50.ベッドの上で撮影会
家庭教師と男子高校生、ありがちですね。
男子生徒は女の子とデートするのが仕事の様なものだから、勉強は最低限出来れば大丈夫ですよ、新入生の頃リンちゃん先生に言われた言葉。
ロリロリ先生の言葉にウソは無かった、ただ“最低限”の基準がずいぶん高かっただけ。
シンフォニア高校では定期試験で赤点や追試は出さない、勉強が遅れ気味な子は“補科”と言う補習授業が義務づけられていて、太陽が沈む時間まで学校に居残り。
俺達男子には補科は無く、遅れ気味の男子生徒には優等生の上級生が順番に個人授業をしてくれるそうだ。
勉強の名を借りたデート、優等生に対するご褒美なのだが、俺は今のところ経験が無い。
ダリアちゃんに家庭教師っぽい事をしてもらったけど、その後のお楽しみしか覚えていないよ、ゴメンねダリアちゃん。
そんな不謹慎な俺に女性大生が家庭教師をしてくれる事になったよ。
それまでの経過は複雑で、政府内の組織同士で駆け引きがあったのだ。
広告代理店や出版社、芸能事務所等の綱引きだけでなく、政府の組織内でも闇の深いやり取りがある、図らずも大人の世界を垣間見てしまった。
家庭教師は毎日ではないよ、芸能事務所の仕事で帝都に行く日は、授業を半日、場合によっては一日休む日も出て来るから、そう言う場合には家庭教師のお姉さんが、勉強をサポート。
今日は金曜、明日の朝早くから撮影があるので、先に帝都入りして、ホテルの部屋でお勉強。
先生は飛騨真珠さんと言う女子大生、首筋から胸元まで、デコルテって言うのかな? パックリ開いたエッチな服、乳の上側が見えているよ。
真珠さんと言う名前の通り、肌も真っ白でツヤツヤしているし、今まで嗅いだ事の無い甘くてちょっと鼻に残る様な不思議な香りがするんだよ。
最初に隣に座られた時にはガチガチに硬くなって、抑え込むのに苦労したけど、真珠先生の面白くも、熱心な個人授業に集中、自分で言うのもなんだけど、かなり勉強は進んだと思うよ。
「ちょっと、お休みしようか、カイト君」
「そうだね、もう二時間以上経っているんだね、真珠先生の教え方が上手だから、気がつかなかったよ」
「カイト君はお上手ね、やっぱり芸能界だと、それくらいに、息をする様にお世辞が言えちゃうのかな?」
「ハハハ、芸能界って言っても、明日がデビューなんですよ、やっぱり怖い人が大勢いるのかなぁ」
「大丈夫よ、男の人は、みんなが守ってくれるから。
明日はテレビのロケとかかな、あっ、これって訊いちゃいけない事だった?」
「別に~、 明日は写真撮影だよ、内容はボクも良く知らないんだ」
自然にボクと自分を呼んでしまった、歳上のお姉さんなんだけど、何歳なんだろうね、真珠さん。
「カイト君―、こっち見て」
親指と人差し指でL字を作り、二つ組み合わせて四角を俺に向けるお姉さん。
「何それ?」
「カイト君、これは構図の窓って言うの、絵を描く時には必ず使うわよ、今はカメラの変わりだけどね。
隣の可愛い女の子にプリントを渡す時の顔をしてみて」
何故か頭に浮かんだのはリンちゃん先生、それでもロリ先生が隣にいると思った顔をしてみる。
「わぁー、いいわね。 それじゃ、今度はちょっとイジワルで苦手な子にプリントを渡す時はどんな顔?」
なぜか野バラちゃんが頭に浮かんだ、ゴメンよ、想像の中でイジメッ子にしちゃって、野バラちゃんは良い子です。
「カイト君、面白いわね、それじゃ、今度は宿題を忘れて担任の先生に呼ばれた時の顔をしてみようか……」
次から次にシチュエーションを言って来て、俺はそれにあわせた表情やポーズを作る、意外に楽しくて、気がつけばその役に成りきっている。
凄いのはカメラなんて一台も使っていない、ただ、指で作った四角形を向けられているだけなのに、自分がモデルさんになったみたいだよ。
「……それじゃ、テストの点数が良かったから、妹さんに見せつける顔は~」
「ねぇ、今度は真珠先生の表情を見てみたいよ」
「もちろん、良いわよ、けどエッチなポーズはダメですよ」
やばい、先読みされていた。
「それじゃ、プールに行ったシチュエーションで、まずはロッカールームで隣の子と身体を比べる時の顔」
「もう、いきなりエッチじゃないの~」
そう言いながらも、ロッカーに荷物を入れて、着替える仕草をする真珠先生、この人演技が上手だよ。
髪ゴムを口に咥えて、アップにする仕草、俺は先生の周りを周ってベストアングルを探す。
「こう言う時は緩めのワンピースを着て来るのよ、ブラはストラップレスが便利よ、最初に下を脱いだら、水着を着るのよ」
「もちろんビキニだよね!」
「あら、残念、今日のお姉さんは競泳タイプなのよ」
着替える演技をしているけど、服は一枚も脱いでいないし、俺は恵体に指一本触れていない。
それなのに女性の着替えを盗撮している様な、イケナイ気分になってきた。
何と言うか、無表情に着替える姿がリアルなのだよ。
「……こうやって、袖を通しちゃえば、身体を見られないでしょ」
ニッコリと俺に微笑む。
「女どうしなら平気じゃないの?」
「カイト君に教えてあげるね、女同士のチェックは厳しいわよ、色とかね」
「へぇー、それじゃ、そこも写真に収めておこうね」
指の四角を胸元にあわせる。
「ちょっと、エッチなのはダメって言ったでしょ」
四角形を段々と下腹部に下ろして行き、ベストショットを探す。
顔を見上げると、真珠先生は頬を赤らめてきたし、目がトロンとして口が半開き。
「それじゃ、先生、ここに膝達になって」
黙って俺の前に座る、発情先生。
「はい、これは浮き輪だよ、今から空気を入れてみて」
俺は物を渡す仕草をする、役になりきった先生は、もらった物を広げている、ビニールの剥がれる音が聞こえてきそうな、演技だよ。
空気栓を開く仕草をすると、プゥープゥーと空気を入れる動作。
足元でひざまずいて、頬っぺたを膨らませている女性。
「空気イッパイになった?」
俺の言葉に浮き輪を差し出す仕草。
「それじゃ次は……」
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「……カイト君、起きて、朝ですよ、今日はお仕事に行くんでしょ」
身体を優しく揺すってくれる真珠先生。
「あれ、先生どうして服着ているの?」
「バカな事言っていないで、早く起きなさい、ジュース飲む?」
天然果汁のオレンジを喉に流し込むと、冷たさと糖分で心も身体も起き上がった。
その後は身体を洗ってくれて、パリパリの服を着せてくれた真珠先生、完璧な対応だよ、家庭教師であり、面倒見の良いお姉さんであり、ママみたいであり。
“あれ? この人は性被害者のPTSD回復プログラムの関係だったような”