103.心理テスト
検査が終われば七海美ちゃんと会わせてくれる、そう言ったけど、検査はなかなか終わらない。
身長とか体重だけでなく、お腹周りとか、足首の太さとかをメジャーで測る、身体検査ならそれで終わりだけど、更にシールみたいな紙に指紋を取る。
指だけじゃなくて手の平まで全部だよ、足の裏までシールを貼ってシワの形を取られた。
「それでは当真様、もう一度身長と体重を測りますね」
「最初に測ったよね」
そう言いながらも、測定台の上に乗るボク。
「身長は時間が経つと変化する場合がありますので。
ハイ、身長155センチ、体重は48.9キロですね、年齢を教えてくれますか?」
「10歳、四年生だよ」
ボクの返事に一瞬怪訝な顔になった白衣のお姉さん。
「……わかりました、身体計測はこれで終わりです、午後からは健康状態をチェックしますね」
▽
午後になったら血圧測定から始まって、胸に変な吸盤を貼りつける心電図、頭に色々なコードをつける脳波測定、肺活量や血液検査、お腹にゼリーを塗る変な検査。
最後は口からカメラを通す、胃カメラは物凄く苦しかったよ。
「当真様、辛い検査を頑張ってくれてありがとうございました、健康検査はこれで終わりです」
「七海美ちゃんに会えるの?」
「いえ、明日は運動機能測定と、心理検査がありますので、その後になるかと」
急にガックリして、下を向いたボクに検査のお姉さんは優しく言う。
「楽しみは後になればなるほど、嬉しさが増えますよ」
▽▽
検査が終わるとホテルの部屋みたいな病室に帰された、晩ご飯はバルサミコ酢のかかったマリネと香ばしい香りのするお肉。
口の中でとろける様に無くなっていく肉なんて初めて食べたよ。
そう言えば、いつも病室には看護師さんがいるのだけど、食事の時になるといなくなるね。
次の日は朝から運動機能測定、握力とか背筋力、垂直飛び、立ち幅跳び。
それが終わったらエアロバイクを漕ぐ、だんだんとペダルが重くなっていき、耳につけた心拍計がピッ、ピッ、ピッ、とうるさく鳴り出す。
その後はパネルの前に立って、光ったパネルをタッチする、なんかテレビで見たことあるよ、反射神経を測るのかな。
その次はダンスのゲームみたいなところに立ち、画面の指示の方向に飛ぶ、右の矢印だったら右にジャンプして、四方向にピョンピョン飛んだよ。
やっと終わりかと思ったらまだまだ先があった、ペーパーテスト。
学校のテストの問題用紙は一枚の紙だけど、これは全然違う、もの凄く厚い問題を渡され。
「色々な教科が一緒になっていますしレベルもバラバラです、全ての問題を解く必要はありません、分かる部分だけ解いてください、もうこれ以上は分からないと思ったら手を挙げてくださいね」
とお姉さんが優しく教えてくれた。
最初のほうは6+2とか、5-3とか、一年生の問題で楽勝と思っていたら、ページをめくるごとに難しくなっていき、小数点の計算とか帯分数。
小数点を分数に直したり、分数の割り算。
三角形の面積や台形、円の面積、円の中に三角や四角が入っていて、この部分の面積を求めないさい、とか接線の長さは何センチですか……
接線って何?
文章の問題もあって。
時速5キロで流れている川があります。
1.時速10キロのボートで1時間遡ったら、何キロ上流にいけますか。
2.30キロ上流に行くには何時間かかりますか。
3.この問題では流速5キロと設定しましたが、実際の川の流速は一定ではありません、
川の流速が一番速くなるのはどの部分だと思いますか。
(川の断面図)
4.川がこの様に曲がって流れているのをなんと呼びますか。
(上から見た曲がった川の図面)
a.褶曲b.蛇行c.雁行
その後も算数なのか、社会なのか、理科なのかよくわからない問題が出てきた。
計算は数字だけじゃなくて中学で習うような記号が出てきたり、難しいグラフの問題だったりで、四年生には無理、ボクは手を挙げたよ。
「はい、当真様、お疲れ様でした、頑張りましたね。
今、甘いおやつを持ってこさせますからね」
お姉さんが、そう言うやいなや、メイドのお姉さんがワゴンを押してやって来た。
本当にメイドさんっているんだね、そう言えば病院に来てから女の人しか見てないや。
甘いおやつと贅沢に絞ったジュースを置くと、メイドさんもお姉さんもいなくなった。
ご飯の時もそうだったけど、何かを食べるときはいつも一人だね、そりゃ慣れているけどさ。
「さぁ、当真様、次のテストは勉強のテストじゃありませんよ、気楽に受けてくださいね。
当真様が思ったところに丸を付ければ良いだけです、正解なんてありません、思った通りに答えてくださいね」
1.怒りやすい性格だと思う。
2.いつもイライラしている。
3.順番は守らなければならない。
………………
延々と続く問題に疲れてきて、その疲れも忘れた頃に問題が終わった。
「当真様、頑張りましたね、まずは休憩しましょうね」
「もう終わり?」
「ごめんなさいね、もう少し頑張ってほしいのよ」
▽
薄暗い部屋に連れて来られたボクは椅子に座ってレバーを握りながら青色画面のテレビを見ている。
いつまで経っても何か始まる気配はない、そのうちスピーカーからお姉さんの声。
「当真様、申し訳ございません、機械の調子が悪いみたいです、もう少し待ってくださいね」
「はーい」
うす暗い部屋でまんじりともせず、青色画面を見ていたけど、突然画面が白くなった。
女の人の顔のアップ、美人さんだね、段々と全身が映るようになっていくけど、お姉さんは裸だった。
おっきなオッパイしているけど、なんか恥ずかしいね、おへその下の方は目を反らしてしまったよ。
画面が再び真っ白になると今度は違う女の人、やっぱり裸だよ、数人の女の人が出てきたら、今度は全員が並んでいる。
どれくらい経ったのだろう、突然画面が青くなった。
「お待たせしました、機械がなおりましたので、検査を始めますね。
右手のレバーをしっかりと握ってください、はい、そうです。
これから選択肢が出てきますけど、右か左に倒して選んでくださいね」
始まったのは短い話の連続で最後の方に選択肢が出てきてボクはレバーを倒す。
今はテストの場面で主人公の女の子は解答が分からないので苦労しているところ。
目をあげたら斜め前の子の解答が目に入った。
(覗く・覗かない)
画面の下に青色の文字が浮かび上がるのでボクはレバーを右に倒す。
今度は給食の場面、列に並んで待っている主人公、横入りして来た子がいる。
(注意する・無視する)
ボクはレバーを左に倒す。
場面が替わった、昼休み廊下の端の方で小さな子が数人の子に囲まれている姿を見かけた、イジメられているのだろう。
(無視する・助けに行く)
ノータイムでレバーを右に倒す。
その後何でこの子をイジメているのかドラマパートの様に話が進む、だけどボクは納得がいかない。
“お前叩かれたいのか!”リーダー格の子が大きな声で言う。
(逃げる・逃げない)
これも右、パンッとビンタの音、もちろん画面の中の事だけどボクは震えだした。
最後の検査はゲーム形式で性格を判断です。




