73.赤ちゃん出来ちゃう
本物のSPが出てきます。
火山が噴火しなくて、不完全燃焼でも明日は必ずやって来る、何となく重みを感じる下腹部と一緒に起き上がり、学校に行くためのいつものルーティンをこなす。
いつもの様にマンションのエレベーターを降りると、副担任の桜ちゃん先生と警護員の淡路島さんが待っていた。
「あれ、どうしたの、桜ちゃん」
「カイト君、こちら本庁からやって来た奥尻さんです、警護の専門家だそうですよ、凄いですねぇー」
「始めまして、本庁警備部から派遣されました奥尻と申します」
ピッチリとしたピンストライプのスーツを着こなして、俺に愛想よくスマイルを送るけど、目が全然笑っていない、猛禽類の目をしているよ。
苛酷な生存競争を生き抜いた者が放つ鋭い眼光に押された俺は味方を探す。
「淡路島さん、どうして本庁の人が来ているの?」
「カイト様、これは以前から計画されていた事ですが、周囲の動きがあまりにも早く前倒しになった警護プランです。
車を用意してありますので詳しくは、その中でお話し致します」
車両エントランスには個性の無いデザインのタクシーが停まっいた。
あれ? 近くで見るとデリバリーの車みたいだよ。
宅配荷物の配送車の周りにはサングラスをかけた、いかにもSPと言った感じの女性が二人、威圧する様に周りを見ている。
この二人のスーツはダボッとしているし、ボタンも止めていない、これは上着の中に隠し持ったものをいつでも取り出せると言う意味、奥尻と言う人が偉い人で、この二人が兵隊なんだね。
そうそう、二人の名前は利尻さんと礼文さんだって。
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デリバリー車の中は豪華なソファの応接室、外見とのギャップが凄い。
奥尻さんは本庁の警備部の警護課と言う組織から派遣されて来たそうだよ、分かり易く言うとSP、警護の専門家。
淡路島さんも同じ警備部の所属なんだけど、警護の能力よりも外見が重視される、男性警護課に所属。
男性警護課と警護課が並ぶと、外見重視が一目瞭然だよ。
後で知ったのだけど、奥尻さんはキャリア出身、本来は現場に出る人ではなそうだよ、階級は警視って言っていたけど、どれくらい偉いかよく分かりませーん。
そんなキャリアの奥尻さんに訊く。
「……それで、どうして本職の警護の方が来たのですか」
「今日はカイト様が掲載された雑誌が一斉に発売される日です、既に売り切れが続出しております」
「ちょっと待って、まだ朝の8時だよね、本屋さんは二十四時間営業なの?」
「本はコンビニでも売っておりますので」
そうだった、ベテランコンビニバイトの俺が失念していた、コラボキャンペーンでは、キャンペーン開始の数分前になると、目をギラギラさせたお客が入店してきて、常連客を押しのけ、コラボ商品を買い漁っていたものだ。
「確かに、コンビニでも本は売っているかもしれないけど、俺が日王市に住んでいると言う事は掲載されていないはずだよ」
「ネットであっという間に知れ渡りますよ」
「あれ? 男性の情報は制限されていると聞いたことがあるよ、情報統制が上手く出来ていないの」
隣に座っていた淡路島さんが俺にスマホ画面を見せて来た。
「カイト様、こちら詩の愛好家が集まるサイトです、縦に読んでみてください」
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月光にいざなわれ、野に降りたてども。
君の事が忘れられず、苦しむ
日々。
王ですら逆らう事は出来ない苦悶。
住まう宿を失い、彷徨う我。
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「月、君、日、王、住」
「月の君とはカイト様の暗喩として広がっております。
心配されるいけないので黙っておりましたが、かなり早い段階から個人情報が流れております」
「露骨に個人情報を流せば規制対象ですけど、詩や俳句、狂歌、ソネット、五言絶句は規制出来ませんし」
キャリアの奥尻さんが言葉をつなぐ。
「本日始発便より日王駅に市外在住者が下車しております、その数は10名に満たないですが、男性居住マンションやシンフォニア高校周辺を遊弋しております」
「逮捕するの?」
「何もしていない無辜の市民を逮捕や拘束は出来ません、遠くから監視をするだけですよ、移動の自由を制限して、うるさく騒がれてはゴメンですから」
「俺はこれからどうなるの?」
「警護の事を考えれば日王市は理想的ですが、カイト様はメディアへの露出も控えているので帝都に移動して頂きます、こう言う時の為にもう一つのチューブ駅がありますので、時間までそこで待機して頂く事になりますが、よろしいですね」
よろしいですね、なんて言われても、こちらには選択の余地が無いのだ、強大な国家権力に唯唯諾諾と従うのみ。
都市間交通システムチューブ、帝都やモールに行く時にはお世話になっているけど、貨物輸送も担っている、通勤ピークを外した時間帯にまったく違うダイヤで運行しているそうだよ。
▽
日王市の某所に無人車が止まり、警察関係の人達がみんな降りて行ってしまい、桜ちゃん先生と二人車内に残される。
「桜ちゃん先生は知っていたの?」
フルフルと小さい顔を左右に振るロリ先生。
「まったく知りませんよ、今朝いきなり起こされてビックリしていたのですよ~」
リンちゃん先生よりも少し面長な感じだけど、絶対歳上には見えないロリ顔、いきなり起こされたと言っている割には胸元が開いた服をしっかり着こなしているよ。
女性特有のフンワリと甘い香り、ケダモノの欲求と保護の欲求と言う相反する気持ちが湧きあがり、気がつけば細い腰を掴んでいた。
「……抱っこしてあげるね」
「ちょっと、カイト君、ダメです、赤ちゃん出来ちゃう!」
オスを興奮させる言葉をわざわざ言うなんて、ロリ先生は俺を誘っているの?
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身体の奥から湧いて来た衝動に突き動かされ、低身長ロリ顔にのしかかってしまった。
目じりに涙を浮かべ鼻の頭を赤くしている童顔先生。
絶頂感とかそう快感は無く、後味の悪い感じで行為が終わった、赤ちゃんが出来たらダメだけど、出していないから大丈夫だよね。
女体を見れば興奮するし、大事な場所はしっかり硬くなる、唯一最後まで行く事が出来ないだけ。
男子高校生には拷問でしかない。
出ないと分かっていてもロリ巨乳を前にすると性欲のタガが外れる男子高生です。