第48話「静かな嵐──ダーレン・バケット、現る」
──リッチナーン都市。
幻想の祭典は終盤に差し掛かっていた。
ポンジの“国策投資塔”は連日行列。
市民の8割以上が“フルドリームプラン”に契約し、
街はふたたび**「夢の支配下」**に戻りかけていた。
「配当?仕組み?もう古いんじゃない?」
「ポンジ様の魔導塔なら、一発で変われるんだよ?」
ティアが歯ぎしりする。
「また……振り出しに戻っちまった……」
「オレたちの努力、全部夢にかき消されるのかよ……」
ハルクが拳を握る。
「仕組みの力、伝えきれなかったのか……?」
リベルは黙って空を見上げた。
静かに、静かに──燃えていた。
──そのとき。
「おや、君たち……静かに、コツコツ頑張ってるようだね」
一行の背後に現れたのは、
よれよれの魔導ローブに麦わら帽子、
魔導新聞を小脇に抱えた──
ひとりの男だった。
「誰……?」ミーナが首をかしげる。
その男はニコリと笑った。
「私はね──ダーレン・バケットという者だよ」
「通称、“退屈の王様”さ」
「若い頃、コツコツ魔導株を積み立ててね……
気づいたら、魔導世界の1/3の配当を受け取るようになってたんだ」
ティアが絶句する。
「な、何それ……モンスター……」
バケットは、リベルに近づく。
「君が、リベル・アーツくんか」
「派手じゃなく、でも本気で自由を届けようとしている。
それが伝わってきたよ。仕組みこそ、未来を育てるんだ。」
リベルの目が見開かれる。
「ダーレン・バケット……」
「今の時代、ポンジのような“幻想型”が注目されやすい」
「でも、私は思うんだ」
“退屈に耐えた者こそが、本当の自由を得る”
バケットは、そっと魔導板を浮かせた。
そこに表示されたのは──
30年間積立した配当グラフ。
緩やかに、でも確実に右肩上がり。
最後には「年利12%配当×30年=資産86倍」という数字が刻まれていた。
「時間をかける。焦らない。騒がない」
「その代わり、諦めずに続ける。」
「ポンジが塔を建てたなら、
君たちは“土”を育てなさい」
「土の上に建つものは、崩れない」
その言葉に、リベルは頷いた。
「ありがとうございます……
オレたちのやってきたことは、間違ってなかった──」
シュウトが立ち上がる。
「オレ、あの配当グラフ……もう一度信じたい」
「毎月、たった100ルル。それが、未来になるって……」
ハルク:「派手じゃなくていい。地に足ついた方が、オレは信じられる」
ミーナ:「“コツコツ”こそ、最強の魔法……そう思えてきた」
ダーレン・バケットは、微笑みながら言った。
「さぁ、これからが本番だよ、リベルくん」
「派手な塔より、堅牢な仕組みを信じる人々が、
この街の未来を作っていく」
こうして、リベルたちは再び立ち上がった。
そして、
都市の運命を賭けた最終決戦のステージへ向かう。
【To be continued...】