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10.初デートはお高いお店

 デートですけど、背景説明だと思ってください。



 シンフォニア高校の登校二日目、昇降口で待っていたのは梅子先生とリンちゃん先生。


『昨日はご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした』

 不祥事を起こした企業の役員みたいな事を揃って言いだした。


「えっと、何を?」


「昨日荒川カイト君に無礼な言葉を投げかけた生徒がいたであろう、入学初日から無礼千万、本来ならその日のうちに退学処分にするところだが、許すとの言葉を頂いたそうで、まことであろうか?」

 サムライみたいな言葉になっているよ、梅子先生。


「ええ、そんなつまらない事で退学なんてしないでくださいね」


「ありがたい限り、聞いたか月ヶつきがせ、彼は男性としてだけではなく、人として優れているのだぞ」

 二人の存在感が大き過ぎて気が付かなかったけど、女子生徒が置き物の様に立っていた。


「えっとー、この子は?」


「こ奴が無礼を働いた月ヶつきがせだ、謝罪をせんか!」


「荒川カイト様、昨日は失礼な事を言って申し訳ございませんでした」


 身体を半分に折る様なお辞儀。




「えっと月ヶつきがせさんだよね、とりあえず顔を上げてくれないかな」


 ゆっくりと見えて来た顔は大人っぽい美人顔、少し釣り目だけど知的な感じがするよ。


「お名前を教えてください」


「月ヶつきがせ野バラと言います、昨日は申し訳ございませんでした」


「もう謝ったから平気だよ、これからの学校生活仲良くしようね」


「はい」


「それじゃ、仲良しの握手」

 俺は右手を差し出すが、野バラちゃんは当惑して担任の顔を伺っている。


「許す、握手に答えなさい」


 梅子先生の言葉に従って手を差しだした、女の子の手は一回り小さく、少しひんやりしている。


「野バラちゃん、今日の放課後ボクとデートしてください」


「えーっ」


「何か用事があるの?」


「いや、無いけど」


「それじゃあさぁ、一緒に遊びに行こうよ、あっ、今日も半日授業ですよね、ランチしようか」


「だって、そんなのー」


「良いって言うまで手を離さないぞぉー」


「センセー」


 涙目になりながら梅子先生を見上げる野バラちゃん。


「良いではないか、仲直りの機会だ、荒川君の言う通りにしなさい」


「  わかりました …… よろしくお願いします 」


 絞る様に言葉を紡ぐと、一礼して脱兎のごとく逃げて行った野バラちゃん。


「ちょっと強引でしたか、先生?」


「荒川は頼もしい限りだな、男は我儘と決まっている、気にする事は無い」


「それもどうかと思いますけど、それよりも学生でも行けるランチのお店はどこかありますか、この街の事は知らないので」


「大丈夫ですよ、わたしがしっかり調べておきますから」

 エッヘンとリンちゃん先生が言うけど、アンタ昨日は涙目になったよね。



 ▽



 この日は各教科の小テスト、色々な中学から集まって来るから進み具合が違うのでそれをチェックするためらしい。

 新川あらかわカイトだった時は高三だったから、高一からやり直し。

 数学や物理は何とかなるとして、地理や歴史系の教科が心配だったけど、習った覚えが無くてもスラスラと社会科系の問題が解ける、荒川あらかわカイトの知識が残っているのだろうか?


 ▽


 半日はあっという間過ぎ、デートの時間がやって来た。


「良かった、野バラちゃん、ちゃんと待ち合わせ場所に来てくれたんだね、もしかして待った?」


「今着いただけだし」


 ぶっきらぼうに言うけど、冷たい感じはしない。


「野バラちゃんは肉と魚だったらどっちが好きかな」


「どっちも嫌い」


「アレルギーとかがあるのかな?」


「別に」


 ▽


 リンちゃん先生に教えてもらった店は広場に面した広々としたグリル、店員さん達はみんな頭にプリムを乗せたメイドスタイル。

 サラダとエッグベネディクト、オニオンスープと言うオシャレなメニュー。


「あんたさぁ、男子でしょ、それだけで足りる? 筋トレもしているって言っていたし」


「足りないけど、野バラちゃん肉も魚も嫌いって言ったし」


「そんなの本気な訳ないじゃん、薄いベーコンだけじゃなくて、もっとガッツリ食べなよ」


 リブステーキを追加してくれた野バラちゃん、気配りの出来る子なんだね。


「あのさぁ、昨日は本当にゴメンなさい、あんたも辛いんだよね」


「まぁね」


「だけど偉いよ、男はすごい我儘だって聞いていたけど、あんた丁寧じゃん」


「うーん、実はこっちの事良く分からないのだけど、みんなは俺達シンフォニアの男の事をどう思っているの?」


「おこぼれ」


「容赦ないね」


「女にとってはスタリオン学園に行って種付けしてもらうのが夢なんだよ、だけど倍率は死ぬほど高いし」


「人工授精じゃダメなの?」


「天然の種付けじゃないと男が産まれにくいんだよ」


「そうなんだー」


「一応言っておくけど、種付けに憧れてはいるけど、男には憧れていないからね」

 JKがさっきから種付けと連呼しているけど、普通の言葉なの?


「男が嫌いなの」


「嫌いって言うか、すごい我儘に育てられるみたいじゃん、メイドとかママを平気で叩いたりするって聞いたし」


「そうなの?」


「あんたはそう言う事はしないの?」


「今は妹と一緒に住んでいるけど仲良しだよ」


「一応好奇心で訊くだけだから、嫌なら答えなくても良いからね」


 急に真面目な顔になって身を乗り出して来る野バラちゃん。


「あんたさぁ、妹とエッチな事とかするの?」


「肉親だよ、そんな事する訳ないじゃん」


「いやいや、男は本当の家族とは一緒に住めないよ、そんな事をしたら産みの親が増長するから、他人と一緒に住むんだよ」


 ▽


 野バラちゃんから色々と情報収集が出来た、俺が思っている以上に男が威張っている世界みたいだ。


 支払いの段階で“ここは払わせて、女に恥をかかせないで”と強引に伝票を奪われた。




 男は金を払わなくても良いではなく。

男の飲食代を払うのがステイタスになる世界観だと思ってください。

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