18.エロい体操服
貞操逆転世界で女子が主導権を握っている世界ですが、体格差は現代と同じです。
男性のほうが頭一つ大きい姿を想像してください。
午後からは体力測定とスポーツテスト、当然ながら体操服に着替えるのだけど。
少数者の男子生徒は男性棟で着替え、そうそう男子の体操服は自分で気に入った服を着てくれば良いそうだよ。
男子生徒の絶対数が少ないので、いちいちサイズ別に揃えるのも大変なのだろうね。
ハーフパンツと白地にワンポイントのTシャツ、紺色のジャージを羽織り、体育館に行くと、ブルマ姿の女子生徒が並んでいた、ええっ! 今時ブルマ?
近くにいた月華アンズちゃんを捕まえる。
「ねぇ、女子の体操服はこれが標準なの?」
「標準っていうか、これしか無いんじゃないのかな?」
「だけど、お尻の形が見えちゃうよね」
「ああ、そう言われるとちょっと恥ずかしいね、だけど運動するんだから関節が最大限に動く様にしないとね、ちなみにブルマの時には下着も着けませんよー」
「蒸れるし、擦れるしねぇー」
「下着が汗で濡れたら気持ち悪いじゃない」
「そうそう」
近くにいた五月雨春菊ちゃんも会話に入って来たけど、それってパンツ一枚と同じじゃないの?
「縦縄跳びとかボール乗りで楽しまないとね~」
えっ、それはブルマと関係あるの?
月華アンズちゃんは五月雨春菊に肘で小突かれて黙ってしまった。
そんな話をしていると肩幅もしっかりしていていかにもアスリートと言った感じの女性がやって来た、体育科の先生だそうだ、うん、イメージ通りだね。
「荒川君、ちょっと良いかな?」
「はい、なんですか?」
「君は体育が得意だそうだね」
初日の自己紹介でスポーツが好きと言ったけど、新川カイト時代は毒養父に搾取されていて部活どころではなかった、汗を流す青春に憧れはあるよ。
「はぁ、まぁ、それ程でも」
「いやいや、謙遜はしなくて良いよ、ところでお願いと言うか、頼みがあるのだけど良いかな?」
「何でしょうか?」
「これからスポーツテストと体力測定なんだけど、高校生ともなると女子生徒達はなかなか本気を出してくれないんだ、全力で頑張るなんて流行らないとか言ってね」
「まぁ、分からなくはないですね」
「そうなんだよ、それで荒川君に檄を飛ばして欲しいんだ」
「あー、分かりました」
俺は一歩前に出ると、クラスの皆はお喋りをやめて、一斉に注目する。
「今、体育科の先生に聞いたのだけど、他のクラスではスポーツテストで手抜きをする生徒がいるんだって、みんなも手抜きするのかなー」
「そんな訳ないじゃん!」
「わたし達いつも全力だって」
「手抜きなんてした事無いし」
「そうだよねー、ボクも全力でやるから、皆も頑張ろうね」
『オー!』
体力測定は結構ガチだった、握力、背筋力、前屈、高跳び、立ち幅跳び、ハンドボール投げ、上体起こしいわゆる腹筋が終わるとシャトルラン。
それが終わるとグラウンドに出て50M走、そしてラストは3キロ走。
女性の多い世界なのだけど、体格差は以前のままなので、俺は上位の成績だったけど、なかなか一位にさせてくれない、女子も本気だ。
最後の3キロ走、先頭を逃げている俺だけど、後ろから足音が聞こえて来た、男として一つくらいは一位にならないと、息も苦しくなって来たけど、ここは踏ん張り所だ。
ペースを上げたけど、足音は変わらずついて来る、ここは先に行かせて、後を追うか、残り1キロを切ったあたりでペースを落すと、淡月ナデシコちゃんが軽く抜き去って行く。
最後まで自分のペースを守って走るか、潰れても良いからナデシコちゃんに追走するか、迷ったけど追走を選ぶ、相手だってギリギリだろう、逆転のチャンスは全力で頑張る人間にしか与えられないよ。
▽
“10分50、11分、11分10……”
体育科の先生がストップウォッチを読みあげている、クールダウンが終わった俺にスポーツドリンクをくれる体育科の助教。
「残念だったな、本当なら一位でもおかしくないタイムだけど、相手が悪かったな」
「あの子、運動部じゃないですよね」
「カイト君、わたし吹部なのよ」
「吹部って楽器を持って走ったりするの?」
「楽器は持たないけど、練習前は必ず走るわよ」
「音楽関係ないじゃん」
力が抜け、座り込んだ俺、ナデシコちゃんのブルマが目の前に、ピチピチのブルマは単なるパンツ。
んんっ、これは!
“いやいや、そんなわけはない、これは服のシワだよね”
その後俺はへたり込むふりをしながら、ナデシコちゃんの下腹部をチラ見した、バレてないよね。
その後も続々とゴールする女の子達、フラフラになって倒れ込む子もいるよ、みんな全力で頑張ったんだね。
「荒川君が檄を入れてくれたおかげで全員立派な成績だったよ」
「それは何よりです」
「実は明日の午後は星組の測定があるんだけど、カイト君に檄を飛ばして欲しいんだ。
大丈夫霜月先生には許可を得たから」
「星組にも男子がいるでしょう?」
「それが色々あってな、何とか一緒に出てくれないか」
「まぁ、机に向かって授業するよりは楽しそうだから良いですよ」
俺は二日連続で体力測定とスポーツテストをしてしまった、そうそう星組の男子だけど、仲の良い同級生が風組にいるから、友達と別れたくないとゴネて転出してしまったそうだよ。
俺は星組で大歓迎を受けたから良いけどね。
◆ 淡月ナデシコ ◆
可愛い系男子カイト君、スポーツテストではへたり込むふりをしながらわたしの下腹部を何度もチラ見してくれた。
ちょっとビックリした顔と、関係ありませんよと、澄ました顔が交互に見られてわたしの女性はヨダレが止まらない。
吹部の練習が終わった後も火照りが収まる気配はない。
「ナデシコ、どうしたの?」
「別に…… 先輩、今日は先に帰ってください」
同じホルンパートの先輩が心配してくれるが、察しの良い彼女は“先に行くね”と言っていなくなってしまった。
トイレの個室、扉を閉めると“オナ禁”と大きく張り紙がしてあるが、誰も守っていない規則だ。
その日わたしは何度も規則を破った。
縦縄跳びとかボール乗りとありましたが、まぁ、アレの事です。