第42話「幻想が街を包む夜──“仕組みなんてつまらない”」
──リッチナーン都市、幻想の祭典・第二幕。
“ドリーム・ステッププラン”に続き、
ラビット・ポンジが打ち出した新たなキャンペーンはこうだった。
『あなたの資産が毎日増える魔法──“ドリームウォーク”』
『毎朝、口座に“勝手に”配当が!?』
さらに!紹介した人にも“魔導コイン”が毎週発生!!
都市中の掲示板、魔導板、露店のメニューにすら広告が流れ、
都市全体が“夢の空気”で覆われていった。
リベルたちの投資講義ブース──
先週まで満員だったそこには、たった数人しかいなかった。
「積立? 配当?
ふつうにポンジさんの新プランで月に300ルルもらえるしな〜」
「しかもカフェ券とかも付いてくるし」
「リベルの話、なんか……地味だよね。仕組みって、つまんない」
その声が、リベルたちの胸に刺さった。
夜。拠点に戻ったリベルたちは、暗い空気に包まれていた。
ティアが、ぽつりと呟く。
「……オレたちのやってることって、本当に伝わってるのかな……?」
ミーナが魔導端末のアクセス数を見せる。
「昨日の講義動画、視聴数10件。
そのうち8件は“低評価”……“詐欺師のくせに正論ぶるな”って……」
シュウトが、拳を震わせながら叫んだ。
「なんでだよ!!
オレたち、ちゃんとやってるじゃんか!!!」
「オレ……本当に人生やり直せたって思ったのに……!
なのに……なんで、また“夢”に負けるんだよ……!!」
その叫びに、誰も答えられなかった。
リベルは静かに呟いた。
「……仕組みは、花が咲くまで時間がかかる。
でも今、この都市は“派手な種”ばっかり選んでる」
「……もしそれが全部、幻だったとしても──
崩れるまで気づかないなら、俺たちは……」
次第に都市の空気は、
“ポンジこそ正義”の風潮に染まっていった。
広場のステージでは、こうアナウンスが流れていた。
「リベル・アーツ一行は、“夢を奪う者”として都市記録に警告登録」
「健全な魔導金融を妨害する者に、罰を──」
その夜、リベルは誰もいない講義スペースに立ち、
ただ、風にたなびく“自由の旗”を見つめていた。
「オレたちは……間違ってない。
でも……」
声がかすれた。
「届かないのは、オレの力が……足りないからか……?」
【To be continued...】