第43話「沈む旗、揺れる信念──リベルの決断」
──夜。リッチナーンの外れ、リベルたちの拠点。
誰もいないはずの講義スペースに、
ティアがぽつんと立っていた。
「……ホントに、これでよかったのかな……?」
彼は、自動配当の広告が流れる魔導板を見つめながら呟いた。
「バイト代より、ポンジの仕組みの方が稼げるなんて……
あれ、ほんとに“間違い”なのか?」
その背後から、ハルクが現れる。
「オレも……ちょっとだけ思った」
「夢にすがりたくなる気持ち、わかる。
地味に積み立てて、増配待って……時間かかるし」
「でもよ……」
彼は、拳を握る。
「オレは、また“間違いに乗っかった”自分に戻りたくねぇんだよ。
だから、踏みとどまってる」
講義スペースには、シュウトとミーナも集まってきた。
彼らの表情も、どこか沈んでいた。
「誰も来ない」
「“仕組みが退屈”って言われて終わり」
「正しいだけじゃ、人の心は動かせないのか……」
リベルは、黙ってその場に立っていた。
仲間たちの想いを、すべて受け止めながら──
そして、ゆっくりと口を開く。
「……オレはね、間違ってると思ったことはない」
「でも、届かなかったことは、悔しいって思ってる」
「派手な言葉。輝く演出。
オレたちは……“魅せる力”が、足りなかった」
「でもな──」
リベルは、拳を握る。
「仕組みを信じるってことは、時間と根気を信じるってことだ」
「今、花が咲いていないからって、
オレたちが種を掘り返したら──
それこそ、全部が“終わり”だ」
「だから、もう一回、旗を立てよう」
「何人が来ても、来なくてもいい。
でも、“仕組みが未来を変える”ってことだけは、伝え続けたいんだ」
その言葉に、シュウトが立ち上がる。
「……だったら、オレも一緒に立つよ」
「だって、それでオレは救われたからさ」
ミーナが微笑む。
「そろそろ、泣き言言ってる暇なんてないわね」
「“退屈な魔法”が、世界を変えることを──証明しなきゃ」
ハルクとティアも、うなずいた。
「……よし、もう一回やってやるか」
「派手じゃないけど、地に足ついた戦いってやつ、見せてやろうぜ」
そして、リベルは
傷つきながらも立ち続けた“自由の旗”に、手を添えた。
「……オレたちの物語は、まだ終わってない」
【To be continued…】