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8.初登校、イジメはやめてね

 新編です、ほとんどが女子生徒の学校に入学です。



 大胸筋と三角筋が固くなってきた頃、高校入学の日がやって来た。

 上着とパンツはあるけど、ワイシャツの下に着る白シャツが見当たらない。


「おーい、葵咲あおい、白シャツってどこにあるんだー」


“ヴァァァー”

 リビングにいた葵咲あおいは今まで聞いた事の無い悲鳴の様な抗議の様な声をあげる。


「お兄ちゃん、なんて格好しているの!」


「いや、白シャツが見当たらないから探しているんだよ、ワイシャツの下は何か着るんだよ」


「ブラよ!ブラよ!ブラ!」

 興奮してすっかり語彙力が下がった妹、前の世界でも男性用のブラがあったよね。


「だから、そのブラはどこだよぉ?」


「いいから部屋に戻りなさい!」


 全力で背中を押されて自室に押し込まれた。

 逆の立場で考えると、JKの姉が上半身裸で家の中を歩きまわっていたら、思春期の弟はパニックになるよね。


「お兄ちゃん、これ」

 腕一本分だけドアが開きブラを渡してくれる。


「ありがとうね、葵咲あおい

 いつもならデレる妹だけど今回はバタンッと勢いよく締められた、男の乳首は性的なんだ。


 ▽


 制服は上着まで着ても身体のラインが分かる程サイズがピッタリだ。


葵咲あおい、今度はちゃんと制服着たからリビングに行ってもいいかー」


「どうぞ、お兄ちゃん、着こなしはわたしがチェックするね」


 妹の葵咲あおいがまるでお姉さんになった様に言って来るが、俺の制服姿を見た瞬間。

“ホヨォォ”と間抜けな声を出して、顔を真っ赤なにする。


「まぁ、とりあえず合格をあげましょう……ってお兄ちゃん、ソックスは!」


「いや色が分からないんだよ、白か黒か」


「黒よ、とりあえずソファに座りなさい」

 俺を座らせた妹はひざまずいてソックスを履かせようとする。


「いいよ、自分でやるから」


「こう言う事は女に任せるのが一番よ」


 強引な理屈で俺の足にソックスを履かせてくれる妹、ツヤツヤの小さな頭が俺の足元で前後に動き、俺の足と格闘している女の子の鼻息が足首に当る。

 朝と言う事もあり、もう一本の足はテントの支柱の様に力強く立ち上がる。


「はい、キレイにソックスが履けました」

 顔を上げた葵咲あおいの目に前に元気なテントが張られていた。


 目をまん丸にして、数秒間テントを見ていたが、我に返って。

「お兄ちゃんのバカーッ」


 今朝の葵咲あおいは賑やかだよ。


 ▽


 制服と言うか着替えでは大騒ぎだったけど、その後はしっかり者の妹に戻った葵咲あおい

 自身もセーラー服に着替え、その上からエプロンをして朝ご飯を準備してくれる。


「そうそうお兄ちゃんのスマホが届いたよ、契約は済ませてあるからね」


「やっぱりスマホがあるんだね」


「トーゼンでしょ、それ持っていないと外に出られないからね」


 前の世界に有った板状の物ではなく、握るとスッポリ手に収まる使い勝手の良いデヴァイス、人間工学が進んだ世界だね。


 ▽


「お兄ちゃん、シンフォニア高校なんて行った事無いでしょ、わたしが案内するね」


 ドヤ顔になった妹に先導されて学校まで、歩いて15分くらいの距離だった、マンションの周りは落ちついた高級住宅街、歩道も広いし、車も殆ど走っていない。


 学校の近くまで来ると街並みは新川あらかわカイトの世界とほぼ同じ、同じ新入生だろうか、今一つ身体に馴染まない制服に着られた女子高生達を目にする。

 そして主な四つ角にはジャージを着たお姉さんが立っていて、挨拶をしている。


「おはようございまーす」


「お姉さんもおはよう」


 挨拶を返しただけで物凄く喜んでくれたよ、学校関係者? それとも地域の人達かな。


 入学式では女子が折り畳み椅子なのに俺だけゆったりソファで当惑したけど、それ以外は滞りなく進みHRに。


 30人の生徒を束ねるのは霜月しもつき梅子と言う30手前くらいの女性、タイトスカートを鎧の様に着こなし生徒に舐められない様にと厳しい先生役を演じている。


「……そう言う訳でここは国立の一般高校だ、勉強は出来て当たり前、それ以上を求められると思って行動して欲しい。

 さて、副担任で男性担当担任を紹介しよう、卯月うづきリンドウ先生だ」


 梅子先生の肩よりも低い小柄な女性、顔も童顔で中学生くらいにしか見えない。

 入学式の日だと言うのにビスチェっぽいワンピース。

“お願いします”


 お辞儀をするとクッキリと谷間が見える。


「さてこれから自己紹介だ、出席番号一番から」


「はい!わたしは淡月あわつきナデシコ、2区中では吹部でした」


稲荷月いなりつきレンゲです、部活じゃないけど自転車のチームに入っています」


「4区中出身、香月こうづきヒナゲシです、部活はテニス部でしたけど、高校ではどうするか、まだ迷っています」


   ……


   ……


   ……


「それでは最後に荒川カイト」


「はい、荒川カイトです、スポーツ全般が好きです」


「荒川君に質問があります!」

 元気の良い声が上がる。


「はいどうぞ」


「荒川君は部活に入る予定は有りますか?」


「えっとー、今のところ未定かな」

 そこからは質問タイム。


「ネコ派ですか、イヌ派ですか」


「目玉焼きはソースですか、醤油ですか」


「夏と冬どっちが好きですか?」


 どうでも良い質問にも丁寧に答えていくけど、紅茶とコーヒーのどっちが好き?

 コーヒーと答えたら“キャー”と声が上がったけど、何故だ?


「荒川君のマイブームとかはありますか?」


「最近は筋トレかな」


「やっぱりスポーツを考えてですか?」


「スポーツと言うか、男として女の子を抱っこくらい出来ないと」


 コーヒーの時とは比べ物にならない黄色い声が教室の窓を震わせる。


「種なしブドウのくせに」


 一人の生徒の言葉で、嬌声は一瞬で静まる。


「自己紹介は終わりだ、後は個別HR、荒川は卯月うづき先生に付いて行くように」

 悪くなった空気を遮る様に梅子先生が仕切る。




「さぁ、荒川君、男性棟に行きますよ」


 俺の机の横にやって来た卯月うづきリンドウ先生、座っている俺と頭の高さがそんなに変わらないぞ。



 種なしブドウは今後の展開に大きくかかわってきます。

 言うまでもないですが、無精子症のメタファーですよ。

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