39.月に一度のお客さん ◆ 明星四片《よひら》 ◆ 出版編
シンフォニア高校:文部科学省所管の独立行政法人、
男性担当副担任:内務省、男性管理局、出生管理部、前期管理課、3係所管
男性警護員:警護員は本庁所属、勤務は日王署警備課の編成下
養護教諭:厚生労働省、医政局より派遣
男性の周りには色々な省庁が力を及ぼして来ると言う事で。
国立一般校シンフォニア高校、偏差値は高めなのは当然として、部活にも積極的に取り組むし、学校行事も盛ん、イメージとしてはクラスの中心で行事を仕切る生徒ばかりが集まった学校と言ったところかな。
そして一番の特長は男子生徒がいると言う事、男子とは言っても様々な理由でスタリオン学園に進めなかった子達、アレが大きくならないとか、種が無いとか、男性として色々と足りない生徒達だけど、いないよりはましよね。
どうせ本物の男じゃないんだし、わざと期待しないで初登校したら、わたしの星組には男子はいないなんて。
ハアァァ~、受験勉強頑張ったのにー
入学して数日後スポーツテストがあったの。
まぁ、あんなの本気で頑張っていたのは小学生までで。
「疲れない程度にしておこうね」
なんて言いながら体育館に向かったら、月組の男子が待っていました、荒川カイト君です。
「一緒に頑張ろうね!」
男の子に言われて、本気出さなきゃ女じゃありません、それはもう国体の選考会みたいなスポーツテストになりましたよ。
星組に男子はいないけど、他のクラスの男子の噂が入って来ます、そんな中で荒川カイト君は凄いらしいとの噂。
入学二週間で月組の子の半分とデートした、
“毎日デートしているって事?”
星組の子の中にも誘われて、最後まで行った子がいるらしい。
“最後って言っても、どうせ手をつないだだけでしょ、これだからこじらせ処女は”
五月の浮かれたある日、時間割が変更されて、午後の二限は月組と合同体育の時間になったの、体育館を貸し切りでバスケとバレー。
スポーツテストで存在感を示してくれた荒川カイト君と一緒に汗を流せるので、皆は鼻息荒く、男子の前で良いところを見せようと張り気りまくり。
前段はバレーの中で存在感を示していたカイト君、後段はわたしのいるバスケに入って来た、一軍女子とも言うべき派手な連中はさりげなくカッコ良いプレーに余念がない。
わたし? ああ、運動神経はママのお腹の中に置き忘れてきたの、20秒くらいプレーしたら交代させられたわ。
今は休憩、一軍女子達はカイト君を取り囲みスポーツドリンクやタオルを差し出しているわ、男子に露骨な態度を取るなって、担任に言われなかった?
三軍のわたしにお呼びがかかる事は無いでしょう、あんな光景は見たくないし、空いたジャグを洗って、紙コップでも片づけしておきましょうかしらね。
ああぁ、つまんない、どうして学校に体育なんてあるのかしら、時間の無駄よね、そんな益体も無い事を考えながらジャグを洗っている。
「お仕事大変だね」
「別にィ~、 ヴィィィェエ、最後君じゃないの!」
興奮して変な事言ってしまった、それにしても最後君って、なんなのよ。
「俺の名前は荒川カイトだよ、カイトって呼んでくれたら嬉しいな、お名前教えてくれるかな」
「明星四片です、です」
「四片ちゃんか、可愛い名前だね」
「はい、可愛いです! けど可愛いのは名前だけじゃないです」
テンパッたわたしにカイト君は苦笑するだけ、ああ、せっかくの機会なのに。
「ねぇ、可愛い四片ちゃん、デートしてくれませんか?」
「はい、もちろん、お願いします!」
わたしの事をチョロい女だと笑ったあなた、カイト君はとってもキュートで優しいんですよ、そんな男子を前にすればIQダダ下がり。
▽▽
仲良しの事を思い出すと未だに下腹がうずきます、デートは最高でした、何と言うか話を引き出すのが上手で大人みたいなカイト君、今までの人生で一番喋った時間かもしれません。
その後は流れる様にラブホ、抱き寄せられたまでは理性が残っていました、だけど、お互いの肌が触れ合うと、そんな理性はトーストの上のバター状態。
カイト君の舌がわたしに当たると脳天に電気が突き抜ける様な感覚。
今までの人生の価値感がひっくり返る様な経験でしたよ、そりゃわたしだって、色々な知識を仕入れてはいたけど、見るとやるとでは大違い。
自分が大人になったのか、赤ちゃんに戻っちゃったのか、良く分からない時間でしたよ。
そんな素敵な経験からもう二週間も経つんですね、今日は保健室で問診、経験した子はその後のケアが大切だそうなのよ。
「一年星組の明星です」
「いらっしゃい、消毒臭い保健室にようこそ」
養護の先生が自虐的に出迎えてくれる。
「先生、尿検査提出しておきました」
「ありがとうね、それでは問診を始めますね、明星さんの健康情報を見たいの、これは今回の問診にのみ使用する物で、プリントアウトやコピーはいっさいしないわ、データ公開に同意しますか?」
「はい、明星四片、データの公開に同意します」
わたしの声に反応したパソコン、画面が個人生体情報に切り替わる。
「もう、何度も聞かされていると思うけど、このデータは健康管理にのみ使用します、15分経つと無条件で画面から消えて、痕跡は一切残りませんからね」
学校と言えども詳細な健康記録をむやみに見る事は出来ないの、生徒の同意が必要と言う仕組み。
養護の先生のパソコンにはわたしの基礎体温や生理の周期が表示されている。
「あの、本当ならもうとっくに生理が来ていますよね、アレをしたからでしょうか?」
「それはまず無いわね、一般高校で妊娠の可能性は0ではないけど、ほぼ無いわ、有り得るとしたら想像妊娠かしら」
「はぁ」
「問診の目的は妊娠の判定ではないの、明星さんの内臓に異物が入ったけど、問題無いかを確認する為よ、今は高校に入学して生活も変わって、ストレスも多いから生理不順になる子は普通にいるから気にしないで、気にする事もストレスなのよ」
「分かりました」