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55.送ってください



 ホテルから出ると日はとっくに暮れて、夜の闇が支配していた。

梨歌子わかこちゃんと沙耶歌さやかちゃんは、俺をマンションまで送ると言っているけど、こんな時間だ、早く家に返してあげよう。

 それに初めてシタ娘は股が痛いだろうから、あんまり無理はさせたくないし。


「……ですが、男の人を一人で返すなんて非常識です」

「そうですよ、日王市にだって悪い人はいますよ」


「大丈夫、俺には頼りになる相棒がいるんだ」

 ちょっと格好つけてしまった。


 俺の声を聞いて、絶妙なタイミングで現れた淡路島さん。

 控えめながらも頼りになるお姉さんの姿に納得した二人の芸能人はチューブの駅に降りて行った。


「さぁ、カイト様、わたし達もタクシーで帰りましょう」


「今日は歩いて帰りたいんだ、良いでしょ」


「ですが」


「だって、タクシーに乗ると、淡路島さんは入口のところにいるからお話しできないじゃないの」


「タクシーは、そう言う規則なので、まぁ、良いです、わたしも夜の散歩は好きなので」


 今日は二人を相手に頑張った、女の子のやわ肌と甘い汗と色々と生温かい物に接していたので夜風を浴びながら歩くのが爽快だ。


 道の反対側をジョギングしているお姉さんがいた。

「ねぇ、淡路島さん」


「はい、なんでしょう?」


「さっきのジョギングの人も警護員なの?」


「さぁー、どうなんでしょうねー、警護員も大勢いるので、全員の顔は覚えていないのですよ」


 あからさまなウソだね、と言う事はさっきの人は警護員か。

 その後もどうでも良い事を話していたら、あっという間にマンションに着いた。


「淡路島さん、ボクの部屋に寄っていく?」


「男性から嬉しい誘いですね、先に言っておきますけど、エッチな事は出来ませんよ」


「あー、やっぱりクビ?」


「クビよりもっと酷い目に遭います」


 ▽


『おかえりなさいませ、カイト様』

 三人のメイドさんと妹の葵咲あおいが待っていた。


「ごめんね、今日は遅くなって」


「お兄ちゃん、今日はお仕事だったのでしょ、仕方ありません、むしろ遅くまで働いているのが誇らしいですよ」


「淡路島さん、このしっかりした子が俺の妹の葵咲あおいだよ」


「しっかりだなんて、イヤ、それ程でも……」

 お世辞一つで真っ赤になる、チョロい妹。


「この人は男性警護員の淡路島さんだよ、いつも俺を守ってくれているんだ。

 今日は淡路島さんに俺の家族を紹介したかったんだよ、こちらがメイドの宇治さんと鴨川さん、それと巨椋おぐらさんだよ」



 その後は白音しらねちゃんや実紅梨みくりちゃん達を紹介、パジャマ姿で寝る直前だったようだ。


 家族を紹介して、しばらく談笑したら淡路島さんは帰っていった、エッチな事なんてしていないよ。


 その後一日で5回、昼休みにリンちゃん先生ともしたから6回シタ事を言ったら、メイドさん達に囲まれて説教だったけど、何故かみんな嬉しそうだった。


▽淡路島翠


 マル対の荒川カイト、メイドを家族として紹介するなんて。

 11区に住んでいる様な連中はメイドなんて家具の一つ程度にしか思っていないと言うのに。

 それにしても妹が気になる、似過ぎている、男性は本当の家族とは一緒に住めないはずなのに、これはどうした事だ。



 ▽▽



 金曜は一日学校を休んだ、撮影は土日だけど、CM撮影の場合は事前にどんな流れになるか俳優は説明を受けておいたほうが、現場はスムーズに進むそうだ。

 ちなみに一緒に演じるのは守山穂波と言う女優さん、もとはアイドルグループにいたそうで、グループを卒業してタレントの道を歩んでいる。


 事務所は違うけど、俺でも知っている有名人で、とにかくテンションが高く、元気印が売りなのだけど、実際に会ってみると、礼儀正しく、人の話をキッチリ聞くタイプといったところか。

 やたら元気が良いのは演技だった訳だ。


「……スモーの練習をしている子供達のところへ、カイト君が両手に袋を持って登場、みんなが駆けよって行くシーンの後は全員で並んでハンバーガーを口にする、これが30秒のAパターンです」


「あの、監督さん、7-1で子供達が駆けよっていくシーンでは、わたしの立ち位置は?」

 元気女優の守山穂波さんが尋ねる。


「えっと、ですね、このシーンは最初にカイト君にズームインした状態から上にパンして子供達を撮るから穂波さんは大丈夫ですよ」


「他に何か、質問はありませんか?」


 俺は手を挙げる。

「どうぞ、カイト君」


「俺の登場する時のセリフですけど、どれですか? 

“みんなお待たせ!”

“シコ踏んでる?”

“ちょっと休もう”

“夏でも、お腹が空いたら~?”

 四つありますけど」


「四つ全てです、従ってこのシーンは4回撮りますね。

 最終的な決定はクライアントさんです」



 それはおかしいだろう、最初にクライアントと話し合って決めれば良いじゃないか、そう言った俺を穂波さんがいさめてくれる。



「カイト君、わたし達は要求通り演技するだけなの、そこから先は別のお仕事よ」


「失礼しました、申し訳ありませんでした」


 頭を下げる俺に代理店の岡三おかさんさんが言う。

「カイト君の意見はもっともよ、もしかしたらだけど、明日はMMフーズホールディングスの偉い人が撮影に来るかもしれないの、そうしたら撮影はもっとスムーズに進むわよ」


「CMって面倒なんですね」


「ええ、企画を立てて、撮影まで一月、撮影からオンエアまで二カ月が業界の目安なの、今回は異例の早さなのよ」


「それではBパターンの説明に入りたいと思いますがよろしいでしょうか……」




 CMでもいきなり撮影に入るわけではなく、事前にしっかりと打ち合わせをしてから本番に望みます。

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