第36話「仕組みで守る──分散とアセット・ロケーション」
──リッチナーン郊外、朝の訓練場。
昨日からリベルが設営した“魔導講義ゾーン”には、
魔法陣のように描かれた資産マップが浮かんでいた。
「昨日の“複利”は攻めの魔法」
「今日は“守り”の魔法──分散とアセット・ロケーションを教えるよ」
リベルの声が静かに響く。
「投資の失敗って、多くは“偏りすぎ”から起きるんだ」
「例えば──
全部ひとつの国、ひとつの会社、ひとつの資産にぶっこんだらどうなる?」
ハルクが答える。
「そいつがコケたら……終わりだな」
「そう。“一発KO”だ」
リベルは魔導板を光らせた。
そこに現れたのは、10個の光の玉。
『株式・債券・現金・コモディティ・国内・海外・通貨・REIT・インフラ・代替資産』
「これが、“分散”だよ」
「種類が違うものを少しずつ持つことで、
どれかがコケても、他が支えてくれる」
ティアが「お守りみたいだな」と呟く。
ミーナが続ける。
「でも、種類を分けるだけじゃなくて──
**“どこに置いておくか”**もすごく大事なの」
「それが、アセット・ロケーション」
魔導陣が変化し、こう表示される。
自分の“資産置き場マップ”:
魔導金庫(流動資金)
魔導投資口座(インデックス・高配当)
貯蓄魔法陣(非常用)
長期封印術(老後資金)
リベルが締めくくる。
「要するに、“何に”投資するかも大事だけど、
“どこに置くか”と“取り出せるタイミング”を管理することが、投資では超重要なんだ」
「派手な話じゃない。
でもこれがあるから、投資は“倒れずに続けられる”」
シュウトが、真剣な目で言った。
「今なら分かる。
オレが失敗したのは、“守りの仕組み”を知らなかったからだ」
「増やすってのは……攻めるだけじゃないんだな」
リベルがにっこりと笑った。
「君は、ちゃんと学び直してる。
それだけで、前よりずっと強いよ」
こうして、
彼らは投資の“体幹”とも言える分散と配置を知り、
もう一段レベルの高い“増やす力”を身につけていった──
【To be continued...】




