第9話「ヘルマネ村、到着!」
荒野を越え、草原を越え──
ようやく、次の目的地が見えてきた。
小高い丘の上から、村全体を見下ろす。
そこに広がっていたのは──
ボロボロに崩れた家屋と、妙に派手な看板の数々。目の前に広がるのは、小さな農村。
草木に囲まれ、静かでのどかな風景──に見えたが。
(……なんだ、この違和感は)
村に近づくにつれ、徐々に重苦しい空気が肌にまとわりついてくる。
子供たちは元気がなく、老人たちは下を向いて歩き、
働き手たちは、どこか疲れ切った顔をしていた。
村の入り口に立てられた看板には、こう書かれていた。
『ようこそ ヘルマネ村へ』
(……減る、マネー……?)
俺は眉をひそめた。
そこへ、ぼろぼろの服を着た中年の男が声をかけてきた。
「おお、旅のお方かい? 珍しいねぇ……
ま、歓迎はするけど、何もない村だよ。
ここはな、"金だけはよく減る村"って意味なんだ」
半ば冗談、半ば本気のようなその口ぶりに、俺はますます警戒心を強めた。
男に案内されるまま、村の中を歩く。
目に映るもの──
子供たちが一人一台持っている「魔導タブ石」(通称:タブ石...スマホみたいなもの?)。
家々に設置された「高額魔力供給器」。
すれ違う村人たちは、みなやたらと派手な服飾品(ローン契約中)を身に着けている。
だが、その顔はどれも疲れ切っていた。
(見栄だけが、無理やり張り付いてる……)
小さな子供ですら、
タブ石を持って、何かに怯えながら通信している。
「……月額、また上がったって……」
「タブ石ローン、返済無理かも……」
ちらほらと聞こえる、不安と絶望の声。
──ここは、
「減るマネー」が"当たり前"になった村。
自由など、かけらもなかった。
広場の中心。
立派な建物があった。
【魔導通信ギルド ヘルマネ支部】
その看板を見た瞬間、俺は確信した。
(こいつらが、村を牛耳っている……!!)
通信費地獄、
高額ローン、
不要オプション祭り、
固定費沼。
まさに──固定費搾取の権化。
俺は、そっとポケットに手を入れた。
そこには、バリ師匠からもらった【信用コイン】と、
鎖村で得たスキル【貯める力 Lv2】が宿っている。
(鎖村で学んだこと……全部、ここで活かす)
リベル・アーツ、第二章。
──本格始動だ。
「よし、やるか」
深く息を吸い、
俺は、ヘルマネ村の真っ只中へ、歩を進めた。
【To be continued...】