22.みんなと仲良し
ゲーセンのゲームは100円が基本です、物価が上がってもワンプレー100円のまま、物価の優等生ですね。
校内にヤリ部屋が有るし、男は街中のラブホはタダ、気に入った子を選んで好き放題しろと言われても、相手の事を良く知らないで深い関係になるのは何か違う。
「今日もわたし達と遊んでくれるなんて、うれしいよ、カイト君」
「あの、昨日は大丈夫でしたか? わたしカイト君の身体が心配で……」
肩口で切り揃えた髪とハキハキした物言いが特徴の美月鈴蘭ちゃんと、小柄で控えめな登月紅葉ちゃん、二人と一緒に街中にお出かけ。
「今日は二人のお勧めの場所を教えて欲しいんだ、ほら、俺ってこの街の事良く知らないし、家と学校の往復しか知りませんなんて、寂しいじゃん」
「そりゃ、案内してあげるのは構わないけど、男の人が楽しめるかどうかは分からないよー」
「いいよ、鈴蘭ちゃんのお勧めを教えてよ」
▽
やって来たのはゲーセン、新川カイト時代は小遣いなんて殆どもらっていなかったので、高嶺の花だったよ、家庭用機で遊んでばかりだった。
「さぁ、カイト君、ここがゲーセンだよ、入口がクレーンゲーム、その奥はプリ系、地下はちょっとガチなゲーム機が並んでいる世界さ」
鈴蘭ちゃんはまるで自分がゲーセンのオーナーの様に自慢気に説明してくれる、
広めの施設は女子中高生達で溢れていて、クレーンゲームでキャーキャー騒いでいる。
「まぁー、中ボーにはクレーンゲームが似合っているよね」
「鈴蘭ちゃんも数か月前まで中学生だったよね?」
「いいんだよ、わたしはガチな中学生だったんだ、ちょっと刺激が強いかもしれないけど地下に行ってみるかい、カイト君」
「いいよ、行ってみようか」
「おっと、その前にメダルを交換しないと」
両替機みたいな機械にスマホを当てるとジャラジャラとコインが吐き出される。
「はい、これがゲームコイン、一枚が缶ジュースくらいの値段だと思えばいいよ、二時間楽しめるか、五分で終わるかは腕次第だけどね」
キャッシュレスが進んだ社会ではゲーセンも百円玉を入れるタイプじゃないんだ。
ゲームコイン方式は賢い方法だよ、新川カイトの世界でゲーセンは100円だった、物価が上がろうと、消費税の税率が増えようと、いつまでもワンゲーム100円では、利益率が下がり、経営に行き詰まってしまうよね。
薄暗い地下はアーケードの筐体が並んでいた、ここら辺の雰囲気は前の世界と同じだね。
「わたしはこの格闘ゲームが好きなのさ」
3Dだけど、なんとなく見覚えがある格闘ゲームだ、キャラが微妙に違っている、女性の格闘家がメインで、男性は色物と言うか、セクシー枠みたいな扱いを受けている様な。
んん、これなら知っている、昔遊んだ事があるぞ、赤い帯をした格闘家や変なインド人も女性になっていて、そして青いチャイナ服の男性? 性別が入れ替わって3Dになっている以外は前と同じ“街頭闘士シリーズ”
「鈴蘭ちゃん、対戦しようよ」
「カイト君、キミ男のくせに格ゲーなんて出来るのかい?」
「いいから、やるだけやってみようよ」
……
「負けました……、カイトあんた何者? もしかして男性居住区はゲームばかりしているのかい?」
「ははは、ありがとう、鈴蘭ちゃん、優しいから手を抜いてくれたんだよね」
「おっ、おう、もちろんだよ、わたしの本気を見せたら一瞬で終わってしまうからなぁ~」
「鈴蘭、あんたずいぶん強くなったんだね」
突然俺達に話しかけて来る女性、制服を着崩して、わたしワルですをアピールしている、
「なんだよ、乙夜、こっちは楽しくやっているんだ、向こうへ行きな」
「シンフォニアに行ってヘタレになった奴には用は無いさ、せいぜい種なし相手に腰振ってな」
「てめぇ、今なんて言った!」
「ホントの事を言っただけだよ、種が無いか、勃たないのか、どっちか知らないけどさ」
一触触発の状態に小柄な紅葉ちゃんが割り込み、スマホをつきつける。
「乙夜、今の言葉は録音されました、男性侮辱罪は軽くはないですよ、今引けば黙っておきます」
「紅葉てめぇ」
なんでゲーセンまで来てケンカするのかな? いや、ある意味ゲーセンらしいけど。
「まぁ、待って、ここはゲームをする場所だよ、ゲームで決着付けたらどうかなぁ?」
「ギャハハハァァ、良いぜ、お前男のくせに良い事言うじゃないか、アーシと鈴蘭の挌ゲー勝負か、いいぜ受けてやるよ、負けたらキッチリ頭下げてやるよ男様よぉ」
「どうする鈴蘭ちゃん?」
「受けるに決まっているでしょ、わたしだって女よ」
「いーぜ、その代わりアーシが勝ったら何をくれるんだよ、そっちの男を貸してくれるとかかぁ?」
「いいよ」
「カイト君!」
「大丈夫、鈴蘭ちゃんなら勝てるって~」
一触触発の危機をなんとか乗り切ろうと提案したゲームだけど、結果は鈴蘭ちゃんが僅差で負けた、悔しさのあまり下を向いて涙をこらえている鈴蘭ちゃん。
「鈴蘭、おめぇ、前より弱くなっていねぇか、男相手に腰振り過ぎだって」
「乙夜ちゃんだったよね、約束通りデートと言いたいけど、俺は自分より弱い奴は嫌いなんだ、先に挌ゲーしようよ」
「お前、俺の腕前見ていただろう、勝てると思っているのかよぉ」
「いいから座って、俺が2Pでいいよな」
「男をボコルのも悪くねぇ、現実じゃ威張っていても、ゲームの中でボロボロにしてやるよ」
対戦は俺の圧勝だった、いやさっきの対戦を見ていたから勝てると思っていたよ、コンボのタメが分かり易過ぎだって。
「……すまねぇ、悪い事言っちまったな、謝るよ」
そう言って席を立とうとした乙夜の腕を掴む、
「待って、乙夜ちゃん」
「てめえ、離せよ」
「男の力に勝てる訳ないでしょ、一緒にプリ撮ったら離してやるからさぁ」
女性ばかりの世界だが体格差は前の世界と同じだったので、女の子なんて力ずくでどうにでもなる、これで犯罪にならないとは、男性天国過ぎるだろう。
ちょい悪を気取っている乙夜を強引にプリに押し込むと、俺はのしかかる様に中に入る、
「これって、どうやって使うの? 教えてよ、乙夜ちゃーん」
「分かったよ、分かったからあんまりベタベタするなって」
そう言いながらも手馴れた様子でプリを操作して行く乙夜、
「おっ、この表情で良いのかな? メスっぽいよ」
「ダメだって、こんな顔間抜けすぎる、オメーがベタベタ触るからだぞ」
乙夜も所詮は15の女の子、俺が横乳を突っついているので、変顔ばかりになってしまう。
「これだ、今までで一番まともだ」
「乙夜ちゃんは鈴蘭ちゃんと知り合いだったんだよね」
「まぁな、オナ中だよ、一緒のクラスはなった事はないけどな、たまたまゲーセンで会って、格ゲーの腕を磨いたのさ」
「良い関係だね」
「別に」
プリ機から出ると鈴蘭ちゃんと紅葉ちゃんが待っていた。
「カイト君、これあげるから向こうで遊んでいてくれませんか?」
紅葉ちゃんが俺にコインを渡してくれる、子供じゃないんだからさ。
俺は一人クレーンゲームをやっていたけど、取れたのはヌイグルミ一個とチョコが二箱のみ、修行がたりないね。
そのうち三人がやってくる。
「アーシはこれから紅葉と遊びに行く事になったんだ、カイトは鈴蘭に送ってもらえよ、それじゃあなぁ」
そう言って鈴蘭ちゃんと二人にさせられた。
昭和のゲーセンをイメージしてください。
実は見たことないですけど、不良学生同士の諍いがあったって、ホントですかねぇ。