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貞操逆転世界で好き放題  作者: miguel92
芸能編

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76/124

76.ウィスキーはお好き? ◆ 三田 由宇理 ◆

 未成年者の飲酒の場面があります。

 迷ったところですが、現代日本の警察の権力が及ばない別の世界と言う事で。




 帝都中央病院の地下、特別病室の横に有る監視室で録画を再生中、感情を殺した公務員達が氷の目で画面を見つめています。


 並んだ数個のモニター、応接セットをあらゆる角度から映しています。

 画面の中には10代の男性と、見目の良い女性が向かいあい、綴じられた紙を差し出している。


[……こちらがシンフォニア高校のパンフレットでございます、大勢の女子生徒がサトシ様をお待ちですよ]


[うるせー、ババア! どうして俺が種なしなんだよ、シンフォニアなんかに行けるか、早くスタリオンに戻せ]


 そう言うと、パンフレットやカップ、手元にある物を投げつけ、投げる物が無くなると、女性に向かって殴りかかる、警護員が駆け付けるまでの間、数回女性を殴り付けた。


「三田さん、以上がサトシ様の録画でございます、彼女は5人目ですが、顔面を殴打され全治3カ月の怪我を負いました」


「診断書はもらってあるな」


「はい、必要ならドクターの証言も得られます」


「年齢、容姿、雰囲気の違う5人の担当官がシンフォニア高校への転入を勧めたが、全員が暴力を受けた。

 これで間違いないな」


「はい、仰る通りです」


 まったく種なしなんてシンフォニア高校でデート相手をするくらいしか存在価値が無いと言うのに。

 一旦スタリオン学園に入り、女性に対する暴力を当然と言う男性至上主義を刷り込まれワガママ放題になる。


 最初から種なし判定を受けていればもう少しは変わったかもしれない、誤判定の犠牲者とも言えるが、もはや彼に利用価値は無いだろう。


「彼には少し休んでもらうか」


「わかりました、すぐに手配いたします」


「いや、わたしが行こう」

 上司と言うのは椅子に座って威張っているだけではない、誰もが嫌がる仕事を進んでやるのも上司の役割。


 ▽


 一本が三桁万円する高級ウィスキーとショットグラスを持って部屋に入る。

 ソファでふんぞり返っている15歳の少年。

「なんだババア、俺はシンフォニアなんかに行かねえぇからな」


「わたくし、サトシ様に贈り物を持って来たのです」

 そう言いながら、褐色の液体の入ったボトルを置くと、ゴトリッと重い音が短く響きます。


「なんだそれは?」


「お酒ですよ、サトシ様はスタリオン学園に戻る事になりました、長い事引き留めてしまって申し訳ございませんでした。

 これはささやかですがお詫びの印です」

 そう言いながら、ボトルを開け、ショットグラスに注ぐとオークの香りが部屋に立ちこめます。


「なんか臭くないか?」


「これがお酒の香りですよ、大人の香りです、ちょと苦いですけど、大人なら飲めるでしょう……」

 おだて透かしながらウィスキーを勧めるわたし、そんなわたしの意を汲んだのか、グラスを一気に空にした種なし。


 苦さに顔をしかめますが、下半身から力が抜けていくのが分かります、踏ん張りの効かなくなった身体はカーペットに滑り落ち見苦しい音を立てます。


 筋肉を弛緩させるお薬をショットグラスの底に塗っておきましたが、

 効果てきめん …… とは言い難いですね、倒れながらも恨めしそうにこちらを見ています。

 仕方ありませんね。


「さぁ、もう一口どうぞ」

 ウィスキーボトルを直接口に当て、最高級のアルコールを流し込みます、普通なら吐き出すところですが、筋肉の機能が落ちているので、それも出来ない様ですね。

“ガッポッ ガッポッ”と見苦しい音を立てて“溺死”していく男性。


 死亡するまではもう少し時間がかかるでしょう、筋肉が弛緩したので身体中の穴から色々な物が流れ出て部屋に異様な臭いが満ちていきます、ちょっと消臭しておきますか。

 高級ウィスキーを体にかけますが、オークの香りにアンモニア臭が混ざって最悪な臭いになってしまいました。


 わたしは臭い部屋でソファに座って思索にふけります、種なしの男性を送ってあげたのはこれで何人目なのでしょう。

 男性居住区からシンフォニア高校に送られて来る男子、勃起不全の子達は性格的にも穏やかな子が多いのでそれ程問題はありません。


 問題を起こすのは勃起能力の有る種なし、女性に対して攻撃的な態度を取る彼らを説得し、今後の身の振りを教えますが、それでもダメな子達には美味しい飲み物で歓待してあげます。

 普段飲んでいる清涼飲料では味の違いに気がつくかもしれないので、口にする機会の無いアルコール飲料で送り出してあげるのが一般的ですね。


“おっ、もう時間ですね”

 わたしは医官を呼びます。


 入って来たのは体格の良い女性、胸のマークは軍医を表していますね。


「医官の栃の木です」


「御苦労さんです、ちょっと彼の様子を見てください」


「かしこまりました」

 そう言うとラッテクスのグローブを手馴れた動作ではめていく軍医。

 心拍を確認しペンライトで瞳孔を照らした後、わたしに向かって言います。


「こちらの男性は死亡しております」


「そうですか、死因は何だと思いますか?」

 わたしはウィスキーボトルのラベル面を軍医に向けます。


「客観的な基準に照らし合わせ、急性アルコール中毒ではないかと思います」

 この軍医は話が早いわね。


「そうですか、検死は必要ですか?」

 これは検死をするなと言う意味です。


「必要ないかと思われます」


「そうですか、死亡診断書をお願いしますね」

 そう言ってわたしは部屋を後にします。




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