13.隣の席の優等生
優等生のダリア、最初はメガネっ娘にしようかと思っていたけど、普通の頭の良い子をイメージしてください。
次の日、登校してみると席の配置が変わっていた、ちなみに俺の机はみんなより一回り大きく、高さも数センチ高いから、すぐにわかる。
“男子生徒は体格が違うから”
と言う理由らしいけど、無垢の一枚板にする必要はないよね。
梅子先生がやって来て。
「今朝はたまたま女子が全員早く登校したのでな、みんなでクジを引いて席順を決めたのだ、女子達は皆納得している、荒川も文句は無いな」
担任の言葉を翻訳すると、強権を発動して強引に席替えをした、女子達は抗議をしたけど力で押し込んだと言う意味。
「まぁ、良いですよ、えっと俺の隣は誰なのかな?」
「わたしです、神月原ダリアです、よろしくね」
優等生っぽい顔つきの女子生徒、前髪をピンで止めておでこを広く見せる髪型、前の世界ではあんまり接点の無かったタイプだ。
うん? 新川カイトは共学だったかな、中学までは共学だったはずだけど、高校はどうだったかな。
こちらの世界に来て一月経った、新川だった頃の記憶が段々ボンヤリして来たよ。
一時間目は数学、昨日の小テストを返して問題の解説をするだけなんだけど、ダリアちゃんが俺にペンを差し出す。
「良かったら使ってくれないかな?」
「ありがとう、それじゃ代わりに俺のシャーペン使ってみる」
「ありがとうね」
控えめで大人な対応、なんと言うか優等生っぽい、妹の葵咲ならば嬉しさ全開なのにね。
周りから舌うちが聞こえたのは気のせいだろう。
隣の優等生は勉強が得意なだけでなく、教えるのも上手、授業のポイントポイントを上手く押さえてアドバイスをくれる。
それにしても高一にしては水準が高くないか、真面目に勉強しないとあっという間に置いていかれて深海魚みたいになってしまいそう。
▽
今週は午前授業の日だから今日もランチしよう、相手は野バラちゃん、他の子ははまだ距離感が掴めない感じだしね。
「……おまえさぁ、昨日はわたしとランチしたじゃないか、二日も続けて同じ相手じゃつまらないだろう?」
「そんな事無いよ、野バラちゃんの話を聞くのは楽しいし」
「あっそう、お店はバンケッティで良いよな」
「それは構わないけど、お金大丈夫? 高かいんじゃないのバンケッティ、なんなら俺が出そうか、それとももっと安い店にいく?」
「わたしの財布は厚いから心配するなって」
昨日は遠慮していたけど、今日は最初からガッツリと肉肉しいメニューでテーブルの上を茶色くする。
「いやー、男子の本気を見させてもらったよ」
「ガツガツ食っているのを見ているだけじゃつまらないだろう」
「そうでもないよ、わたしも結構食べたし」
「ところでさぁ、野バラちゃん、男性居住区ではお世話係のママとかメイドとか姉さんが、定期的に交代するって言っていたよね」
「うん、ママだけで3,4人はいるみたいだよ、ほら、一人だと情が移っちゃうから、何人かいて、定期的にローテーションしているらしいんだ、だけどみんな血は繋がっていないはずだよ」
「そうなんだ、俺の本当のママはどこにいるんだろう?」
「なぁ、もしかしてママを探したくなったのか?」
「そりゃ、興味はあるでしょ、だけど無理だよね~ そう言う情報はガッチリ固められている気がする」
こちらの世界では情報管理社会、一般の市民が頑張っても、門前払いだろう。
「本当かどうか知らないけど、あんたの住んでいるマンションがあるだろ、丘の上の、あそこに住めるらしいんだ」
「へぇー」
「何年か前に噂になったんだけど、凄いお金持ちの女があのマンションに住みたい、金は幾らでも払うって言ったらしいけど“あなたは社会に貢献していないので無理です”って断られたって」
「男の子を産むのが社会に貢献なんだね」
「そう言う事」
「だけど、その男は我儘放題なんだろ、同性として恥ずかしいよ」
「けどさぁ、種付けするんだから我儘になるのも仕方ないのかなって思う時も有るよ。
保体の授業で習っただろ、男は攻撃的にならないと、えっとー、そのー、あそこが大きくならないって、あんたもそうだろ?」
「いや、普通に毎朝元気になるけどね」
「ふーん、保体の授業もあてにならないね。
けどさぁ、有料チャンネル観た事有るだろ、友達が言っていたけど、あんなの女に対する暴力だよね、初めて観た時ビックリしたよ」
絶対に自分の経験だよね、途中から視点が変わっているよ、もちろんそこに突っ込みを入れる様な無粋はしない。
「野バラちゃんは種付けしてもらえるのなら暴力も平気なの?」
「う~ん、イジワルな質問するねぇあんたは、そうだねぇー、相手によるかな? 例え種付けしてもらうにしてもタイプじゃない奴に上に乗られるのはカンベンかな、あんたなら大歓迎なんだけどねぇー」
「ゴメンね、種なしで」
「もう、そう言った自虐は無しだよ、こっちがいたたまれなくなるんだ」
「何と言うか、男として女に謝りたい気持なんだ、今までは男性居住区でクズみたいな生活を送って来たんだろ、こちらでは女性の役に立つ事をしていきたいよ」
「それじゃあ、あんたさぁ、わたしの家に来ないか?」
「うん、良いよ、野バラちゃんの家はどこら辺なの?」
「ちょっと待って、お前何考えているんだよ、冗談だよ冗談、本気にするなよ、男がそんな事言っちゃダメだって。
大変な目に遭って傷つきたくないだろ、さっきの家に来ないかは、ジョーダンだって」
「言葉は一回言ったら取り返しがつかないんだよ、良いじゃないの家くらい。
それとも野バラちゃんが俺に酷い事をするの?」
「いや、そんな事はしないけどさぁ……」
異性の部屋に上がり込む、男女を逆にすると、男の部屋に行きたがる女子高生は色々問題です。