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70.セミ男子 ◆ 日本橋 歌奈歌 ◆

 今回も芸能事務所社長目線の話です。



 月曜の朝、全ての会社員が怨嗟の声をあげるそうですが、今日は経営者のわたしもその気分です。


 それにしてもスタリオン学園、今までは傲慢な男達がわが世の春を謳歌している場所だと思っていましたが、彼らの平均寿命を聞くと、数日で命を落すセミか何かに見えてきます。


 女性に対して攻撃的に接する彼らですが、その行為は次第にエスカレートする傾向にあり、度を超すと、攻撃衝動を抑える薬を投与して、大人しくさせ、搾精の時だけ血圧を上げる薬を投与、長生きなんて出来る訳ありませんね。


 全てのスタリオン学園生がお薬の世話になる訳ではなく、普通に歳を重ねる男性もいるそうです。

 それでいて平均年齢が35に届かないとは、若くして亡くなる人がいかに多いかを表しています。


 一回の搾精で得られる精子は億単位、もちろん全ての精子が使える訳ではありませんが、一回の受精に100個の精子を使うとしても100万個の卵子を受精させる事が出来ます。


 問題は多様性、何千万個の卵子を受精できるだけの精子が冷凍保存されていますが、殆どが未来の為の貯金の様なもの。

 とにかく自然交接をして遺伝子の多様性を増やしていかなければなりません。

 自然交接の為とは言えスタリオン学園の存在意義は疑問です。



 自然交接と言えば、我が社が抱え込んだ荒川カイト、話が来た時にはスペードのエースを引いたと小躍りしましたが、ジョーカーになってしまうかもしれません。

 日王市のシンフォニア高校では数十人の生徒がリズムの里に行ったそうですし、我が社のタレント達の間で妊娠が相次げば、荒川カイトの名前は誰でも簡単に辿り着くでしょう。


“妊娠可能な男性と契れるなら一晩にいくら払いますか?”

 四桁万円を平気で払う人が現れるでしょうね。


 荒川カイトに対して強引な引き抜きや会社ごとの買収もあるかも知れません、昨日の政府の高官の人達はその様な事はさせないと、言ってくれましたが、しっかり管理しておくようにと釘をさされてもいます。


 上手に使わないと、とんでもないとばっちりを受けるかもしれないです……



「……社長、よろしいですか?」

 いけません、とりとめのない事を考えていたら、秘書の声に気がつきませんでした。


「何かしら?」


万世橋まんせいばしさんが、面会を希望しております、いかが致しましょう」


「いいわ、会いましょう」


 ▽



「社長、荒川カイトの件でお話しがあります」


「そうなの、彼はもうすぐテレビデビューですね、通電堂の仕込みはさぞかし鮮烈でしょうね、楽しみですよ」


「実は、彼には帝都に来る毎に“話し相手”をあてがっているのですが、これからは必要ないと言われました」


「そうなの、うちの新人さんが何か粗相をしたのかしら、わたしが頭を下げないといけない状態なのかしらね」


「彼には妊娠させる能力が有るそうなのです、にわかには信じられませんが、本人の口からの言葉ですので間違いないでしょう……」


 いつかはバレる事とはいえ、どうして自分の口から話してしまうのでしょう、それにしても妊娠させる力があるのなら積極的に交わるはずなのに、これはどう言う事でしょうか。


 その辺りを万世橋まんせいばしに問いただしたところ、荒川カイトは自然妊娠にあまり良い印象を持っていない様子。

 てっきり、先の無い新人ではなく、もっと売れっ子を差し出せ、なんて言葉を覚悟していただけに、拍子抜けです。


 さらに、

“俺が責任を取らないと”

 なんて事を言っていたそうです。


「……そうなの、とにかく荒川カイト君の意見が最優先です、それから……」


 手元のスマホが鳴りました、厚労省の清瀬さんからですけど、昨日の今日で何の話でしょうか?


「ちょっと待っていて、多分関係のある話だから」


「おはようございます、日本橋です、昨日はご招待ありがとうございました……」



 社交辞令の挨拶もそこそこに要件を切り出して来た厚労省の理事官、その内容は万世橋まんせいばしの報告を更に深掘りしたものでした。



「……左様でございますか、弊社としても最大限のサポートをして行きますので、何か変化が有れば連絡を頂ければ幸いです」


「はい、分かりました、お忙しい中ありがとうございました」

 一呼吸置いてからスマホの通話を切るわたし。



万世橋まんせいばしさん、先程の電話は荒川カイトの病状です」


「はい」


「彼は積極的に女性に交わろうとするそうですし、勃起も問題無くするそうです」


「ならば一安心ですね」


「ですが、射精だけはしないそうなのです」


「それは、困った状態ですね、勃起がしないのなら薬でなんとかなりますが、その先の段階となりますと」


「おそらく心因性のものでしょう、妊娠の能力有ると分かった途端に子供を作れなくなるとは」




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