4.お兄ちゃん大好き
理学療法士 PT
作業療法士 OT
その後はPTと呼ばれる人と話をして関節とか筋肉の動き方をチェックされたけど、ほぼ健康体との評価をもらった。
それでも毎日数時間はリハビリ室で筋トレをする様にと言われ、しばらくは病院生活。
▽
病室にユルイ美紅さんがやって来た。
「はい、カイト君、検温の時間ですよー」
美紅さんの白衣、胸の形が違う様な、マジマジと見ていると、向こうから教えてくれた。
「あら、気になる? ナースって結構肉体労働なのよ、今日は暑いから下着をとっちゃったー」
「お仕事大変だね」
「そうなのよ」
「さぁ、どうぞ」
そう言いながら白衣を広げる痴女ナース。
背徳の弾力が目の前に表れた瞬間、ドアが勢いよく開かれる。
「お兄ちゃん、大丈夫! 意識が戻ったの?」
高めの女の子の声が病室を支配すると、美紅は一瞬で着衣を戻す。
「えっと、君は?」
「葵咲よ、本当に忘れちゃったの?」
美少女と呼ぶのが相応しい女の子、小さな顔に細いアゴ、形の良い鼻とパッチリした大きな目、眉毛とまつ毛の間に切りそろえられた前髪が並ぶ、毛量が多い髪はこの年代の女の子の悩み、もう少しすると茶色くしてボリュームダウンするけど、まだまだ天然色。
品の良いライムグリーンのカーディガンの上からでも、手足がスラリと細いのは見てとれる。
妹とは言ってもこちらの記憶が無い状態では他人と同じ、前世でもこんな可愛い子と知り合いになれる事は無かったから役得。
葵咲は色々と丁寧に教えてくれるのだけど、他の家族の事になると歯切れが悪い。
「……ゴメンねママ達は都合が悪くて、だけど大丈夫だよ、わたしが毎日お見舞いに来るからね。
あっ、そうそう何か欲しい物とかあるかな~」
「大丈夫だよ、葵咲の顔を見たら元気になれたよ、それよりも学校は大丈夫なの」
「今春休みなの、中学の入学準備も終わったし、時間がいっぱいあるの」
もうすぐ中学に上がれる事を自慢したいのか、胸を可愛く反る。
「それよりもお兄ちゃん、さっき看護婦さんに酷い事されていなかった?」
「えっ、別に検温してもらっていただけだよ」
本当は俺が酷い事をしていたんだけどね。
「病院で大変かもしれないけど、セクハラは悪い事だからね、ケーサツに言わないとダメだよ」
「そうだよね、女の人の身体を触ったらダメだよね」
急に怪訝そうな顔になる葵咲。
「悪い女の人は自分の身体を男の人に触らせたり、えっと……、もっと酷い事をするのよ。
お兄ちゃん、絶対に泣き寝入りはダメだよ」
「あのさー、男の人が女の人に身体を触らせてって頼んだら、やっぱり警察かな」
「そんな男の人なんているわけないじゃん、もしいても悪いのは女の人だよ!」
可愛い鼻をフンッと鳴らす女の子、こちらの世界では倫理観が違うのか、それともこの子が変なのか?
▽▽ ナースステーション ▽▽
エレベーターのドアが開き、今日も美少女がやって来た。
「いらっしゃい葵咲ちゃん、お兄さんはリハビリ室に行っているの、どうする? ここで待っている?」
「お邪魔になるといけないので、病室で待たせてもらいます、あっ、それからこれ。
知り合いにもらったんです、余り物で申し訳ないですけど、食べ切れないから、皆さんでどうぞ」
高級洋菓子店の袋を手渡してくれる少女、知り合いからもらったなんてウソに決まっているけど、小六からのプレゼントを拒否するのも無粋だろう。
「いつもありがとうね、葵咲ちゃん、毎日お菓子を買って来なくてもいいのよ」
「兄がお世話になっているんです、せめてものお礼です」
ツヤツヤの長い髪を揺らしながら病室に向かう美少女を見送る、女性から見ても美少女は眼福だ。
「おっ、またお菓子ですね、ちょっと早いけどお茶にしましょう」
「楠、あんたはあの子を見習ったらどうなの?」
「そうよね、男性の関係者って、威張ってばかりで挨拶なんてしたこともないのにね」
「まったく、偉いのは男であんたが偉い訳じゃないのよって言いたくなるわよ」
「けど、葵咲ちゃんて荒川君とそっくりですよね、男の人は本当の親族と一緒に暮らせないはずですよ」
「そうなの? 楠」
「そうですよ、わたしこう見えてもシンフォニア高のOGなんでちょっと詳しいんですよ、日王市じゃなくて木船市のシンフォニアでしたけどね」
「あんた、意外に優秀ね」
「楠がシンフォニアだとはね、それで男子生徒はどんな感じなの、やっぱり威張っているの?」
国立シンフォニア高校、荒川君も退院すれば通う事になるであろう高校だ。
「さぁ~、クラスの男子は難しい立場でしたよ、女子生徒から人気が無いと苦労しますからねぇ」
「楠、それどういう事よ、詳しく教えなさい」
「どうって、男子ってポイントが有るの知っていますか? それがですねぇ……」
背景説明:日王市は主人公が入院した病院のある街です。
首都まで電車で40分ほどの位置です。