81.抱っこタイム
前日大騒ぎを起こした生徒と一緒の教室になると、微妙緊張感が漂います。
抱っこキス事件の翌日、俺はスパイ映画の様に登校して行く。
「おはよー」
「おはよう、カイト君」
「おはよ……」
いつもならすぐに寄って来てどうでも良い雑談をする同級生達だが、今朝は遠くから見ているだけで。
嫌っているわけではない、どうやって話しかければ良いか分からないだけだろう。
そんな時、少し遅れてやって来た野バラちゃん。
「カイト、おはっよー、今朝さぁ、コンビニに寄って、スポーツ新聞買っちゃたー
“強引JS、 浴びせ倒しChu! カイト君涙目”
見出しが笑えるだろう、さすがは朱鷺スポだよな」
新聞が折られた状態で見ると、小学生が俺を押し倒したかの様な見出し。
前の世界でもスポーツ新聞はコンビニの早朝売れ筋だったよね。
野バラちゃんが呼び水になって俺の周りに同級生達が集まって来た。
「カイト君、昨日のクジテレビは凄かったよ」
「ねぇ、あれは仕込みだってネットで見たけどホントなの?」
「えー、抱っこはカイト君のアドリブでしょ、だけど小学生に負けるなんておかしよね、わざとでしょ」
「昨日はネットで大騒ぎだったわよ、ねぇ、真相を教えて」
ズイッと顔を寄せて来る、レンゲちゃん、顔が近いって。
俺は同級生達に説明をする。
「……真相も何も、ご褒美マッチで手を抜いたら尻もちをついてしまって、想像以上の騒ぎになったので、おさめようと思い、小学生をお姫様抱っこしてあげたんだよ」
「プロデューサーの指示じゃないのね」
アンズちゃんが食い気味に言う。
「その場のアドリブだよ、女の子が可哀そうでさ」
「それじゃキスは!」
春菊ちゃん、息がかかる距離だよ。
「つい流れでホッペにキスしちゃっただけなんだよ」
もしかしてつい流れで小学生にキスは“ドン引き”案件だったのかな。
「まぁ、カイトも健全男子高校生だった訳だ」
野バラちゃんが上手にまとめようとするけど、小学生にキスする高校生は不健全では?
その事をみんなに言うと、
“何言っているのコイツ”
みたいな顔になった同級生達。
「小学生でしょ、可愛がって貰えて当然よ」
「あーあ、わたしも小五の時にカイト君に会いたかった」
今一つ理解出来ていない顔の俺を見て、しっかり者のヒナゲシちゃんが言う。
「カイト君、女の子は初潮が来たばかりの子が一番なんだよ」
「ロリコンは逮捕案件でしょ」
「何でなの、10歳の子はこれから20年以上にわたって子供を産む能力があるんだよ。
実際にはそんな大勢の子は産めないけどね」
そう言えばマネージャーの万世橋さんも特に否定的な事は言っていなかったよ。
前の世界に良く似ているけど、やはり別世界、性道徳も違うのだろうか。
▽▽
朝の大騒ぎも授業が始まると“抱っこキス”の優先順位は急降下、定常波とサイン曲線が頭を占領する。
脳漿を搾る勉強の後は桜ちゃん先生とお昼ご飯、食事も美味しいけど、雰囲気を作るのが上手なロリ先生、知的な会話を楽しむ。
「それじゃ、先生は職員室に帰りますからね」
「エーッ、体育の授業をしようよぉ~」
「カイト君は保体だけなら院生課程後期レベルですよ、今日は可愛いメイドさんが来ましたから、可愛がってあげてください」
童顔先生と入れ替わりに入って来たのは稚草ちゃんだった。
「カイト様、ご奉仕に来ました、わたしで好きな様に遊んでください」
色々問題のある言葉を平然と言い放つ10歳児。
「稚草ちゃんと遊びたいけど、昼休みだからあんまり時間がないんだよ」
「えっと、それだったらマッサージはいかがですか? わたしは身体が小さいからお姉さんみたいなマッサージは出来ないけど、手の平マッサージならできますよ」
「へぇ~、それじゃお願いしようかな」
「はい!」
初夏の太陽みたいな笑顔になった小柄な女の子。
俺の手の平をけなげにマッサージ、稚草ちゃんの赤ちゃんみたいな小さな手が頑張ってくれる。
マッサージよりも気持が良いのが、稚草ちゃんの鼻息、スースーと手首に当たる幼い呼吸がくすぐったい。
これは本人に言うと顔を離してしまうから黙っていよう。
プニプニの細い指が俺を押さえたり、擦ったり、撫でたり、この子なりに頑張っているらしく鼻の頭に汗まで浮かべている。
メイド服っぽい服を着ているけど、サイズがあっていないのでブカブカ、見下ろすと、生意気の先端が覗ける。
学校では予鈴と本鈴のベルが鳴るけど、男性棟にはそんな無粋な音は響かず、予鈴では部屋の照明が2回点滅して、本鈴は3回点滅する。
真面目な小市民の俺は2回の点滅で教室に向かうのだけど、今日はゆっくりしていたい。
不安そうな顔をした稚草ちゃんが俺を見上げている。
「大丈夫だよ」
「だけど…」
「稚草ちゃんのマッサージが気持ち良いから、午後の授業は行かない」
まだ真面目な10歳だから授業には出ないといけないと言う気持ちがあるのだろう、俺の言葉にどうやって返そうか迷っている。
「マッサージはもう疲れたかな?」
「へぃ、平気です」
「抱っこしてあげるね」
小柄な子を両手で軽々と抱え上げ、膝の上に乗せる。
ほんのりと高い体温と子供特有の香り。
「あの、カイト様…」
蜂蜜色の髪を優しく撫でて上げると、得も言われぬ多幸感に包まれる。
これだけ密着してもエッチをしようと言う気は起きない、これは小さい子を保護してあげようと言う、生き物の本能だよ。
つる草はギッチリと絡みついた。
初潮が始まったばかりの小学生が最高と言う価値観です。




