46.芸能事務所の闇 モデル編
登場人物が増えました、覚えるのが面倒なので、ネーミングルールを。
出版社関係者:地銀、名前はCMの女優さんから。
広告代理店関係者:証券会社
内務省官僚:都内の地下鉄路線、名前に“理”があります。
厚生労働省:関東地方の市名、名前に“化”があります。
芸能事務所:橋の名前、名前に“歌”があります
最初は相撲の小説を出版社に持ちこんだだけだったが、広告代理店が割り込んで来て、単なる本の出版に留まらず、スモーをこちらの世界に知らしめ、流行させると言う、考えもつかない事を提案された。
通電堂さん、あんたが転生者だよ。
単なる競技として紹介するだけでは弱いので、
“男性居住区で流行っている”
なんて刷り込みをして行きたいそうだ、もちろん明言するのは問題があるけど、俺の写真を載せて、それっぽいフレーズで関連付けをする。
例えば女子スモーと言う呼び方をしたとすると、予備知識の無い人は当然男子のスモーも有るだろうと、考えるそうで。
スモー = 男性
と言うイメージを刷り込みたいそうだ。
そうなると、俺が表に出る事が増え、いつの間にか俺がグラビアデビューと言うか、芸能界デビューする事になってしまった。
芸能活動をするなら芸能事務所に所属しないといけないので、日本橋プロダクションと言う、芸能事務所に所属と言う事になった。
事務所所属になればある程度はネットに顔出しも出来る様になるそうだ。
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帝都の高級ホテルの会議室、日本橋プロの社長と、プロダクションの顧問弁護、内務省の三田さんで机を挟んで契約の話。
「……それでは、マネージャーは専任、これはカイト様のみのマネージャーと言う意味です、他の子の掛持ちはいたしません。
それから、収入の件ですが、税引き後の取り分としては1:9、弊社が1でカイト君が9でよろしいですね、それとは別にギャランティーとして、月30万円を考えております」
「ギャランティーとはなんですか?」
「最低収入補償です、もしもその月に仕事が何も無く収入が無い状態でも30万円は必ずお支払しますと言う意味です、これは男性だから特別な事ですのでお金の話は外部に漏らさない様にお願い致しますね」
「ホテル代とか食事代も事務所側で払ってくれるのですよね」
「厳密に言うと、芸能事務所ではなく、依頼先が支払う事が慣例です、例えば出版の仕事でしたら、その出版社が払います。
アゴ・アシ・マクラの心配はないです」
「アゴ・アシ・マクラとは?」
「失礼しました、業界の言葉で、食事代、交通代、宿泊代の意味です」
「これから、覚えて行くから問題無いですよ、社長さん」
「荒川君、何か他に聞きたい事はあるかな?」
三田さんが訊いて来る、この人は政府寄りの人、と言うか内務省から派遣されて来た人で、男性が芸能界で喰い物にされない様に目を光らせてくれている人だよ。
なんか男と言うだけで、優遇され過ぎと言う気がする。
新川カイトだった頃は、大学の学費を貯める為と、毒養父から逃れたくて、金が欲しくて仕方なかったが、今はお金をたくさん貰っても使い道が思い付かない。
「ボクの取り分は1で良いですよ、その代わり余った8は施設に寄付する形に出来ますか?」
「そのぉー、施設と言うのは?」
「僕はカフェでバイトしていた時、ギャラの大部分を“アルトの家”と言う孤児の施設に寄付していました、それとは別に時々ボランティアクラブの人達と施設を訪問して、子供たちの遊び相手をしていました、芸能界に入ってもこの活動は続けて行きたいと思います」
「なんと言うか日王市の孤児たちは幸せ者ですね」
「殊勝な心がけに頭が下がる思いです」
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その後は万世橋さんと言うマネージャーさんを紹介されてお開きになったが、三田さんや顧問弁護士さん達は部屋を出て行くのだけど、芸能事務所の社長さんは俺に“残る様に”と目配せをしている。
「さて、みんな出て行ったね、カイト君、今日はこのホテルに泊っていくと言う事で良いかな」
「そう言う予定でしたよね」
「実はお願いがあるんだけどね、まずは紹介しよう三船橋穂乃歌だ」
真っ白なワンピースと言う現実感の無い女の子がやって来る、見目はSランクの美人とでも言っておこうか、美人過ぎて人形みたいだよ、さすがは芸能事務所。
「美人さんですね」
「ありがとう、彼女は我が事務所に多大な貢献をしてくれたんだ、もし気に入ったらで、構わないから、カイト君からお礼をしてあげてくれないかな」
これは芸能界にはびこる悪習かな、新川カイトの世界でも、女性を性の道具として献上したニュースが時々流れた。
いや待て、ここは男女比が大きく崩れた社会、彼女を受けいれるのが礼儀なのかも、とりあえず話をしてから決めよう。
芸能人がこれからも出てきますが、特定のモデルはいません。
むしろ最大公約数になるような描写に努めて行きます。