第37話「積立の魔法──ドルコスト平均法という最強ルーティン」
──リッチナーンの朝。
市場の一角、リベルたちは新しくできた“投資の勉強広場”に集まっていた。
「今日は、最も地味で──でも最も強い魔法を教えるよ」
リベルが、静かに言った。
「名前は──ドルコスト平均法」
「ド……ルコスト……?」
ティアが首をかしげる。
「カッコよくはないな……」
ミーナがくすっと笑う。
「でも効果は、超カッコいいんだよ」
リベルは、魔導板に図を浮かべる。
そこには波のように上下する線──価格の変動。
その上に、一定額での“購入マーカー”が等間隔に並んでいた。
「これは、“価格が上がったり下がったり”してる投資先に、
毎月同じ金額をコツコツ投資し続ける方法だ」
「値段が高いときは少なく、安いときは多く買える。
結果として、買う価格が平均化されていく。」
ハルクがうなった。
「つまり……“買い時”を考えなくても、勝手にリズムが作れるってことか!」
「そう。“続けるだけで勝手に調整される仕組み”」
「しかも──」
リベルが続ける。
「この方法がすごいのは、感情に振り回されないことなんだ」
「市場が下がると、人は怖くなる。
でも下がった時ほど“お得に買える”んだよ」
シュウトが思わず唸る。
「……つまり、これなら、俺みたいなビビりでも、
機械みたいにコツコツ積み上げられるってことか」
リベルは笑った。
「うん。
仕組みに任せることで、“自分を守りながら育てていく”ことができるんだ」
ミーナが魔導端末を取り出して言った。
「みんな、今日から設定してみない?
“自動積立魔法陣”──月1回、一定額、自動で世界石ファンドに投資する」
全員がうなずいた。
静かに、でも確かに──
それは未来への誓いの儀式だった。
「積立は、最初は何も変わらないように見える。
でも5年、10年経った時──“魔法”の正体が見えてくるよ」
こうして、
リベルたちは、人生を変える“地味で最強な魔法”を手に入れた。
あとは続けるだけ──
未来を育てる、最強の仕組みが動き出した。
【To be continued…】