を破ります。
そこからが長いのです、女の人の色々な部分を摘んだり、噛んだり、痛くして、その度に悲鳴をあげて、そして……




