第6話「目を覚ませ! 固定費地獄からの脱出」
俺は、村の広場に立っていた。
かき集めたボロ板と、炭で作った即席の掲示板。
その前に、村人たちを集める。
(──まずは、"見える形"にするんだ)
それが、バリ師匠からの教えだった。
「見ろ」
俺は、掲示板に描いた絵を指差した。
契約金利10%
保険料月5銀貨
魔力補填サービス10銀貨
幸運増幅保険5銀貨
更新料自動アップ……
その合計金額を、大きな赤文字で書く。
【村人一人あたりの月固定費:35銀貨】
村人たちがざわざわし始めた。
「そ、そんなに払ってたのか……?」
「毎月か……いや、そんなはずは……」
「うち、そんなに使ってないのに……」
俺は続ける。
「いいか、みんな。
これが、"見えない鎖"の正体だ!」
炭を手に取り、さらに図を描く。
月収100銀貨 − 固定費35銀貨 → 実質可処分金65銀貨
「これを、何年も、何十年も続けてきた。
それでいて、生活はよくなったか?」
静まり返る村。
誰も──否定できなかった。
俺は、拳を強く握る。
「この村を蝕んでいるのは、剣や魔法じゃない。
お前たちの財布を狙う、見えない吸血鬼だ!」
村人たちの表情が、だんだん変わっていく。
怒り。
悔しさ。
そして、恐れ。
──だが、最後には、希望が灯り始めた。
その時だった。
「じゃあ、どうすりゃいいんだよ!」
村の若者が叫ぶ。
待ってた。
俺はにやりと笑った。
「──"知った"だけじゃ足りない。
今すぐ"行動"するんだ!」
俺は、掲示板の裏から、新たなプランを掲げた。
【リベル式・固定費見直し作戦】
・不要なオプション、今すぐ解約!
・ 本当に必要な支出だけ残す!
・ 可能なら、ギルド以外の"自立型生活"に移行!
「行動できる奴から、自由を取り戻せる!!
やるか、やらないか──選べ!」
一瞬、広場に沈黙が落ちる。
だが──
「……オレ、やる!」
「私も……契約、見直したい!」
「生きるために、オレたち、変わらなきゃ……!」
一人、また一人と、拳を握り、声を上げる村人たち。
俺は、深く頷いた。
(──これが、"貯める力"だ)
見えない鎖を、
気づかせ、
考えさせ、
そして──行動させる。
小さな一歩かもしれない。
けれど、確かな自由への一歩だ。
空を見上げると、
遠く、金色のカーペットがふわりと浮かび、
バリ師匠が静かに笑っていた。
「よくやった、リベル・アーツ」
俺は、小さく胸の中でガッツポーズをした。
(まだ、始まったばかりだ。
次は──本当の鎖を、断ち切る!!)
【To be continued...】