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11.警備部 ◆ 淡路島翠 ◆

 男性警護員の視点です。

主人公は地方都市に住んでいますが、警護員は本庁採用です。




 女の子の憧れの職業、常に上位に有るのが男性警護員、男性に向かって来る無頼者を次から次に倒し。

“たいした事ありませんわ”


 なんて澄ました顔で言う、男性も次第に好意を持って接してくれる様になり、様々な壁を乗り越え、遂には結ばれる。

 少女マンガやジュニア小説の定番、読んだ事無い女の子はいないでしょう。


 ですがそこへの道は楽ではないです、まずは警察に入庁するのが第一条件。

 警察に入庁すると巡査と言う一番下の階級、いきなり警部補に任命されるキャリアと言うコースもあるけど、彼女達は警察官ではなくて行政職職員。


 一般の警察官でも、昨日まで学生だった人間をいきなり巡査にする訳ではないわ。

 そんなの怖いわよね、警察学校と言う場所に送られ、個性を消され、思想を叩き直され、集団生活を染み込まされ、ついでに体力もつけさせてくれるのよ。

 教育課程は大きく三つのフェーズに分かれて、初任科課程、地域科研修、初任科補習。


 初任科は学歴によって大卒の6カ月と高卒の10カ月の違いがあるのよ、初任科の終わりまでに職域が決まるの、卒配って言うんだけどね。


 地域部、公安部、生活安全部、警務部、総務部、警備部、どこに進むにしても、3カ月の地域科研修は避けて通れない仕組み。


 地域科と言われても何の事なのか分からないかもしれないけど、交番と言えば分かるでしょ。

 地域住民と接し、民生を安定させ、事件を起こさせない様にする、警察の基本が地域科なのよ。


 地獄の様に思えた警察学校も所詮は教官の保護の下、交番前に立つと、街の人達は研修中も20年選手のベテランも区別してくれないわ。

 警察官の本当の厳しさを教えてくれるのが地域科よ。


 警察実務の実情を知った後、警察学校に戻り初任科補習で専門的に学び、やっと警察官と名乗れるようになる、大卒でも教育期間は1年近いのよ。


 そうそう、よく訊かれるのが刑事部、刑事になりたくて警察を目指す人がいるけど、卒配で配属はないわよ、数年間実務を過ごし、見込みと覚悟が有れば初めて教育を受ける事が出来るのが刑事部。


 そもそも刑事って何だか知っている? 言うまでも無いけど刑事なんて言う階級は無いのよ、この事を説明するには警察の階級を知る必要があるのだけど、

巡査、巡査部長、警部補、警部、警視…… 

 巡査と巡査部長の間に巡査長と言うのがあるけど今は割愛。


 巡査部長までは司法巡査と言うくくり、警部補からは司法警察員と呼ばれて、法的な権限がまったく違うのよ。


 司法巡査の出来る事は怪しい人を逮捕するだけ、取り調べをして起訴するのは司法警察員の仕事なの、刑事って言うのは階級は司法巡査だけど例外的に取り調べと起訴の権限を与えられた存在。


 だからドラマなんかで、警部なのに刑事を名乗るなんておかしな話なのよ、刑事部所属の警部って言わないとね。


 あら、話が反れたわね、けど男性警護員も刑事と同じで卒配での配属は有り得ないの、まずは警備部に配属が第一条件、警備部って何する所?


 分かり易く言うと機動隊よ、面覆いのヘルメットを被り、大盾を持って大声で走っているのがエリートなのよ、意外でしょ。


 訓練は体力勝負だけじゃなくて、スキューバー訓練や徒手格闘訓練、射撃は当然、その中から、見込みのある隊員はSATやSP、そして男性警護員になっていくの。

 淡路島あわじしまみどりはついに男性警護員課程の履修を命じられたわ。


 一般男性警護員課程、この研修課程はあまり話したくないわ、訓練の目的は男性を守ること、盾になるはずの警護員が男性に欲情したら本末転倒よね。


 性欲を抑え込み、男性に欲情しない訓練を受けたけど、その内容を話すには、わたしのメンタルは豆腐すぎるの、勘弁してね。


 自尊心と羞恥心と、女としての最後の砦を押しつぶし、わたし淡路島あわじしまみどりは男性警護員になりました。

 ついでに部長試験も受かって巡査部長に、もちろん一選抜よ。


 一選抜って言っても何だか分からないわよね、受験資格が出来た最初の試験で合格すれば一選抜、次の試験で合格すれば二選抜、その次は三選抜……


 警察学校で共に汗と涙を流した同期だけど、こうして差が付いて行くのよね。


 死ぬほど苦労して男性警護員の資格を手に入れたわたし、配属先は帝都近郊の日王市のシンフォニア高校の男子生徒が警護対象、わたしの担当は荒川カイト君と言う美少年、ニッコリ微笑まれたら理性のタガが外れる女性が続出よ、これは大役を任されたわね。


 内示が出た時は小躍りする程喜んだわ、もちろん心の中でね、だけど日王市はドラマみたいにマンツーマンでの警護はしないのよ。

 登下校時に通学路に立って、近所のお姉さんみたいな顔して監視しているだけ。


 マンツーマンでのディフェンスではなくゾーンディフェンスって言うと分かり易いかしら、自分の担当の街路が有って、その通りに男子生徒が入って来ると軽く挨拶をして、やり過ごし、次の通りに申し送る。

 ね、地味でしょ。


 シンフォニア高校は女子生徒に男性と接する場を与える学校、後ろに体格の良いお姉さんが控えていたら興ざめよね、護衛なんて目立たないのが一番なのよ。

 わたし達男性警護員は学校の体育科の助教と言う形で校内に待機、マル対の授業中はジャージ着てトレーニングしているの。


 上司の江田島係長がトレーニング中のわたしを呼ぶ。

「淡路島、お前のマル対、昼から駅前広場でデートが入った」


「えっとー、あのエリア今日は26班と31班が担当ですよね」


「そうだ、我々の基本はゾーンディフェンスだ、だが初めてのデートだ。

 マル対の行動パターンを学ぶには良い機会だ、遊撃手として行ってこい」


 男子生徒の行動範囲はそれ程広くないのよ、駅前広場かバイトとしてモールに行くだけ。


 いつものジャージとひっ詰めの髪を、ちょっとオシャレなスーツと今風の髪型にすると、外回りの営業の出来あがり。

 ちなみに警察では刑事部みたいに私服勤務の署員には半年に一回被服手当が支払われるのよ。


 マル対のお相手は少しきついけど、美人さんの子ね。

“わたし男に興味ありません”

 なんて態度を取っているけど、興味津々なのがまる分かりよ、若いっていいわね。




 あえて描写をしていませんが、淡路島翠は優しそうな顔をした、親しみやすい美人さんです。

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