第40話「“現実”に目を向けた人々──広がる自由の輪」
──数日後。
リッチナーン都市の広場に、
ひとつの張り紙が貼られていた。
『配当で食費がまかなえた!? 本当にそんなことが?』
『資産形成講座、毎夕無料開催中!』
それは、リベルたちが主催する“自由講義”の告知だった。
最初はちらほらだった参加者が、
今では毎日数十人、時には百人を超えるようになっていた。
「え……オレ、積立しかしてないのに配当来た……」
「え、インデックスって全世界の企業に分散してるの……?」
「あの夢のやつより、こっちのが……安心するかも……」
都市の空気が、
少しずつ──確実に変わっていく。
その日、講義の後。
一人の中年女性がリベルのもとを訪れた。
「私……ラビットさんのファンだったんです」
「“夢を持っていい”って言ってくれたのが嬉しくて……」
「でも、あなたたちの話を聞いて、初めて“現実の優しさ”を知った気がしました」
リベルは、ゆっくり頷いた。
「夢を否定するつもりはないよ」
「でも、夢に“仕組み”がなければ、幻想になる」
「その違いに気づいた人から、自由に近づけるんだ」
ティオがにっこり笑う。
「地味だけど、毎月ちゃんと“自分で稼いでくれる資産”って、すげぇよな」
「オレ、今んとこ、焼きリンゴ代と旅の装備代、まかなえてます!」
その日の夜。
リッチナーンの一角に、新たな掲示板が建った。
『リベル式・魔導投資の歩き方』
『毎月100ルルから始める自由資産計画』
『“育てる”ことで、夢は逃げない』
そして、
それを見た人々が、また誰かに伝えていく。
「知識は連鎖する」──
リベルがかつてバリ師匠から学んだ教えが、
この都市に根を張り始めていた。
その頃、モラウサギ商会の本部。
ラビット・ポンジは窓から街を眺めていた。
「……面白い。思ったよりずっと粘るな、君たち」
「だが、私が本当に恐れているのは、まだ来ていない」
「次は、“感情”と“仕組み”の両立を証明しなければ──
幻想を手放す人間など、ほんのひと握りさ」
彼の目が、静かに光った。
「君たちの次の一手、楽しみにしてるよ──リベル・アーツくん」
【To be continued...】