第67話「エルナの決断──ひとつのグルムに込めた想い」
あの旅立ちの朝。
リベルたちが去った後、デルシティの空は、秋の風が吹いていた。
そして、エルナはひとり広場に立っていた。
彼女の手には、古びた財布と、一枚の銀貨──1グルムだけが残されていた。
「ねぇ……お金って、ほんと不思議だよね」
目の前にあるのは、街で一番人気のペンダント。
銀細工に魔導石をあしらった一品──
ずっと欲しかった、“憧れの証”だった。
だけど、エルナはその横にあった、もうひとつの屋台に目を向けた。
「旅の道具・ミニマップセット」
──旅を志す者のための、最低限の冒険セット。
リベルの言葉が蘇る。
「グルムは、“未来の自分”にあてた手紙みたいなもんだ」
迷って、迷って、そしてエルナは──
地図セットを手に取った。
屋台の店主は、にこやかに言った。
「これでキミの未来は、少しだけ広がるね」
その夜、エルナは家に帰って、銀貨の入っていた財布を閉じた。
そして机に置かれたノートに、こう書いた。
『今日、私は“ほしかったモノ”を買うのをやめた。
代わりに、“なりたい自分”のために使った。
この感覚、きっと一生忘れない。』
──エルナの物語は、まだ始まったばかり。
だけど、“使う力”の意味を本当に理解したその日。
彼女の未来には、迷いではなく、“希望”が灯っていた。
スキル獲得:エルナ
《選択の記憶》──自分の軸で選び取った支出は、人生の道標になる
To be continued…
──彼女の旅路も、またどこかで。