15.一緒に勉強しましょう ◆ 神月原ダリア ◆
新編です、勉強のできる優等生タイプですけど、堅物ではありません。
わたしは子供の頃から優秀でした、学校の勉強が難しいと思った事は一度も無く、授業を聞くだけで全て理解出来、自身の知識となって頭に蓄えられていきます。
予習や復習をした事が無いし、テスト勉強なんて時間の無駄だと本気で信じていました。
三つ上の姉の教科書をすんなり理解したけど、姉から酷く怒られました、それ以来賢さはなるべく隠し、人当たりを良くする様にしました、それが人生を生き抜くコツだと見抜いたからですよ。
人生を左右する高校受験、担任も学年主任もスタリオン学園を勧め、過去の実績からしてわたしの成績なら余裕で受かると言われました、スタリオン学園は別名種付け高校、男子生徒が気に入ったクラスメートに種付けをしてくれる学校。
担任は自然妊娠した場合のメリットを説明してくれました、出産育児を完全にケアは当然ですが、産後のベビーシッターも小学校入学まで無料。
上の学校に進むのなら学費の減免は当然として、育児に関するケアもしてくれる。
就職でも有利になるし、所得税の控除率が高く、親世帯まで控除が受けられるとか、条件によっては助成金も受けられるとか。
中学生相手に所得税の控除なんて説明されても、想像がつきませんけどね。
何よりも自然妊娠ですと男児が産まれる確率が桁違いなので、妊娠ガチャを引くチャンス、男児を産めば社会の階層を一気に駆け上がれる、とスタリオン学園を勧めます。
問題はわたしに勉学の才の代償として胸の脂肪を奪ったと言う事実。
オスと言う生き物は胸の脂肪に興奮すると言う困った習性があるらしい。
ブラのサイズ順に選ばれて行くと言うのなら、卒業までにわたしがガチャを引く可能性はゼロ。
惨めな高校生活をおくるよりもと、国立一般高校のシンフォニア高校に入学願書を提出したわたし。
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入学式の二日前に女子生徒だけが学校に呼ばれてオリエンテーションがありました、キツイ顔した担任がわたし達を前に言います。
「二日後の入学式を過ぎたら君達もシンフォニア高校の生徒だ、まずは合格おめでとうと言っておこう、それともう一つおめでたい話だが、このクラスには男子が配属される」
教室全体が持ちあがった様な雰囲気に包まれるけど、担任はそんな雰囲気は無視して話を進める。
「荒川カイト君と言う生徒、歳は君達と同じだ、そして報告によれば女性に対する嫌悪感が少ないそうだ」
“やったー”
小さい喚声がそこかしこで聞こえる。
「これが荒川カイト君だ」
プロジェクターに写されたのは美形の男子、男性と呼ぶには少し早く少年と言う呼び名が相応しいですね。
教室は女子生徒達の嬌声に包まれ、ひとしきり騒がせた後梅子先生が続けます。
「これは大変な事だぞ、君達の対応次第では女性に対する忌避感の少ない少年が女嫌いになってしまうかもしれんのだ。
三日もエサを食べてない野良犬のような態度は絶対に見せるな、ペルシャ猫の様に優雅に振る舞え……」
その後担任は男子生徒に接する方法を教えました、とにかく普通の同級生と一緒に接する事、スキンシップを望んだり、写真の強要などしてはならない、SNS自体は禁止ではないが男性がクラスにいる事をにおわす投稿は禁止。
実はネットが一番の重罪、男性の事を投稿するだけで罪になるのですよ、男は大切な戦略資源、ネットに乗せれば世界中に戦略兵器を晒す事になりますからね。
そして、独占禁止、男の人は公共物として扱いましょう、小中でもさんざん言われて来ました、空気に例えられたり、太陽に例えられたり、図書館の本に例えた話しもありましたね。
独り占めしないで、順番に仲良く使いましょう。
これから入学する男の子。
“ハーレムは作っちゃダメですよ”
「……と言う訳だ、とはいえお前達も年頃の娘、男が気になって仕方ないだろう、入学式の後はクラスHRで自己紹介がある、その時に一人一回だけ質問を許す」
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のちに自己紹介タイムではとんでもない波乱が起きたのですが、カイト君は気にする様子もなく、更に不届き生徒の退学の取り消しを嘆願。
それどころか加害者の月ヶ瀬とデートまでしたと言うではないですか、わたしも毒を吐けば良かったのでしょうか?
大丈夫、そんな事をしなくても成績優秀なわたしはカイト君の隣の席になりました、隣の特権でペンを貸してあげました。
先っぽが丸いペンの使い方、女の子ならみんな知っていますよね。
翌日も半日授業の日だったのですが、カイト君はまたしても月ヶ瀬とランチデート、スタート直後からリードを許してしまってはいけません、夕方に、
“週末一緒に勉強しませんか?”
とメッセージを送ったらあっさりと快諾してくれました。
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勉強場所はカイト君のマンションのラウンジ、高級ホテルのロビーみたいな豪華な場所です、プリムを付けたメイドさんが優雅な仕草で紅茶を置いて行きました。
“お金は払わなくて良いのでしょうか”
心配する小市民なわたし。
そんな庶民のわたしは優等生の仮面を被り男子に勉強を教えます。
カイト君はわたしの説明をしっかり聞いて、分からない個所は何度でも質問して来ます、そして地頭が良いと言うのでしょうか、水を吸い込む砂地の様に知識を貪欲に吸収していきます。
「少し休みませんか、カイト君」
「そうだね、ダリアちゃんの教え方が上手だからあっという間に時間が過ぎて行ったよ」
「まぁ、嬉しい」
ここは余裕を見せる場面ですね、わたしペルシャ猫になれているでしょうか?
「あれ?お兄ちゃん」
カイト君そっくりな可愛らしい女の子が声をかけてきました。
「ああ、葵咲か、こちらは神月原ダリアさん、今勉強を見てもらっているんだ」
「始めまして、葵咲と申します」
キレイな姿勢でのお辞儀、髪もツヤツヤで色々とワンランク上の感じです、こう言う子がピラミッドのテッペンをポンポンポンッと跳び抜け、女子アナとかになるんでしょうね。
頭をあげた妹さんは高性能のスキャナーの様に一瞬でわたしの身体を精査します、スキャンデータを確認出来たのでしょう、礼儀正しい妹は余裕を持った顔つきになりました。
「お兄ちゃん、神月原さんはわざわざ来てくれたのでしょ、お部屋まで案内してあげてください、失礼ですよ」
「そうかなぁ、ねぇ、妹が部屋まで呼ぶ様に言っているけど、どうする?」
「まぁ、一度殿方のお宅を見てみたいと思っていたのですの、案内して頂けませんか?」
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カイト君の部屋、と言ってもリビングですけど、眺望は最高、家具も高級品です。
突然妹さんがスマホを取りだします。
「お兄ちゃん、ゴメン友達がどうしても来てって言っているの、二時間くらい出かけるね、神月原さん、お構い出来なくてごめんなさい」
「気にしないで、早くお友達のところに行ってあげてください」
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30分後本革のソファに爪を立てて、声を押し殺しているわたし、女の幸せは妊娠ガチャだけではないのですね。
優等生ともエッチをした(するように仕向けられた)
妹の手の平の上です。




