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28.昔犯罪、今合法 ◆ 日比谷理華子 ◆

 視点変えです、社会の暗部の描写ですが胸くそ描写に注意。



 日比谷理華子、公務員の一族に産まれ、母親の背を見て育った彼女はこの国の最高の大学に進み、先輩達と友誼を結んだ。


 最終学年の6月最初の日曜日、国家公務員1種1類の一次試験を受験、最高の大学に進学できる頭が有れば、学科試験はたいした事はない、だが公務員1種は学科が満点でも合格とは限らない。


 試験の翌日の月曜日、内務省に出向き大学時代の先輩に面会を要請する、公務員は名指しで面会を求められれば断れない。

 日比谷理華子は先輩に国家公務員試験を受験した事、将来はどんな仕事をしたいのかを話す。


 一通り話を聞いて納得した先輩は彼女の上司であるチーム長を日比谷に紹介。

 翌火曜日、日比谷は今度チーム長に直接面会を要請、一度紹介されているから面会要請は出来るのだ。


 一通り自身の話をし、チーム長の質問に答えたのち、見込みありと判断したチーム長は課長を紹介してくれる。

 翌水曜日、今度は課長に直接面会を要請……


 面倒な事この上ない非公式面接だが、二次試験の面接までに部長にまで辿りつけば合格確定、地方大学出身の学生が満点をとってもキャリア官僚になれないのはこうしたからくりがあるからだ。


 内務省は国の中枢、成績だけを基準に採用していたら、反社会的な思想の持ち主や海外に傾倒した人物が入りかねないので、信用のおける者を採用しなければならない。

 そしてこの時の人脈が入庁してからの派閥となる。


 キャリア官僚と言うと巷では勉強ばかりしているガリ勉のイメージがあるが、実に人間臭い官僚機構、その生臭い組織の中で派閥を見誤る事無く地歩を固めた日比谷理華子は内務省男性管理局、出生管理部、前期管理課の課長となった。

 

 男性はだいたい25歳から30までが前期、それを過ぎると後期と呼ばれる。

 精通が始まった10代前半から20代までのバカで無謀な男共を上手く誘導して優越感や全能感を育て、自然交配に励ませる、楽な仕事ではないが出世コースでもある、ここで実績をあげれば出生管理部の理事官、いずれは部長に、そうなると男性保護局の局長ポストも見えて来る。



 ▽



 エリート官僚日比谷、今日は現場を視察、男性の欲望を具現化したスタリオン学園。


 本来なら全ての女性の憧れの的なのだが、現実には嫌っている女性が多い、ワガママな男に好き放題されると分かっていて、我が娘を送り出す母親はいないであろう。

 そんな女性に不人気のスタリオン学園に生徒を集める為に、小中でのPR活動をして。

“スタリオン学園に進む事こそ、人生の勝ち組”

 なんて刷り込みを行っている。


 親世代には、娘をスタリオン学園に進学させれば、所得税の減税だけでなく、入学一時金や学年が上がる毎に補助金が支払われる、等とエサをまいているが。

 スタリオン学園生に貧困家庭の出身者比率が高くなってしまったのは皮肉な事だ。


 貧困家庭出身者が多くては多様性が望めないので、一般の中学からのリクルートも盛ん、いわゆる青田買い。

 一般の高校受験が2月なのに対して、中三になった時点で個別にアプローチ。

“あなたはスタリオン学園生としての資質があるわ、試してみてはどうかしら”

 そんな甘い言葉で、女子中学生を集めているのが現場の実情だ。



 ▽▽



 体育館の地下に有る生殖室、通称種付け部屋、壁は暖色系でまとめられ、部屋の隅にはエアーマットやクッションがそれぞれのプライバシーを守る形で配置。


 そして部屋の中央には今日の生け贄、10代後半の少女達、すぐに脱がされそうなチープな服と怯えた目、そして豊満な身体。


「お前達はメロディ学園の代表としてここ、スタリオン学園に呼ばれた、殿方達はバスケの試合の最中だが、僅差で勝つ事が決まっている。

 勝利が決まった瞬間に飢えた獣の様になだれ込んで来る、最初に教えた通り、精一杯怯えて鳴き叫ぶ様に、それが殿方を満足させる方法だ、間違っても傷をつけてはならんぞ!」


 メロディ学園の担当者が襲われる側の心得をしっかりと教え込んでいる、メイドを養成する為の学校だが、見込みの有る娘はこうやって種付けに呼ばれる“名誉”を与えられる。


「課長、娘達に一言お願いします」


 日比谷はゆっくりと娘達を見まわし、少し間を空けて話し出す、これも人を動かす技術の一つ。


「君達はこれから地獄の苦しみを味わう事になる、今まで経験したことも無い暴力の嵐だ、だがわたしは君達に同情はしない、なぜだか分かるか?

 生理周期から言ってこの中の半数以上が妊娠をする事が出来るからだ、今の世の中で自然妊娠出来る女がどれだけいるか、選ばれたエリートだ君達は。

 それだけではない、男児を産む可能性すら孕んでいるのだ、これから始まる地獄も名誉ある生活の為のパスポートだと思い望んで頂きたい」



 ▲



 狼の饗宴は幕を下ろし、モニターにはクッションの上でうつろな目をしている少女の姿。


「日比谷課長、見事なものですね」

 メロディ学園の担当者が褒めて来る。


「男性は飽きっぽいですから、時々こう言うイベントを挟む必要があるのです。

 メロディ学園の担当者としては複雑ではないのですかな、手塩にかけて育てた娘達が食い散らかされるのは」


「まぁ、正直に言うと最初はそう思いましたね、けど今は違います」


「それはどの様な心境の変化でしょうか?」


「あの娘達は、メイドとして底辺の人生を送るだけです。

 それがメイドを使う側に回るのですよ、数ヵ月後に上流階級の仲間入りを出来るクジを引いている様に見えてきます」


「なかなか、面白い言い方をされますね」


「そうそう、日比谷課長、わたくし大学では中世史を専攻しておりました、均等期の歴史と言った方が分かり易いですかね」


「男女が半々なんて黄金期と呼んでも良いですけどね」


「均等期では男性があのように無理やり行為に及ぶと重罪だったそうです、国によっては死刑もあったとか」


「時代が変われば常識も変わるものですね」


「ええ、当時の政府はこれ以上子供を産まない様に産児制限をしたり、望まない妊娠には人工的に流産をさせる事も合法だったそうです」


「なんとも、もったいない」


「課長、念の為に言っておきますが、わたくし中世史を専攻しておりましたが、懐古主義者ではありませんよ」


「ああ、あの連中ですか、歴史と現実の区別のつかない困った奴らですね」


「ええ、均等期の様に男と女は対等で有るべきだと言うくせに、人工受精は否定していないのですから……」


 均等期の様に男女の関係は対等で有るべきだと主張する連中、本当の男子を見た事が無いからそんな無責任な事が言えるのだ。


 現代の男子は打たれ弱い、ちょっと怒られただけで委縮して引きこもってしまう、そんな子供達を幼いうちから我儘に育て上げ、女性に対する暴力を当然の事と言う教育を授ける、自然妊娠の道は簡単ではないのだ。



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